ここから本文です

飲めば痩せられる糖尿病の治療薬は誰でも服用できるのか?

9/10(火) 9:26配信

日刊ゲンダイDIGITAL

【進化する糖尿病治療法】

 夏バテという言葉があるように、かつては夏は暑さで食欲がうせ、痩せてしまう人が珍しくありませんでした。スタミナをつけるために、栄養価の高いウナギを食べるなどして、対策を講じていたわけです。

 ところが今は正反対ではないでしょうか? 地球温暖化で気温は上昇しているものの、冷房が効いた屋内にいれば、“暑さで食欲が落ちる”ということは少ないでしょう。

 一方、暑い最中に外を出歩けば熱中症の恐れがありますから、できる限り車や公共交通機関を使った方がいいとなる。屋外での運動なんてもってのほか。結果的に、夏の活動量はぐっと減ります。いつもと同じように食事をする、または“スタミナ補給”とばかりにウナギや焼き肉を食べる。しかし、体はあまり動かさない。必然的に太りますし、筋肉量は落ちて体脂肪が増えます。

 また、これから気温が下がり、服を着込むようになって体の露出が減りますから、「太ったな」と気になっても、「服で隠れるからいいか」となってしまう人もいるでしょう。夏に増えた体重をそのままにし、あっという間に年末年始を迎え、忘年会や正月、新年会でさらに太る。来年の春、夏に「痩せなくては」と思うものの、行動が追い付かず、また太ってしまい、そして年末年始を迎える……。体重が増える負のスパイラルが出来上がってしまうのです。糖尿病や脂質異常症のリスクも高くなります。

 その負のスパイラルが形成されてしまわないように、まずできるのは、いま現在の体重、体脂肪率はどうなっているかを確認すること。優れた体組成計が比較的安価に手に入りますから、できるだけ頻回に測定するようにしてください。

 体重、BMI、体脂肪率、内臓脂肪レベル、筋肉量、基礎代謝量などの数値を把握しているのと、単に「太ったな」と思っているだけなのとでは、生活の仕方が異なってくると思います。

「昨日食べ過ぎて、体重や体脂肪率が増えた」「この1週間数駅歩いてみたら、体重が減った」など結果が可視化されれば、おのずと「やるといいこと」「やらない方がいいこと」を行動に移せるようになるはずです。

■脂肪を消すタンパク質も見つかった

 ところで、皆さんは「痩せ薬」があればいいのに……と思ったことはありませんか? 

 実は、体重を低下させる作用のある薬がすでに登場しています。それは、糖尿病の治療薬である「GLP―1受容体作動薬」や「SGLT2阻害薬」です。GLP―1は“痩せるホルモン”ともいわれる消化管ホルモン。このホルモンを注射で投与すると、胃の運動を抑えて食事中に満腹感を得やすく、お腹がすきにくく、食事量を抑えられる働きがあります。また、SGLT2阻害薬は尿から糖を排出して血糖値を下げるのですが、それによって体重減少効果も得られるのです。

 いずれも糖尿病の治療薬ですから、「痩せたい」というだけでは服用できません。ただ、糖尿病の患者さんにとっては、「血糖低下プラスアルファ」の効果が得られるのですから、朗報ですよね。日本では別の糖尿病治療薬が広く使われていましたが、心臓や腎臓保護効果を有するというメリットがあり、今後はGLP―1受容体作動薬やSGLT2阻害薬が中心となっていくでしょう。

 ほかにも「痩せ薬」につながるのではないか、という研究結果が発表されています。たとえば、東京大学大学院医学系研究科の宮崎徹教授らは、「AIM」というタンパク質が「痩せ」に関係していることをマウスの実験で突き止めました。AIMが脂肪の蓄積を抑制し、また、脂肪細胞に蓄えた中性脂肪の塊を“消す”作用があるというのです。

 AIMは脳には作用しないため、「脳に作用して拒食症を招く」という心配がないのも利点。さらには、AIMを特定の部位に注射すると、“部分痩せ”も可能だと考えられています。「簡単に痩せられる」時代が今後やってくるかもしれませんね。ただし、バランスの取れた食事、適度な運動、十分な睡眠、ストレスが少ない生活といった“痩せるための必須条件”は、「痩せる」以外のメリットもたくさんある。新たな痩せ薬が登場しても、「好きなもの食べてよし、運動しなくてもよし」とはなりません。

(坂本昌也/東京慈恵会医科大学糖尿病・代謝・内分泌内科准教授)

最終更新:9/10(火) 9:26
日刊ゲンダイDIGITAL

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事