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「今再び、”ミルラのしずく”を採りに行こう」―『FFCCリマスター』インプレ&荒木氏・岩崎氏・板鼻氏インタビュー

9/12(木) 12:00配信

インサイド

スクウェア・エニックスより2020年1月23日の発売が発表されたニンテンドースイッチ/PS4/スマートフォン対応のアクションRPG『ファイナルファンタジー・クリスタルクロニクル リマスター』。2003年にニンテンドーゲームキューブ(以下、GC)で発売されたタイトルのHDリマスターとなる本作は、グラフィックの強化、ユーザーインターフェースの改善、オンラインマルチプレイの実装、武器やステージの追加など、さまざまな改良が施されています。8月某日、そんな本作を先行体験する機会に恵まれましたので、プレイインプレッションとスタッフインタビューをお届けします。
※今回お話をうかがった岩崎氏の「崎」の字は正しくは「たつさき」となります

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◆息を合わせて連携を放つのが楽しいマルチプレイアクションRPG
本作は世界設定とシステムが密接な関係にありますので、まずはストーリーを引用して紹介しましょう。

遥か昔 この大陸を巨大な隕石が襲い 世界は猛毒の瘴気に包まれた
一度は奪われた未来に希望をもたらしたのは 瘴気を浄化するクリスタル
だがクリスタルの命も永遠ではない
クリスタルの命を紡ぐ「ミルラのしずく」を求めて キャラバンは冒険へ旅立つ
この物語はクリスタルと共に生きる若者たちの冒険記『クリスタルクロニクル』

本作は前述した通りマルチプレイ対応のアクションRPGですが、もっとも特徴的なのが、ストーリーにもある瘴気と、瘴気を浄化するクリスタルを収めた「クリスタルケージ」です。プレイ中はクリスタルの有効範囲が円状に表示されており、その範囲から出るとスリップダメージ(持続ダメージ)を受けます。そして、ケージを手に持っている間は移動しかできず、攻撃や防御は行えません。誰がケージを持つか? 全員で武器を手に戦いたいときは、ケージをどこに置くのが望ましいか? それを(お互いに)考えるのが、本作のマルチプレイのキモとなります。

青いラインで示されている円がクリスタルケージの有効範囲です
戦闘は、攻撃や魔法などのコマンドをRボタンorLボタンで選択し、アクションボタンで実行します。武器による攻撃はテンポよく押せば連続攻撃になります。連打では出づらいですが、タイミングがシビアというほどではありません。また、攻撃と魔法のほか、装備しているアイテムの使用や敵の攻撃によるダメージを無効化/軽減する防御も、同様にコマンドを選択してからアクションボタンで発動します。

前述のクリスタルケージ同様、マルチプレイのもう一つのキモとなるのが他プレイヤーとの連携です。攻撃や魔法を選択してアクションボタンを長押しすると、画面上に左アナログスティックで動かせるサークルが出現します。これを敵に重ねてボタンを離すと強力な必殺技や魔法が発動するのですが、他のプレイヤーと息を合わせて発動することでさらに強力な連携攻撃となります。

必殺技と魔法を合わせれば『FINAL FANTASY』シリーズでもおなじみの「魔法剣」となり、魔法同士を合わせれば「マジックパイル」に。ファイアを合わせればファイラになるなど、魔法のランクやダメージがアップします。オンラインマルチプレイ時は定型文によるチャットを行えますので、それで意志の疎通を計るのがよいでしょう。

4人で息を合わせれば、強化の度合いもそれだけ大きくなります
マルチプレイ時は定型文によるチャットでコミュニケーションできます
なお、ソロプレイで遊ぶ際は、旅のお供をしてくれるモーグリの「モグ」がケージを持って付いてきてくれるほか、戦闘時は魔法を使ってくれることもあるので、それにタイミングを合わせれば魔法剣やマジックパイルも放てます。さらに、マジックパイルはメニューのコマンドリスト上で魔法2つを隣り合わせて配置することで、強化された魔法のコマンドをあらかじめ作っておくこともできます。

