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年1000冊の読書量を誇る作家が薦める「2019芸術の秋」を楽しむ5冊

9/10(火) 21:00配信

GetNavi web

毎日Twitterで読んだ本の短評をあげ続け、読書量は年間1000冊を超える、新進の歴史小説家・谷津矢車さん。今回は最近なにかと騒がしい「芸術」をテーマに様々なジャンルから5冊を紹介してもらいました。

さて、秋である。どんなに日差しが強かろうが、どんなに寝苦しい夜があなたの眠りを妨げようが、暦の上では九月。日本の歳時記に従うなら、今は立派な秋なのである。

そして、秋といえば……食欲の秋、スポーツの秋、そして、芸術の秋などなど、様々な活動の旬とされている時期だ。なぜ秋ばかりこんなにも目白押しのかは大いに謎だが、作家にとって好都合な「読書の秋」というスローガンもある。ぜひとも皆様には読書の秋に身を沈めていただきたい……というわけで、今回も選書である。テーマは「〇〇の秋」に乗っかって「芸術」でいこう。

幕末の天才絵師たちの狂気を描く

皆様は幕末から明治にかけて活躍した浮世絵師・日本画家の河鍋暁斎(1831-1889)をご存じだろうか。死後は日本よりもむしろ海外で人気の高い画家であったが、最近では徐々に国内での知名度も回復し、近年展覧会が盛んに行なわれるようになった人物である。実は小説の世界でも河鍋暁斎は注目を集めており、優れた歴史小説の書き手たちがこぞって暁斎を描いている(これは聞き流してもらって結構だが、わたしも『おもちゃ絵芳藤』(文藝春秋)という本で暁斎をちょろっと書いている)。

そんな河鍋暁斎を主人公に据えた時代漫画がある。『狂斎』(ちさかあや・著/徳間書店・刊)である。本書は河鍋暁斎(この名前は晩年のもので、狂斎と名乗っていた時期もある)の若年期の彷徨を描いた絵師漫画で、絵の道に埋没し、狂気と現の境で絵の世界に揺蕩う浮世絵師の姿を描いている。また、狂斎を取り巻く面々もいい。美少年として描かれる歌川国芳塾の同門にして後の大絵師・月岡芳年や、土佐の血みどろ絵師で知られる絵金なども狂斎とは別の方向性で突き抜けており、狂斎と化学反応を起こしている。芸術に取り組む者たちに巣食う魔の横顔に迫る一冊である。

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最終更新:9/10(火) 21:00
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