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移植臓器、「過冷却」で保存期間3倍に=米研究

9/10(火) 19:20配信

BBC News

ジェイムス・ギャラガー健康・科学担当編集委員、BBCニュース

移植に使う臓器をマイナス4度に過冷却する(固まらせずに凝固点以下に冷やす)ことで、臓器の保存時間が氷による冷却の3倍に延びることが、アメリカの研究チームの実験によって明らかになった。

学術誌「ネイチャー・バイオテクノロジー」に掲載された論文によると、過冷却によって代謝率が下がり、臓器へのダメージを避けられるという。

研究者は、過冷却によって臓器を24時間以上保存しておくことが可能になり、これが臓器移植の革命につながるとみている。

次の段階では、ブタなどの大きな動物で、過冷却された臓器がどれくらいの期間、機能を保つのかを研究する。その後、臨床試験に入るという。

■まずネズミで成功

マサチューセッツ総合病院とハーヴァード医科大学の研究チームは、2014年にネズミを使ってこの技術を開発した。

それはネズミの小さな肝臓を過冷却しつつ、血管から酸素と栄養素を送るというものだった。

しかし、わずか10グラムのネズミの肝臓から1.5キロもある人間の肝臓へと移行するには、さまざまな困難があった。

臓器が大きくなるほど、過冷却の際に氷の結晶ができる危険性が高まる。この結晶によって、細胞が破裂し組織が死んでしまう。

■「並外れた結果」

この問題の解決策は、過冷却する前の肝臓に、凍結を防ぐ保護剤を使うことだった。

通常の氷による冷却では保存期間は9時間だが、人間の廃棄された肝臓を使った実験では、過冷却による保存期間は27時間だった。

研究チームは、この結果は「並外れている」と説明する。

チームの一員であるライニア・ド・フリース博士は、「これは臓器保存の大きな突破口になる」と話した。

「われわれは初めて、人間の臓器をゼロ度以下で保存することが可能だということを証明した」

■「移植シミュレーション」

過冷却された肝臓を元の温度に戻した際、酸素消費や胆汁の生成、乳酸の代謝などから、この肝臓が期待通りに機能していることが確認されたという。

また、過冷却後に人工的な血液供給につないだ「移植シミュレーション」でも、機能することがわかった。

この研究では、実際に移植可能な臓器での実験は行えなかったものの、研究チームは、臓器が健康なほど保存期間も長くなるとみている。

研究チームのコルクト・ユーゲン博士はBBCの取材で、「何日とは言えないが、およそ数日という範囲だ」と説明した。

「われわれが実験で使えるのは移植に適していない臓器だ。しかしすでに傷ついている臓器であっても、実験で1日以上保存できたのは素晴らしい」

■臓器の適合

臓器が体外で生きる時間が長くなればなるほど、移植を望む患者の手に渡る可能性が高くなる。

また、ドナーから摘出された臓器が患者に適合するかどうかを調べる時間も長く取れる。

イギリスの国民保健サービス(NHS)はすでに、より長時間の臓器保存を目的に、摘出した臓器を人間の体温と同じ温度で保存する手法を取り入れている。

この方法では、摘出された臓器を体温と同じ温度に保ちながら酸素や栄養素を補給する「かん流」用の機械につなぐ。

過冷却の技術は、この方法を基にしているという。

■目標は「臓器バンク」

ユーゲン博士は、「かん流と過冷却、2つの方法で臓器移植の世界が大きく変わる」と指摘する。

「究極的な目標は、(何年も保存できる)臓器バンクだ。24時間臓器を保存できたからといって、全てが解決、それで終わりというわけではない」

イギリスの慈善団体、肝臓トラストによると、毎年何百人もの患者が、移植を待つ間に亡くなっているという。

同団体のパメラ・ヒーリー会長は、「不特定のあるタイミングで使用可能な臓器の数を増やせれば、移植の待機時間を減らし、臓器移植の成功率を上げることができる」と話した。

「今回の、移植可能な肝臓の数を増やす研究プロジェクトを歓迎している。さらなる発達を期待している」

(英語記事 'Supercool' method triples organ survival)

(c) BBC News

最終更新:9/10(火) 19:20
BBC News

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