写真左:ソロプレイで相棒を務めてくれるモーグリのモグ
写真右:ソロプレイ時は合成魔法をあらかじめ作っておくこともできます

◆ストレスフリーなリアルタイムマッチング
今回の先行プレイでは、序盤のステージ「リバーベル街道」を4人によるマルチプレイで試遊できました。4人集まってのプレイでしたので、「マジックパイルしましょう」、「ケージを持っていきます」、「どなたかフェニックスの尾かレイズをお願いします」などと声を掛け合いながら遊べたので、GC版を遊んだ筆者は懐かしいかぎりでした。前述したように、これらの声のかけあいは定型文チャットでも行えます。

オンラインマルチプレイでもうひとつ特徴的なのが「4人集まるまで待つ必要がない」ということです。マッチングはステージ開始後も順次行われており、マッチングが成立次第、リアルタイムで他のプレイヤーが参加してくれますので、4人そろうのを待つことなく、1人や2人でもスタート可能となっています。

今回筆者がプレイしたのは、画面左にいるリルティ。
推しのクラ子(女クラヴァット)はすえなが編集長に取られてしまいました
「ボス直前から参加した人は、短いプレイ時間で報酬を手にできて不公平では?」と感じられた方もおられるかもしれませんが、ステージクリア後には、プレイの過程で倒した敵などに応じて各プレイヤーがランク分けされ、ランクの高い順に好きなランダム報酬を選んで受け取れるようになっています。ステージの最初から遊んでいる人ほど、よい報酬を得やすくなっていますのでご安心ください。

”試しにサンダーでマジックパイルをしてみたのはいいものの、そもそもこのボスは雷属性が全然効かない敵だった”などのちょっとしたハプニングもありつつも、マルチプレイはつつがなく終了。もともと、GC版のころから「複数人でプレイしないとクリアすることすら難しい」ほどのガチガチなゲームではなかったこともあり、マルチプレイを気軽に楽しめそうだと感じました。

息を合わせてサンダーをマジックパイルし、発動したサンダガで敵を一掃! ……とできれば理想的
最大4人のマルチプレイに対応したスイッチ/PS4/スマートフォン用アクションRPG『ファイナルファンタジー・クリスタルクロニクル リマスター』は2020年1月23日発売予定です。価格は、スイッチ版、PS4版が4800円+税、スマートフォン版が2800円(税込)となっています。

次のページでは、体験プレイ後に行ったスクウェア・エニックス第一開発事業本部ディビジョン3の荒木竜馬プロデューサーと、GC版の開発にも携わったサウンドディレクター・岩崎英則氏へのインタビューをお届けします。リマスター版の魅力のほか、GC版開発当時の制作秘話などもうかがえましたので、当時GC版を遊んだという方もぜひご一読ください。

<cms-pagelink data-text=”荒木Pと岩崎氏が語る『FFCC』の魅力!” data-page=”2” data-class=”center”></cms-pagelink>

◆荒木氏&岩崎氏インタビュー―『FFCC』は思い出の1本


――『ファイナルファンタジー・クリスタルクロニクル』のリマスターを手がけることになった経緯をお聞かせください。

荒木自分の所属部署の方針の一つに「過去のIPを生かしたプロジェクトをやろう」というものがありまして、どのタイトルを扱うか、好きに選ばせてもらえることになったんです。それならばこれしかない、と選んだのがきっかけです。

本作のGC版が発売されたのは2003年で、当時の僕は同業他社で3DCGデザインを手がけていたのですが、本作(GC版)の技術力の高さやデザインの表現の幅に大きな衝撃を受けて弊社の門を叩いた思い出の一本なんです。ですので、もしリマスターを手がける機会があるならこの作品しかないとずっと考えていました。

――本作は、最初にスイッチとPS4でのリリースが発表され、後日、スマートフォン版もリリースすると発表されました。スマートフォンへの移植は急遽決まったのでしょうか?

