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「アーーーーー」は監督のアドリブだった!? (たぶん)世界に1人だけの実写版デビルマン研究家にインタビュー

9/11(水) 12:30配信

ねとらぼ

 「実写版デビルマンよりもひどかった」インターネットをしているとそんな感想を一度は目にしたことがあるのではないでしょうか。永井豪原作の漫画『デビルマン』を那須博之監督が2004年に実写映画化したのが実写版「デビルマン」。

【画像】2年間で集めたデビルマン資料

 公開直後から酷評が相次ぎ、現在でもクソ映画の代名詞として語り継がれるなど、何かと悪い意味で話題になりがちな「邦画の実写版」というジャンルの中でも群を抜いて悪名高いこの作品ですが、実写版デビルマンをきちんと最後まで見たことのある人、そしてその中でも「実写版デビルマンとはなんなのか」「なぜあのような映画が作られたのか」「あの描写の意味は? その根拠は?」という部分まで掘り下げて考えている人は以外と少ないのではないでしょうか?

 そこで、今回は実写版デビルマンについて研究をしているというグレイト斎藤さんにインタビューしました。

実デビの「地位」は揺るがない

――最近では映画の「ドラゴンクエスト ユア・ストーリー」が「実写版デビルマンよりひどい」などといわれていました。このように、ネットなどですぐに「デビルマン級」となる風潮についてはどう思いますか?

 実デビ(実写版デビルマン)に限らず、安易な雑語りは世の常なので仕方がないな、と思ってます。ただ、そうやって安易な雑語りをされ続ける限り、日本の最も有名なクソ映画としての実デビの地位は揺るがないでしょうね。実デビが最もひどいクソ映画とも、クソ映画の筆頭であり続けてほしいとも思っていません。ですが「クソ映画=実デビ」という大衆の認識を塗り替えてしまうような超ド級のクソ映画が作られていいわけがないですから……。

――実写版デビルマンとはどうやって出会いましたか?

 簡単に言うと「クソ映画との評判を聞いて興味を持った」のが最初です。

 2013年に「HUNTER×HUNTER 緋色の幻影」という映画が公開されたのですが、これがハンターファンにとってはひどい出来で劇場で見てぼうぜんとしたんです。でも当時は映画を見る習慣がなかったので、この作品がどの位ひどい出来なのか、何が悪かったのかをうまく言語化できなかったんです。そこで比較対象として、インターネット上でとりわけ評判の悪かった実デビに興味を持った……というのがきっかけですね。

――最初に見た時の感想は?

 「評判になるだけの事はあるひどい出来」と思いましたね。実写版を見る直前に予習として原作を読んでいたこともあって、その落差も大きかったです。ただ、手を抜いているとか原作を軽んじているとは思えず「各々が全力を尽くして作った」事は感じられたので、さほど悪印象はありませんでした。

――では、なぜそこから研究を始めることに?

 あまり深い理由はないです。偶然ヤフオクで映画の台本を見つけたのが最初のきっかけでしょうか。当時は実デビに大して興味があった訳ではなく、単に「珍品」を衝動買いしただけでした。ただ、入手した台本を読んで情報をまとめていると、ネット上には実デビの「感想や評判」はあっても「作品そのもののまとまった情報」が無いなって思ったんです。

 それならば、今ちょうど手元に第一級の資料があるし、今後他の誰かがそんな研究をするとも思えないから、自分のやれる範囲でやってみようか……と思って研究を始めました。大学時代は歴史学を専攻していたので、その時の研究手法を思い出しながら続けていたら今の状態になっていました。

――実写版デビルマンがここまで酷評されることになった理由について、どう考えていますか?

 そうですね……、あくまで仮説になってしまいますが……。

・原作は老若男女に広く知られているタイトルであり、コアなファンも多いのでもともと話題性はあった点。
・TVCMもかなりの本数が打たれていたため、映画自体の認知度もそれなりに高かった点。
・監督、脚本、キャスト、演技、アクション、などダメな要素が非常に多岐にわたっているため、説明しようにも一言で言い表わせない=たくさん語る必要があり、実デビ本編だけでなく「実デビについて語る事」が話題として存在感を持ってしまったという点。
・原作漫画のストーリーを終始ちゃんとなぞっているため「タイトルと設定を借りただけの別物」と切り捨てることもできなかった(特に終盤のアルマゲドンを映像化したのは実デビが初なので、デビルマン史を語る上でも決して無視できない存在になってしまった)という点。

 これらの点が相互に作用して、酷評が酷評を呼ぶような形で「すごいクソ映画」のイメージが定着してしまったのではないかと個人的に考えています。

――デビルマンといえばNetflix版の「DEVILMAN crybaby」が制作されて話題になりましたが、こちらはご覧になりましたか?

