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クマムシ研究して約20年…「何の役に立つの?」それでも選んだ理由 「だって、見ちゃったから」

9/10(火) 7:00配信

withnews

 低温や高温、高圧や放射線など、過酷な環境にも耐えうる能力を持つことから、しばしば「最強生物」と呼ばれる「クマムシ」ですが、実は身近な生き物です。陸にも海にもいるのですが、肉眼ではほぼ見えないため、存在を意識することはなかなかありません。そんなクマムシは、一体どんな人が研究しているのでしょうか。「クマムシの研究が何の役に立つんだ、と自問したことがある」という研究者が、たどり着いた答えとは。(朝日新聞デジタル編集部・野口みな子)

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普通の生物だったら「死」クマムシの「乾眠」

 クマムシとは、1mmにも満たない小さなムシです。ムシといっても、「緩歩(かんぽ)動物」というグループに分類され、昆虫ではありません。4対の足をノコノコ動かして、分類名の通り「ゆっくり歩く」姿が愛らしい生き物です。

 海にも川にも、土の中にも、何らかの種類のクマムシがいます。生きるためには水が必要ですが、コケなど乾燥しやすい場所で暮らすクマムシは、「乾眠」と呼ばれる能力を持っています。それはミイラのように乾燥して、体内で代謝が起こらなくなっても、水を得ると蘇生することができる力です。

 しかもこの乾燥状態の場合、マイナス273℃という超低温にも、プラス100℃の高温にも、ヒトの致死量の1000倍以上の放射線にも耐え、蘇生したと報告されています。2007年には宇宙に打ち上げられたり、2019年にも月面探査機とともに月面に置き去りにされたり……。インターネットなどでも度々「最強生物」と話題になってきました。

不器用すぎる!クマムシの一面

 肉眼では見えないほどのこの小さな生物を研究しているのは、どんな方なでしょうか。慶應義塾大学の鈴木忠(あつし)准教授(生物学)に会いに行ってきました。鈴木先生の著書「クマムシ?! ―小さな怪物」 (岩波科学ライブラリー)では、学内のコケの中から見つけたクマムシを、飼育観察する様子が楽しく紹介されています。

 顕微鏡で観察しようと、スライドグラスに乗せるとガラス面ですべって転んでひっくり返り、じたばたするクマムシ。歩きやすいようにとシャーレの中に寒天を固めて、そこに入れてみると、隙間を好んでシャーレの底面に潜り込み窒息してしまうクマムシ……。

 ネットなどで見る「最強生物」とはかけ離れた、不器用なクマムシの一面と、なんとか元気に育てようと試行錯誤する鈴木先生の目線に癒やされる一冊です。

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最終更新:9/10(火) 12:12
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