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鳥谷“戦力外通告”で改めて思う 選手の首を決めるのは球団の自由でも引退を迫る権利はない

9/10(火) 11:03配信

東スポWeb

【広瀬真徳 球界こぼれ話】9月に入りペナントレースが佳境を迎える中、阪神が鳥谷敬内野手(38)への対応を巡り球界関係者やファンから非難を浴びている。

 事の発端は8月30日、鳥谷がその前日29日に行われた球団との話し合いの場で「引退してくれないか」と告げられたことを自ら明かしたからだ。この発言に球界関係者や虎党が「ベテラン選手への配慮がない」と激怒。ネットなどで議論が巻き起こると、球界OBの中畑清氏も「(まだシーズン中の)やる気満々の功労者に対して言う言葉じゃない」と出演する生放送のテレビ番組で怒りをあらわにした。

 鳥谷は阪神一筋16年で、プロ1年目からチームの主力として活躍。野球への真摯な取り組みや人望、長年にわたるチームへの貢献度は計り知れない。だが、プロ野球選手は個人事業主でもある。年俸を払う球団から契約満了により「来季は要らない」と通告されれば従うしかない。これは実績あるベテランでも若手でも同じ。その意味ではシーズン中とはいえ“戦力外通告”は一概に悪いとは言い切れない。

 にもかかわらず阪神が世間から酷評されるのは「選手自身が持つ現役への思いを軽視したこと」に尽きる。

 鳥谷は今季こそ成績は低迷しているものの、現役続行への意欲は人一倍強かったという。本人と親しい関係者に聞いても「トリ(鳥谷)は引退どころか出場機会さえあれば来季以降も結果を出す自信を持っていた。だからこそ今季は出番がわずかでも気持ちを落とさず体づくりに専念していた」と話していた。そんな状況下でプレーを続ける38歳のベテランに「引退してくれないか」では本人が納得するはずがない。球団は将来を考えてのひと言だったようだが“余計な忖度”だったと言わざるを得ない。

 皮肉にも鳥谷と同様に進退が注目される松坂大輔投手(38)も今月に入り球団と面談を行った。だが中日に波風は立っていない。これは今季大半を二軍で暮らす松坂の事情もあるだろうが、最大の要因は球団側が本人の意向を尊重しているからである。

 選手のクビを決めるのは球団の自由である一方、どんな形であれ選手に引退を迫る権利はない。阪神は数年内に進退を問われるベテランが揃う。同じ轍を踏まないためにも、背広組はいま一度選手への対応を見直した方がいい。

 ☆ひろせ・まさのり 1973年愛知県名古屋市生まれ。大学在学中からスポーツ紙通信員として英国でサッカー・プレミアリーグ、格闘技を取材。卒業後、夕刊紙、一般紙記者として2001年から07年まで米国に在住。メジャーリーグを中心に、ゴルフ、格闘技、オリンピックを取材。08年に帰国後は主にプロ野球取材に従事。17年からフリーライターとして活動。

最終更新:9/11(水) 0:28
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