 実はまだ見ていません。実デビとのつながりがある作品だと聞いてはいるのですが、気後れしてしまって視聴に踏み切れない状態が続いています。

――気後れ、というと?

 うまく言えないのですが……、影響されやすい人間なのでcrybabyを見たら実デビの解釈や評価もそちらに引きずられてしまいそうな気がするんです。

 それと、自分の調査研究は「実デビはどのようにして生まれたか」に集中しているので、実デビが後世に与えた影響……のような実デビ以後関しては優先順位が低いというのもあります。

――研究に使う資料集めに費やした時間、金額はどのくらいですか?

 最初の台本を入手したのが2年前なので、足かけ2年になります。金額は10万くらいでしょうか。国会図書館への遠征費用が一番大きかったです。

――実写版デビルマンの情報は現時点で何%ほどまとめられたと考えていますか?

 本編に関する情報なら、7割くらいは集まったんじゃないかな、と思います。これ以上の情報となると当時の関係者にインタビューする必要があるので、現状で頭打ちの状態になっていますね……。

――これまでの研究で実写版デビルマンを語る上での大発見はありましたか?

 田んぼで「アーーーーー」と叫ぶシーンは、脚本には無い(というか脚本の指示と真逆)おそらく監督のアドリブであること。

※「アーーーーー」とは……育ての父(宇崎竜童)に主人公がデビルマンであるとバレてしまったシーンで発せられる謎の奇声のこと。実写版デビルマンで最も有名なシーンとされている。

 デーモンの集団が建物の出入口からワラワラ出てきて一方的に射殺されるシーンにはちゃんと理由があったこと。

 主演2人のインタビュー等における生意気な態度は、自発的なものではなく恐らく所属事務所の指示だったこと。

 大発見といえるほどのものかは分かりませんが、このあたりは本編映像を見ただけでは分からない事だと思います。

――一番好き・嫌いなシーンはどこでしょうか?

 好きなシーンは……、アポカリプスデブのシーンですかね。

※アポカリプスデブとは……タンクトップを着た巨漢3人組の通称。実写版オリジナルキャラクターで出番は短いが見た者に強烈な印象を残す。上映時間のちょうど中間地点で登場するため残り時間を計る目安としても使われる。

 あの20秒だけは「那須博之監督の実写版デビルマン」でしか見られない、撮られない映像だと思うので。

 嫌いというか残念に思っているシーンは、明が美樹を守る為にデビルマンに変身してから連行されるまでのシークエンスですね。脚本ではスピード感・緊迫感のあるシーンなんですが映像だと変に間延びした感じになってしまっているので……。

――那須監督は実写版デビルマン公開後亡くなってしまいましたが、監督に話が聞けるとしたら何を聞きますか?

 明が牛久を探すときに顔を海面に「バチャーン」とつけるシーンの意図を聞きたいですね。あのシーンだけは本当に意味が分からないので。あとは大量にあるという本編未使用のお蔵入り映像を見せて頂きたいです。

――ではネット上の実写版デビルマンの感想を見て思うことはありますか?

 どの感想も楽しく眺めていますが「CGもPS2以下の低レベル」という意見だけはムッときますね。独特の手法で作られたCGだから好みに合わないということはあるだろうけど、2004年当時のクオリティーで考えれば邦画トップクラスですから。

※実写版デビルマンに用いられた特撮技術は「T-Visual」と呼ばれ、東映と東映アニメーションがタッグを組み、CG・実写・ミニチュアなどを高度に組み合わせて作られたものだった。

――冒頭で「実デビの地位は揺るがない」と仰っていましたが、これまでで地位を揺るがしかけた作品はありましたか?

 実デビよりつまらなく感じた作品、見るのが苦痛だった作品はいくつもありますが、地位を揺るがすような作品はありません。オンリーワンの特殊さがあるからこそ、いまだに連綿と語り継がれているのだと思います。

――実写版デビルマンは深い、ということですか?

 一見して分からない事が多過ぎるだけで、深くはないです。

――最後に実写版デビルマン未見の人に向けて、メッセージを。

 見ようかどうか迷っているなら、ぜひ見てほしいです。

 見てほしいですが、1人で見るのではなく他の人(できれば視聴済みの人)と一緒にキャッキャしながら見ることをおすすめします。最近はSNSを介して「同時視聴会」が催される事もあるので、そういった機会を利用すれば楽しんで見られるかと思います。

 以上、実写版デビルマン研究家インタビューでした。

 なおグレイト斎藤さんによる実写版デビルマンの研究結果はTogetterに詳しくまとまっているので、実デビ未見の人も既に見たという人も興味のある方はぜひ一度読んでみてください。実写版デビルマンに対する考え方が変わるかもしれません。

ねとらぼ

最終更新:9/11(水) 12:30
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