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「あなたの番です」も…ドラマに“猟奇殺人犯”が多用されるワケ

9/12(木) 9:26配信

日刊ゲンダイDIGITAL

「設定が安直すぎる」なんて声もある。日本テレビ系の連続ドラマ「あなたの番です」は、田中圭(35)と原田知世(51)のダブル主演で、日テレでは25年ぶりとなる2クール放送で話題に。8日に放送された最終回は、平均視聴率19%台と番組最高を記録した。

 以下、ネタバレになるが、結局、連続殺人事件の“黒幕”は「人を殺すことで生きていることが実感できる」というサイコパスの猟奇殺人犯だった。

「犯人は元乃木坂46の西野七瀬が演じた女子大生でした。4月期の1クール目の視聴率は1ケタ台と低迷しましたが、7月期の2クール目は2ケタ台とジワジワと上昇。ドラマの原案と企画が秋元康氏だけあって、視聴者の心をつかむのがうまいのでしょうが、一方で、ネット上には西野の演技を酷評したり、殺人衝動にあらがえない犯人という設定が『安直すぎる』という声も少なくない」(テレビ誌ライター)

 確かに、ドラマでも映画でも“猟奇殺人犯”は見飽きた感がある。「またか」という気がしてしまう。1991年公開の米映画「羊たちの沈黙」でアンソニー・ホプキンスが演じたレクター教授に衝撃を受けた人は多いだろうが、あれから30年近く。今はもう慣れっこじゃないか。

「類似品が腐るほど再生産されるのは、作り手も演者も楽だからでしょう」と、映画批評家の前田有一氏はこう続ける。

「サイコパスの猟奇殺人犯は、記号的にはファンタジー映画のモンスターと一緒で、何でもアリ。設定に多少無理があっても『だって普通じゃないもんね。仕方ないよね』で済まされてしまう。犯人を猟奇殺人犯にしておけば、どこにも角が立たない。視聴者から『職業差別だ』なんてクレームが入るリスクも少ないわけです。その点、動機がある殺人ドラマは、見る側を納得させる心理描写が難しい。作り手の力量が問われます」

 犯人を猟奇殺人犯にしておけば、コンプライアンスがどうだ、ポリティカル・コレクトネスがどうだ、とかに頭を悩ませる必要もなくなる。

「サイコパスという言葉自体あまり知られていなかった時代に、ゼロからレクター博士をつくり上げたアンソニー・ホプキンスはさすがですが、今は猟奇殺人犯の演技のお手本がいくらでもある。演者も楽でしょう。ただ、犯行がバレた途端に狂ったように高笑いする犯人が多いのはいかがなものか……。いずれにせよ猟奇殺人犯に頼りすぎ、動機など心理描写の部分をおろそかにしていると、日本のドラマも映画も深みがなくなるばかりです」(前田有一氏)

 もちろん、2017年公開の映画「三度目の殺人」(是枝裕和監督)のように猟奇殺人犯に頼らない秀作もあるが、それは役所広司や広瀬すずの演技力があってこそか。

最終更新:9/12(木) 9:26
日刊ゲンダイDIGITAL

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