荒木いえ、スマートフォン版でのリリースも企画当初から決まっていました。時期を少しずらしての発表になったのは、実は、当初スマートフォン版はかなり時期を遅らせてのリリースにするつもりだったんです。ですが、全プラットフォームでのクロスプレイが実現できそうだという話になりまして、それならばリリースも同時にすべきだろう、と。

4プラットフォームでのクロスプレイに対応! プラットフォーム間のセーブデータ移行にも対応しています
※複数プラットフォームで遊ぶ場合は、プラットフォームごとにソフトの購入が必要となります
――スマートフォン版とひと言に言っても、Android版とiOS版でそれぞれ異なる手間がかかるでしょうし、開発は4プラットフォーム同時進行となったわけですよね。

荒木はい。「遊んでくれる方のことを考えれば、この方が絶対にいい」という一心で始めましたが、なかなか大変で……。社内でも「よくやろうと思ったなぁ」と言われることがあります(笑)。

――同時にリリースされてくれれば、どのプラットフォームのプレイヤーもいっしょに遊んで強くなれますね。コンソール版とスマートフォン版で価格が異なりますが、どのような差異があるのでしょうか。

荒木まず、ゲームの要素は全プラットフォームでまったく同じです。ただ、スマートフォン版は最新モデルではない少し前の機種もフォローしている兼ね合いで、グラフィックスはコンソールの方に分があります。価格差も、その辺に出ているとお考えいただけますと幸いです。

『FFCCリマスター』のプロデューサー・荒木竜馬氏
◆追加ダンジョンはマルチプレイでもやりごたえのある内容に!
――追加要素のボリューム感はどのようなものでしょうか?

荒木ストーリーはGC版を大切に、当時のまま遊んでほしいという思いから、こうした追加要素はすべてストーリークリア後の”+αの楽しみ”として遊ぶものになります。ただし、追加されるいくつかのダンジョンは、その分マルチプレイでちょうどいいくらいの攻略しがいのある難易度になっています。武器や防具なども、追加ダンジョンに応じて新しいものが手に入るようになります。

――リマスターを手がけるにあたり、GC版のプロデューサーだった河津秋敏氏やディレクターの青木和彦氏らとはどのような話をされましたか?

荒木はい。河津からは「当時のユーザーに向けてしっかり作ってほしい」、青木からは「今発売するゲームとして、今の世代が遊びやすいものにしてほしい」と言われました。ただ漫然とリマスターしてはいけない、とあらためて気を引き締めることができました。

――”今の世代が遊びやすい”ものにするために行った改善例はどのようなものがありますか?

荒木たとえば、オンラインマルチプレイ時のマジックパイルです。対面で遊ぶよりはどうしても息を合わせづらくなってしまいますので、それを補佐するために定型文チャットに加え、新たに「パイルメーター」を導入しました。オンラインマルチプレイ時はこのメーターを見ながら遊んでもらえれば、タイミングを合わせやすくなると思います。

――4人そろうのを待たずとも、マルチプレイを始められるのもいいですね。

荒木まずはすぐゲームを始められるのが重要だろうと思い、このような仕様にしました。物語の上でも、本作の世界にはいくつものキャラバン隊がミルラのしずくを求めて冒険していますので、行く先で他のキャラバン隊に偶然出会って力を合わせた……というように想像して楽しんでもらえればと思います。

――1人で出発して、道中の弱いモンスターと戦いながらマッチングを待つということもできそうです。

荒木もちろんできますが、マルチプレイ時はモーグリの「モグ」がいませんので……。

――あ、そうか。ケージを持って移動し、ケージを地面に置いて敵と戦い……としなければならないんですね。最低でも2人になってから出発するのがよさそうですね。マルチプレイ時は、こちらの人数に応じて敵の強さが変化したりはしますか?

荒木これはGC版からの仕様になりますが、ソロ、2人、3人、4人でそれぞれ強さが変わります。ですので、ソロだけで遊びたい方も、それで無理なく遊べるバランスになっています。ただ、リマスター版で新規に追加したダンジョンはマルチプレイを楽しんでほしいとの思いから、4人プレイを前提にした調整にさせていただきました。

マルチプレイはフレンドを誘うこともでき、フレンドはプラットフォームの垣根を越えて作れます。また、フレンドではない見知らぬ人とマルチプレイをする際も、マッチング条件としてプラットフォームをしぼったりもできますので、お好みのスタイルや設定で、お気軽に遊んでいただければ嬉しいです。『FFCC』の核は、”手軽で楽しいマルチプレイ”にあると思っていますので!

