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自動運転はタクシー業界の救世主となるか~人手不足・ドライバーの高齢化リスクに対応

9/9(月) 20:20配信

LIMO

本記事の3つのポイント

 ・ 東京オリンピック・パラリンピックの開催を前に、交通手段の1つとして注目されているタクシー。しかし、人手不足や車両の低稼働が問題となっている
 ・ 問題解消に向けて、自動運転技術の導入が注目されている。導入に向けてはコストの壁や規制緩和が必要となりそう
 ・ 日の丸交通はZMPと組んで自動運転タクシーによる公道実証実験をスタート。今後の本格的なサービス導入が期待される

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 東京オリンピック・パラリンピックの開催が、いよいよ約1年後に迫ってきた。現在も多くのインバウンドで都内や地方の観光地は大いににぎわっているが、来年はよりバラエティーに富んだ訪日客で、特に都内各所は活況を呈するものと期待される。

 一方で、移動手段に目を向けると、訪日客の多くは公共交通機関である鉄道やバスを利用するケースが多いだろう。実際、鉄道(JR+民鉄)による全国の総輸送人員は、1日あたり8110万人、年間では約296億人に上る。しかし、電車やバスは、あくまでもパブリックな乗り物であり、地方に行くほど乗降場所や時間に大きく制約を受けてしまう。また、特に首都圏における鉄道網はJR、地下鉄、私鉄が網の目のように走っており迷路の様相を呈している。

 そこで、24時間ドア・ツー・ドアで利用できる交通手段として期待されるのが、タクシーだ。東京都区部におけるハイヤー・タクシーによる1日あたりの総輸送人員は87万人で、年間では延べ3億1900万人が利用している計算になる。

タクシー業界が抱える課題

 現在、タクシー業界が直面する課題・チャレンジとして、(1)ライドシェア(白タク)の解禁、(2)自動運転、(3)深刻化する人手不足、(4)乗務員の高齢化による安全リスク、などが挙げられる。

 東京ハイヤー・タクシー協会によると、タクシードライバーの平均年収(2017年度ベース)は419万円で、全産業男性労働者の685万円と比較すると250万円ほど低い。このため、若年入職者が減少しており、就業者の高齢化が進行。タクシー事業者の中には、保有車両数に対して十分な乗務員を確保できず、稼働率の低下を余儀なくされている事業者も出てきている。

 実際、都内の法人タクシー(約3万台の車両)の稼働率は10年には85.2%であったが、17年には76.1%にまで低下。つまり、4台に1台は車庫に眠っている状況となっている。また、タクシー乗務員の年齢分布を見ると、49.9%が60歳以上であり、高齢化が急速に進んでいることがわかる。

 この不足分をライドシェアで補うという議論がされているが、日本では自家用車を用いたライドシェアは「白タク行為」として禁止されている。民間業者などから規制緩和を求める動きがあるが、タクシー業界では、「競争激化によりタクシーの品質悪化を招く」「白タクドライバーによる犯罪が多発する可能性がる」などの理由から、基本的には容認しないとの姿勢を崩していない。

 そこで、タクシー業界が白羽の矢を立てるのが自動運転技術だ。「例えば、米国や中国においては、自動化とシェアリングをより高めていくことで、自動運転車 配車プラットフォームの構築によるビジネスが間もなく本格的に立ち上がろうとしている。一方、日本においては、自動化は同じだが、シェアリングではなく、相乗りタクシーや子育てタクシー、観光タクシーなどサービスの多様化が求められている。自動化とサービスの多様化を追求していくことで、有人無人タクシーに最適化したプラットフォームの構築を進めていく」と日の丸交通の富田社長は語る。

 現在の一般的なタクシーの収益構造を見ると、73%は乗務員の人件費、残りの27%は車両コスト・人件費(遠隔監視など)および一般管理費が占め、収益はほぼゼロ。これが自動運転タクシーになると、乗務員の人件費が不要となるため、車両コスト・人件費(遠隔監視など)および一般管理費が86%を占め、14%の営業利益を見込めるとの試算(東京ハイヤー・タクシー協会)がなされており、タクシー事業者にとって大きな収益の改善が期待できる。

 加えて、早朝や夜間など、タクシー運転手にとって負荷の大きい時間帯に自動運転タクシーを導入することができれば、安全性の向上にも寄与する。また利用者にとっては、ニーズに見合った台数のタクシーが稼働することで、利用したい時にスピーディーにタクシーを捕まえることができるようになる利点もある。

 自動運転タクシーサービスを普及させていくためには、業界が取り組むべき課題もある。まず、初期段階では導入コスト(償却)および過渡期における人件費の負担が事業者に重くのしかかることになるため、自動運転運行向けの補助や支援方策を検討する必要がある。

 制度面では、帰庫義務の緩和や台数規制、運賃料金制度などの位置づけの明確化が不可欠であることから、業界内で自動運転の受け入れに対する議論をさらに深めていくことが必要だろう。さらに技術面では、予約・決済システムの確立や遠隔管理システムの精度向上、他の交通機関との連携検討・要件の拡大(MaaS)なども進めていくことが、サービスの質の向上につながる。

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最終更新:9/9(月) 20:20
LIMO

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