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うまくいってもいかなくても、お金はください(IT訴訟解説)

9/11(水) 7:00配信

@IT

 昨今、「レベニューシェア型」という言葉をよく耳にするようになった。

 ベンダーは、ユーザー企業のために開発などのサービスを提供しても、その対価としての費用を請求しない。その代わり、発注者が出来上がったサービス(Webサイトなど)を利用して売り上げを上げたら、そのうち何割かを報酬としてもらう、というものだ。「売り上げの1割を報酬とする」場合なら、通信販売サイトで1000万円の売り上げがあれば、その1割の100万円をベンダーの取り分とする、というあんばいだ。

【売り上げの一部でお支払いをします(イメージ画像)】

 発注者からすれば、売り上げが上がって初めて支払い義務が発生するので、リスクがない。一方のベンダーにしても、提供したサービスが利用されている限りは、お金が入り続ける仕組みなので、それなりに魅力的な形態だ。うまくいけば、正にWin-Winの関係を続けられるというわけだ。

 こうした契約は、仕事の「成果」に重きを置くアジャイル開発とも相性が良いので、今後増えていくのではないかと思われる。

 しかし、Win-Winの関係も、あくまでソフトウェア開発などのサービス提供がうまくいってこその話である。「開発が失敗して発注者の商売に使えなくて、ベンダーには一銭も入らない」という可能性があることは、中学生でも分かる理屈だし、実際、裁判にまで至ったケースもある。

 今回は、事例を紹介しながら、レベニューシェア型契約の危険性とベンダーが取れる対処法を考えてみたい。

レベニューシェア型契約か、商法512条か

 まずは事件の概要から見ていきたい。

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東京地方裁判所 平成30年2月27日判決から

A社(ユーザー企業)とB社(ベンダー)は、A社のWebサイトを共同で開発することに合意した。A社はそのWebサイトから自社サービスを展開して、売り上げを上げるもくろみであり、B社には開発費用を支払う代わりに、その売り上げの一部を支払うという合意内容だった(いわゆるレベニューシェア型契約)

※ただし、この時点で両社の間には正式な契約は結ばれていなかった。

両社による開発はアジャイル型で進められたが、B社の作業が遅れ、スプリントごとの進捗(しんちょく)目標を達成できない状態となった。リリース予定も何度となく変更したが、結局、開発は完了することがなかった。

サービスが開始されなかったことから、A社はB社に対して費用の支払いを行わなかったが、B社は商法512条に基づく報酬または、契約締結上の過失に基づく損害賠償として2600万円を請求した。
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 「レベニューシェア型契約で合意していたのに、今更請求できるのか」と考える読者もあるだろう。ただし、判決文中にあるように、両社の間に正式な契約はなかった。プロジェクトが頓挫した時点の対応について、正式には定められていなかったのである。

 そして、そのような場合には、商法512条による請求が可能なのではないかとB社は訴えたのである。商法512条の条文は以下のようなものだ。

商法512条---

商人がその営業の範囲内において他人のために行為をしたときは、相当な報酬を請求することができる。
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 本裁判では、商人とはベンダーだ。レベニューシェア型契約は成立していない。ベンダーが開発を行えば、その分の報酬を請求できるので、開発が頓挫しても働いた分は請求できるはずだ。だから費用は払ってもらう、というのがB社の論だ。

 ただ両者は、実質的にレベニューシェア型の契約で合意はしていたようだ。実質的な合意はあっても商法512条などを理由に、B社の請求は認められるのだろうか。もし、これが認められるなら、レベニューシェア型契約におけるベンダーの危険性が減じられるとも考えられる。

 判決の続きを見てみよう。

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東京地方裁判所 平成30年2月27日判決から(つづき)

B社とA社との間で収益分配の比率などの詳細が詰められるに至ってはいなかったものの、B社がA社に提案し、A社がこれに応じたとおり、B社は、開発するシステムに基づくサービスが開始されることにより得られる収益を分配することにより開発に要した費用を回収して利益を上げることを前提に、システム開発を行っていたのであるから、当事者のかかる合理的意思を前提とするならば、本件において商法512条に基づく報酬請求権が発生するには、B社が単に労力を投じたに止まらず、少なくとも、B社がシステムを開発し、A社がこれに基づきサービスを開始することができる状態に至ったことが必要というべきであるが、かかる状態には至らなかったことが認められる。
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 裁判所は、B社の請求を認めなかった。

 実質的にレベニューシェア型の契約が成立しているので、A社のサービスが開始されていない状態で費用の請求は認められない。商法512条に基づく費用の請求はできないという判断だ。

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最終更新:9/11(水) 7:00
@IT

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