ここから本文です

日本は主権国家といえるのか? 米軍優位の日米地位協定・日米合同委員会と横田空域(10)日本の空の主権を侵害する空域(吉田敏浩)

9/11(水) 11:41配信

アジアプレス・ネットワーク

◆騒音被害と墜落事故の危険

日本の主権を侵害し、日本の法律を超越して米軍に特権を与える日米合同委員会の密約。

その代表的な例が、日米地位協定上も、航空法上も法的根拠がないのに、横田空域と岩国空域での航空管制を、米軍に「事実上、委任」して認めている「航空管制委任密約」である。

【関連写真を見る】日本は主権国家といえるのか?(8枚)

横田空域は首都圏から関東・中部地方にかけて、東京・神奈川・埼玉・群馬のほぼ全域、栃木・新潟・長野・山梨・静岡の一部、福島のごく一部、合わせて1都9県にまたがる、南北で最長約300キロ、東西で最長約120キロの地域の上空をすっぽりと覆う広大な空域である。

最高高度約7000メートルから、約5500、約4900、約4250、約3650、約2450メートルまで、階段状に6段階の高度区分で立体的に設定されている。

ちょうど日本列島中央部の空をさえぎる、最も高い部分でヒマラヤ山脈なみの、目に見えない巨大な「空の壁・塊」となっている。

そこは日本の領空なのに、米軍が戦闘機やオスプレイなどの訓練飛行、輸送機の発着などに独占的に使用できる空域である。

空域の航空管制を、横田基地の米軍が握っているからだ。
航空管制官の指示を受けて計器飛行する民間機は自由に通過できない。

航空管制とは正式には航空交通管制(ATC)といい、航空機の安全かつスムーズな運航のために、離着陸の順序、飛行ルート、高度などを無線通信などによって指示し管理する業務である。

横田空域を計器飛行する民間機が通るには、米軍の許可が必要だ。
しかし、1便ごとに飛行計画書を提出して事前調整しなければならず、許可が得られるかどうかも不確かで、容易ではない。

だから、悪天候や機体故障など緊急の場合に限られているのが実情である。
そのため、羽田空港や成田空港に出入りする民間機で、横田空域を通る定期便ルートはない。                                      
羽田空港を使う民間機は、急上昇して横田空域を飛び越えたり、迂回したりする非効率的な飛行を強いられる。

発着便の混雑時には、迂回してきた着陸機が行列をなす空の大渋滞も起きる。
飛行時間が長びき、ニアミスや衝突事故などのリスクも高まる。           

民間機のパイロットなどによる航空関係の複数の労働組合からなる、航空安全推進連絡会議は毎年、国土交通省に対し、「民間航空機の安全かつ効率的な運航を阻害している軍事空域の削減」を求めている。

まさにその軍事空域である横田空域についても、民間機が自由に通れないため、羽田空港からの離陸後、急旋回・急上昇して横田空域を飛び越えるという、航空機の性能上きびしい飛行を強いられ、安全かつ効率的な運航の妨げになっていると指摘し、早期返還を訴えている。

横田空域では、横田基地や厚木基地を拠点にした米軍機が、基地周辺や群馬県渋川市周辺上空などで低空飛行訓練などを繰り返し、住民に多大な騒音被害と墜落事故の危険を長年にわたりもたらしてきた。

また、岩国空域は山口県東部にある米軍岩国基地を中心に、山口、愛媛、広島、島根の4県にまたがる地域の上空を円形状と扇形状に、基地から日本海側で最長約100キロ、瀬戸内海側で最長約90キロの範囲で、地表からの高度約4300~約7000メートルの階段状に立体的に覆っている。

そのため、岩国錦帯橋空港と松山空港での民間機の離着陸に、岩国基地の管制官の許可と指示が必要とされ、大分空港に着陸のため進入する民間機が困難な飛行を強いられる高度制限を受けるなど、民間機の運航に影響が出ている。

このように、日本の空なのに日本側の航空管制が及ばず、管理できない、つまり日本の空の主権が米軍によって侵害されているという、独立国としてあるまじき状態が長年にわたって続いているのだ。(つづく)

*関連図書
『「日米合同委員会」の研究』謎の権力構造の正体に迫る(創元社)吉田敏浩 2016年
『横田空域』日米合同委員会でつくられた空の壁(角川新書)吉田敏浩 2019年
『日米戦争同盟』従米構造の真実と日米合同委員会(河出書房新社)吉田敏浩 2019年

最終更新:10/10(木) 17:35
アジアプレス・ネットワーク

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事