――他の改善/変更点としては、プレイヤーキャラにもボイスがついていますね。

荒木各種族、性別ごとに4種類ずつ用意しています。とはいえ、基本的には主人公はしゃべりませんので、戦闘時のかけ声や魔法名がほとんどです。あとは、レイズやフェニックスの尾で生き返ったときにもしゃべったりします。キャラクターのボイスはサウンドチームのこだわりがありまして、同じボイスパターンでもひとつのセリフにバリエーションがあって、それがランダム再生されるんですよ。たとえば、ファイアを使うだけでも「ファイア」と言うときと「ファイアー!」と言うときがあります。

――それは新鮮味があって楽しそうですね!

岩崎すべての魔法名でそれを収録しましたので、プレイしていて一辺倒になりづらいのではないかと思います。

――グラフィック周りはどれくらい手を入れておられますか?

荒木ポストエフェクトを追加したり、シェーダーを描いたりともちろん細かい部分にも手を入れていますが、基本的には今のモニターやディスプレイでの鑑賞に耐えられるよう、テクスチャーの解像度を上げたくらいですね、一部大型のボスモンスターは、見栄えがするようポリゴン数を増やしています。元々のテクスチャーが繊細に描き込まれていたので、それを活かす形にしています。

大型モンスターの中には、『FF』でおなじみのモルボルの姿も
◆開発時は「マナのしずく」だった! 岩崎氏が語るGC版制作秘話

――大変お待たせしました。岩崎氏にもお話をうかがえればと思います。GC版から関わられておられたとのことですが。

岩崎はい。GC版では、谷岡久美さんが作曲された曲のマニピュレート(≒楽曲のプログラミング作業)やリズムアレンジを担当していました。また、「ティダの村」の曲は僕が書いています。

――リマスター版ではミュージックディレクターに就かれておられますが、具体的にはどのようなことを担当されておられるのでしょうか。

岩崎谷岡さんが書かれた新曲を受け取って演奏家さんをコーディネートし、スタジオでディレクションしつつ収録してそれをまとめる……という感じですね。部分的にアレンジもさせていただいています。新曲の中には、既存の楽曲のリアレンジも含まれています。

――リアレンジはどのようなコンセプトでされたのでしょうか。

岩崎「GCの内臓音源では表現しきれなかった楽曲を、今再現したらこうなるよね」というところでしょうか。GC版の楽曲も基本的に実際に演奏して録音したものですが、さまざまな制約から、そのすべてをそのまま内臓音源に落とし込むことができませんでした。当時の録音音源も聞きつつ、その雰囲気を大切に手がけていますので、耳にして違和感はないのではと思います。

荒木でも、意図的に比較して聴くとやっぱり深みが全然違いますよね。

岩崎当時は、演奏してもらった音源を”フレーズごとにちぎって並べてメモリの容量に収まるように並べていく”ような作り方をするしかありませんでしたので、長尺の曲になるほど音質を下げるしかなかったんです。リマスター版はもっと贅沢に作らせていただけていますので、音が立体的になっていますね。

GC版の制作に携わり、『リマスター』でもミュージックディレクターを務める岩崎英則氏
――GC当時に発売されたサウンドトラックを買いましたが、あの音源はGC用に落とし込んだデータですよね? 楽曲の本当の姿に触れるのが楽しみです。そういえば、GC版のサントラCDはミルラのしずくをイメージしたジェルが入ったカバーがついていましたね。何年もたつと、蒸発でもしてしまったのかカラになってしまったのですが……(笑)。

荒木(笑)。つまり、10数年の時を経て再びミルラのしずくを取りにいくときがやってきたというわけですね!

岩崎うまいですね(笑)。そういえば、ミルラのしずくの話で思い出しましたが、実はGC版開発当時は「マナのしずく」と呼ばれていたんですよ。ミルラの木も「マナの木」で。

荒木僕もそんな話をうっすらと聞いたことがあります!

岩崎弊社の作品でマナといえば『聖剣伝説』ですよね。ですから当時、石井さん(現 株式会社グレッゾ代表の石井浩一氏)に「マナという名称を使わせてください」と許可を取りにいったらなんと「ダメです」と言われてしまいまして(笑)。それで、急遽「ミルラ」という名称になったんですよ。

荒木そんなことがあったんですか(笑)。「ミルラ」になにか語源はあるんですか?

