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[寄稿]稼ぎのいい個人営業者だとは…日本軍慰安所制度作り少女を踏みつけたのは誰か

9/6(金) 12:17配信

ハンギョレ新聞

『反日種族主義』反論特別寄稿 (3)日本軍慰安婦

慰安婦は高収入の職? 
ビルマのムン・オクジュさんの例を挙げ 
現在の価値で8億貯金したというが… 
敗戦時ビルマのインフレは東京の1200倍 
実は現在の価値でわずか4万ウォン 

強制動員はなかった?  
銃刀で脅す必要なく 
日本は植民地朝鮮で 
公娼制と紹介業産業体制を慰安婦強制動員に利用 
重要なのは本人の意思に反して
国家犯罪の被害者になったということ
 『反日種族主義』という本の題名が頭にすんなり入ってこなかった。本を注文して、一番先に著者のイ・ヨンフン・ソウル大学元教授が種族主義をどのように説明しているか探してみた。著者が作った用語だが、韓国人が日本を敵と見なし、あらゆる嘘を作り出す集団心性を指して反日種族主義と言う。最も注目されるキーワードは「うそ」だ。『大韓民国の話』(2007)では「韓国の乱暴な民族主義」が自分の文章作成に「検閲者」として作用するという批判程度に止まっていたが、「反日種族主義」は既存の反日感情に加え、作り話をしてまき散らすという点に重点があるようだ。

 長い間日本軍慰安所および「慰安婦」問題を研究してきた人間として、著者が日本政府の国家責任を明らかにした先行研究の多くの部分を「うそ」として一蹴するのには非常に当惑している。 見解の違いによる論争は大いにやるべきだが、「うそ」を前提にした主張にいちいち対応するのは時間の無駄だ。しかし、『反日種族主義』の主張が真実かどうか判断しにくい読者がいると思うので、いくつかの点を指摘しておきたい。

 「慰安婦」問題を集中的に扱ったこの本の第3部「種族主義の牙城、慰安婦」は、著者の意図が非常に分かりやすく記述されている。米軍の慰安婦や朝鮮戦争当時の韓国軍特殊慰安隊の話が冒頭に登場するのは、日本軍慰安所制度に対する国家責任を要求するために外部に向けられた視線を国内に留まらせようということだと判断される。つまり、日本軍「慰安婦」問題で日本政府を非難する前に、我々の中の問題をまず考えるべきではないかという、「反日種族主義」にとらわれた韓国人たちに対する叱責であろう。一見、一理ある言葉だ。しかし、これは順序の問題ではない。民族内部のどのような問題点をどのように指摘するかの問題だ。

 イ元教授は経済学者らしく、日本軍「慰安婦」問題を経済学的に解決しようとしている。 それで公娼制と日本軍慰安所制度の延長線上で研究された先行研究を自身の主張に取り入れた。まずイ元教授は、ソウル大学のアン・ビョンジク名誉教授が主導する落星台経済研究所のチームが翻訳・解説した『日本軍慰安所管理人の日記』を根拠に提示する。パク・チグンという、朝鮮人でありながら日本軍慰安所の管理者だった人物の日記には、1943年2月にビルマの慰安所で稼いだ3万2千ウォンを故郷に送金しようとする部分が登場する。これについてイ元教授は「今日の価値で1億円、韓国の通貨価値で10億ウォンに上る大金」だとし、「わずか6カ月でそれほど稼いだ」と評価する。また、パク・チグンが自分が管理していた「慰安婦」が貯めた金1万1千ウォン(現在の価値で約3億5千万ウォン)を代わりに本国に送金してやった日記の内容を引用する。日本軍「慰安婦」被害者だったムン・オクジュさんの貯蓄額も主に引用している資料だ。彼はムン・オクジュさんが1945年9月までに約2年間で2万6551ウォン(現在の価値で約8億3千万ウォン)を貯金した帳簿を引用する。一言で言って、日本軍慰安所経営者であれ「慰安婦」であれ、甚だしく儲かる職業だったという話になっている。

 ここまで話を聞いたら、「慰安婦」被害者たちを支持する人でも「本当か?」と自分の判断が揺らぐ感じがするだろう。そのためか、この資料は日本の右翼たちが「日本軍『慰安婦』被害者は単なる公娼(売春婦)に過ぎなかった」と主張する根拠として使われる定番メニューでもある。しかし、本当にそうだろうか。

 日本の良心的な知識人と市民が運営する「日本の戦争責任資料センター」と「『戦争と女性への暴力』リサーチアクションセンター」は、このような右翼の主張に真っ向から反論する。彼らが韓国語と日本語で提供するホームページにアップした「ムン・オクジュさんはビルマでお金持ちになった?」というタイトルの文を見てみよう。「ムン・オクジュさんが2万円以上貯金したと言うが、その内訳を見ると、1945年4月に1万560円、1945年5月に1万円など、ほとんどが1945年に集中している。敗戦時に東京の物価が1.5倍の上昇に止まったのに比べてビルマは1800倍、つまり東京に比べて1200倍のインフレだった。 だからビルマで集めた2万数千円はその1200分の1、つまり20円程度の価値しかなかった。 しかも、ビルマは日本の占領地の中でも最もインフレが激しい地域だ」。つまり、当時ムン・オクジュさんの貯金額は20円程度の価値だったということだ。2007年に韓国政府が軍人軍属供託金と関連して1円当り2千ウォンに換算して慰労金を支給したことがある。 この割合を適用して考えれば、ムン・オクジュさんの貯蓄額は今の価値で4千円、つまりわずか4万ウォンほどにしかならない。最初は占領地の通貨が円と等価に設定されたが、ビルマなど東南アジア地域でインフレが激しくなると、日本政府は、両替差額が生じることを防ぐため、1945年に外資金庫を設立した。 ビルマで貯金して大金を貯めたとしても日本の円で交換できなかったのだ。

