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いすみ鉄道からえちごトキめき鉄道へ、鳥塚亮新社長に意気込みを聞いた

9/7(土) 16:21配信

マイナビニュース

新潟日報は8月29日、えちごトキめき鉄道の新社長として、元いすみ鉄道社長の鳥塚亮(とりづか あきら)氏が内定したと報じた。鳥塚氏は2009年に千葉県のいすみ鉄道の公募社長となり、国鉄型ディーゼルカーの保存、レストラン列車などに取り組んだ。また、自費による動力車運転免許を条件とした運転士採用や、ブログによる奔放な発信によって話題を提供し、いすみ鉄道の知名度を全国に高めた。

【画像】えちごトキめき鉄道の路線略図(地理院地図を加工)

えちごトキめき鉄道は北陸新幹線の新潟県内並行在来線を引き継いだ第三セクター鉄道会社。2015年3月14日に、旧北陸本線の市振~直江津間を「日本海ひすいライン」、旧信越本線の妙高高原~直江津間を「妙高はねうまライン」として開業した。

同社の現社長、嶋津忠裕氏は2003年から2009年まで肥薩おれんじ鉄道の代表取締役を務め、新潟県参与として交通政策局で並行在来線の開業準備に尽力し、社長に就任した。嶋津氏は5月23日の記者会見で健康上の理由による退任を表明していた。

嶋津氏の意向を受けて、新潟県は次期社長を公募。条件は専従で本社に勤務できること、年収900万円前後。就任時期は9月中。郵送による応募締切は6月23日だった。日本経済新聞の8月30日付の記事によると、県内外から81人が応募し、一次書類審査で6人に絞り込んだ後、役員らによる面接で鳥塚氏に決定したという。

■鉄道ファンであり、航空業界で培った営業センスもある

鳥塚氏は少年時代からの鉄道ファンだ。ブログでも懐かしい写真をたくさん載せて、同世代を中心に幅広い年齢の鉄道ファンを楽しませてくれる。しかし就職先は外資系航空会社だった。歴史的に航空業界は鉄道業界と比べて後発だけど、航空業界は鉄道業界よりも歴史の長い海運業界を手本にしている。安全面、運航面、サービス、保険など、制度や考え方が洗練された部分もある。ブログでは鉄道業界に多くの気づきを与えた。

一方、副業として列車前面展望ビデオを制作販売する「パシナコーポレーション」を設立。現在までに570以上の作品を販売している。こうした鉄道好きと航空会社時代の営業センス、経営手腕が買われていすみ鉄道の公募社長に就任した。

いすみ鉄道時代は国鉄型気動車のキハ52形とキハ28形をJR西日本から譲り受け、急行列車として動態保存運転を実施。昭和の原風景と車両の歴史感を同期させ、「ここにはなにもないがあります」というキャッチフレーズで誘客。伊勢エビを使った高級レストラン列車や、ムーミンを起用したキャラクター列車、沿線に人形を配置して車窓にムーミン谷を再現するなど、鉄道ファン以外の人々にも魅力ある鉄道に仕立てた。

話題作りが功を奏し、いすみ鉄道のメディア露出が増えると、沿線に観光客が増えて活性化された。国内外の鉄道関係者が視察に訪れた。鳥塚氏は社長時代から全国のローカル鉄道と交流を深め、「おいしいローカル線を作る会」を結成。いすみ鉄道退任後も「いすみ観光大使」を務めつつ、東奔西走して奔放な活動を続けている。

■マイレール意識を高めていきたい

その鳥塚氏が鉄道会社の社長業に復帰した理由はなぜか。メッセンジャーできいたところ、すぐに返信をいただいた。このスピード感、ローカル線らしくない(笑)。

「(社長応募は)チャレンジする相手としてやりがいがありそうだと判断しました。

 いすみ鉄道のように、元国鉄の特定地方交通線に関しては(赤字が前提のため)、地域を活性化させるツールとして使うというやり方が、現時点でのファイナルコンクルージョン(最終結論・最適解)だと考えられます。

 次の10年で問題が表面化してくる鉄道が、同じ3セクでも並行在来線です。

 もともと特急列車が走っていて、それでも当時から赤字だった路線が、その特急列車が走らなくなって、黒字になるはずがありません。

 北陸新幹線の延伸に伴って誕生した並行在来線(しなの鉄道、IRいしかわ鉄道、あいの風とやま鉄道)は県庁所在地を通っています。それなりに路線としての需要と重要性があるわけです。しかし、トキ鉄は県庁所在地どころか、新潟県の隅っこをかすめているだけです。にもかかわらず、他県と同じような負担を求められる。大人の事情ですが、ここに構造上の問題があるわけです。

 並行在来線の沿線住民の感情としては『押し付けられた』『あれは県がやっているから関係ない』的なものが大きいと思います。それは無理もありません。

 私はその点を考えたうえで、少しでも『マイレール意識』を持っていただけるように、鉄道を身近なものに感じていただける方法をいろいろやっていきたいと考えています。

 また、大人の事情によって県単位でぶつ切りにされてしまった鉄道を、隣接会社と一緒にもう少しスムーズに利用しやすい列車を走らせるなどの施策を考えていきたいと思います」(鳥塚氏)

■「なにもないがある」から「なんでもある」へ

鳥塚流の「鉄道ファン目線の魅力発信」も忘れない。

「トキ鉄の魅力は、なんでもあるというところでしょう。海あり山あり。交流電化区間と直流電化区間、だけど気動車も走る。スイッチバック駅にトンネルの中の駅。妙高高原という国際観光地。西日本と東日本の接点。直江津駅のターンテーブルと扇形庫。貨物列車の大動脈。考え方によってはお荷物になるようなことでも、見方を変えればとても魅力的な財産になります。

 整備新幹線計画という過去の遺物に端を発する並行在来線の大人の事情を、少しでも現実的なものにして、国家的課題を解決していきたいと考えています」(鳥塚氏)

鳥塚氏は触れなかったけれども、えちごトキめき鉄道には「えちごトキめきリゾート 雪月花」という観光車両もある。これは前社長の嶋津氏に「やるならはじめから」という意向があったからだろう。軽快な会社名や路線名といい、新製車両による観光列車といい、えちごトキめき鉄道は良い意味で「とんがった」鉄道会社だといえる。

そして鳥塚氏も、良い意味で「とんがった」人物だ。ブログは時に刺激的で、はっきりとした物言いは気持ちよい。第三セクター鉄道の社長として重責を担う鳥塚氏だけど、ぜひこのままのノリでいてほしい。えちごトキめき鉄道はもっと面白くなりそうだ。丸まって「とんがり」を失ったら、「えちごトゲぬき鉄道」になってしまうだろう。

杉山淳一

最終更新:9/7(土) 16:21
マイナビニュース

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