 さらに重要なことは、被害者たちが慰安所で業者や軍人たちから金を受け取ったか受けとらなかったかの問題ではないという点だ。重要なことは、日本軍「慰安所」制度を誰が作り、どのように運営したのかだ。 我々が日本政府に責任を問う時、カギとなる点だ。

 この問題について、イ元教授は、上記の主張を根拠に、究極的に日本軍「慰安婦」が「高収益を期待してやって来た個人営業者」という結論を下す。彼は、これまでの韓国社会で女子勤労挺身隊(挺身隊)と「慰安婦」を混同して使用してきたことも強く批判する。挺身隊は勤労動員の対象であって軍「慰安婦」ではなかったのに、同じように使ってきたという指摘だ。 また、「女子挺身勤労令」が日本と違い、「朝鮮では実行されておら」ず、「それができる環境ではな」かったと述べる。ただし、官の勧誘と斡旋で接客業の女性や女子学生が挺身隊として組織され、2カ月ほど国内の軍需工場で働いた事例があり、2千人ほどが日本の軍需工場に渡ったという推定を付け加えている。

 イ元教授の主張は一部は妥当だが、一部は誤りであり、一部はまだ分からないと言うのが正確だ。歴史学においてはまだ日の浅い研究分野であったため、韓国社会と関連団体がこの問題に対する理解が足りない状況で、用語を誤って使っていたことはそのとおりで、現在は多くの部分が正されている。 しかし、日本と同様に朝鮮でも「女性挺身勤労令」が施行されたというのは事実だ。ただ、朝鮮には女性挺身勤労令の対象者が極めて少なかった。「14歳から25歳の無職で学校に在学していない未婚女性」や「同窓会や学校単位で結成せよ」などの条件に合致する女性が少なかったためだ。そのため、イ元教授の述べるとおり、朝鮮では「官の指導斡旋」方式が使われたため、動員する過程で多くの混乱が生じたのだ。朝鮮の女性が挺身隊に動員されたのに、日本の軍需工場には行かず、慰安所に行った事例が存在するのはこのためだ。このような状況は、朝鮮が日本と決して同等ではない植民地であったために起きたことだった。

 イ元教授は映画『鬼郷』で、日本軍の憲兵が少女を集めていく場面や、チョ・ジョンレの小説『アリラン』で慰安婦を徴発していく部分をあげて「汚い種族主義の標本」と怒りを表している。もちろん、日本の軍人が銃剣で朝鮮人の娘たちを連れて行く姿が普遍的だったように認識されたのは行き過ぎだった。このような弱点を利用して安倍晋三首相と日本の右翼は「慰安婦」強制連行を証明する資料が発見されておらず、日本政府には責任がないと主張してきたのだ。

 しかし、日本軍「慰安婦」強制動員は確かにあった。もちろん占領地や特に戦闘地域のように軍人が前面に出て人々を連れて行く形ではなかった。なぜなら、その必要がなかったからだ。すでに植民地朝鮮で公娼制と紹介業が法により実施され、日本政府はこの産業体制を「慰安婦」強制動員に利用した。ここで私たちは「強制」という言葉の正確な意味を知らなければならない。国際法で規定する強制とは「本人の意思に反すること」をいう。軍人が髪の毛を引っ張っていったかどうかが重要なのではない。少なくとも日中戦争が勃発した直後の1938年、日本の陸軍省は日本軍慰安所設置の必要性を認めて慰安婦「募集」に関する方針を下した。本格的な制度化の道を開いたのだ。さらに、日本軍によって占領地や戦場、植民地に設置された慰安所とさまざまな形態の変形した「慰安所」で、日本軍慰安婦たちは人間としての、女性としての尊厳を侵害されて自由を奪われた。彼らは国家犯罪の被害者だったのだ。

 日本軍慰安所制度は民族差別、女性差別、階級差別の問題であり、女性に対する国家犯罪であり、戦争犯罪である。帝国の植民地支配責任の問題でもある。すべての日本軍「慰安婦」被害者たちと国内外の市民団体、韓国政府と国民が日本政府に責任を問う理由はここにある。そのため、女性に対する国家犯罪、国家責任、戦争犯罪といった論議が全く行われていない「反日種族主義」を「単なる見解の差」という言葉でごまかすことはできない。

ユン・ミョンスク 韓国女性の人権振興院・日本軍「慰安婦」問題研究所調査チーム長 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

最終更新:9/6(金) 12:17
ハンギョレ新聞

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