岩崎確かあったはずです。普通に使われている言葉から拝借したような……ちょっとうろ覚えですけれど。

(編注:本インタビュー後、担当ライターがネットの海で調べてみました。聖書で「場を清めるお香の材料になる」と記述されているらしい「没薬(もつやく)」がミルラとも呼ばれるそうですので、それにちなんでいるのかもしれません)

荒木でも、そこでマナという名称を使わなかったからこそ『FFCC』が1つのIPとして成り立ったのではないかと思いますよ。

岩崎そうですね……『FF』の名を冠するとはいえ、新規IPでもありましたので(社内の)有力IPにあやかりたいという気持ちもあったかもしれません。今にして思えば、石井さんはそこまで見抜いていて許可を出してくれなかったのかもしれませんね。

――興味深いお話でした。せっかくですので、GC版開発当時のお話をもう少しうかがえればと思います。谷岡氏の楽曲への印象はどのようなものでしたか?

岩崎谷岡さんの書かれる曲は、どれも素朴で温かみがあって、本当にすばらしくて。この曲たちの魅力がより映えるようにするにはどうしたらよいかと、当時はそればかり考えていました。そんなときに演奏者として思い浮かんだのが、その少し前にインターネットで偶然知った古楽器の合奏団・ロバハウスさんだったんです。

谷岡さんにお声がけして一緒に演奏を聴きに行ったら谷岡さんも気に入ってくださって「谷岡さんの曲をロバハウスさんに演奏してもらえれば、本作の優しい世界観を十全に表現できるのではないか」と確信に近い思いを抱きました。ところが、オファーをしたら断られてしまいまして。

荒木あらら……。

<cms-pagelink data-text=”それでも諦めきれない岩崎氏のアツい口説き文句とは!?” data-page=”3” data-class=”center”></cms-pagelink>

岩崎そして、これはその後で知ったのですが、実は僕より前に植松さん(現 株式会社ドッグイヤー・レコーズ代表取締役の植松伸夫氏)が『FINAL FANTASY IX』の「いつか帰るところ」を演奏してもらうべくオファーして、やはり断られていたそうなんです。ロバハウスさんは小学校などを訪れて子供たちに演奏を披露することもあるそうで、当時は「子供たちにはゲームをするよりも、音楽に触れてその魅力を知ってほしい」というような思いがおありのようでした。

ですが、僕としてはどうしてもロバハウスさんに演奏していただきたかったので、「おっしゃりたいことは分かります。ですが、ゲームはもう子供と切り離せない存在にまでなってきています。であればこそ、ゲームを通して子供たちにその本物の演奏を聴かせてあげてほしいんです」とお願いしたんです。その結果、「わかりました、それではお引き受けします」と。

――それはすばらしい口説き文句ですね……。

岩崎後日、植松さんから「なぁ、どうやってロバハウスさんを口説いたの?」と聞かれました(笑)。『FINAL FANTASY』は2015年から、シリーズの楽曲を吹奏楽で演奏するコンサートツアー「BRA★BRA FINAL FANTASY」を展開しているのですが、そこでまた植松さんが「今度こそロバハウスさんに演奏してもらいたいのでぜひオファーして」とおっしゃいまして。そんな経緯があって、2017年の公演でついにロバハウスさんに編曲していただけました。『FINAL FANTASY IX』が2000年発売ですから、制作時から考えると約20年越しですね。

荒木へえええ! あまりに面白い話で、僕まで聞き入ってしまいました(笑)。


◆『FFCC』サウンドを成功に導いた3つの”武器”
岩崎なんだか脱線続きで申し訳ありませんが、もう一つ思い出したことがあるのですが……。

――当時のことをおうかがいできる機会はなかなかありませんので、ぜひお願いします。

岩崎GCはサウンド専用のチップが搭載されていませんでしたので、メモリのうちどれくらいをサウンドに割くかは、各メーカーがそれぞれの裁量で決める必要がありました。だから、僕は開発初期の段階で、紙山さん(GC版でメインプログラマーを務めた、スクウェア・エニックスの紙山満氏。直近では『ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて』でテクニカルディレクターを担当)に「サウンド用にメモリがこれだけほしいんだけど……」とお願いしにいきました。つまり、他の部署に先んじてメモリ領域を”奪い”にいったわけです(笑)。そうしたら、二つ返事で了承してもらえたんです。

荒木きっと、それでもどこからも文句は出なかったのではないでしょうか。紙山さんも天才肌の方だから、うまくやりくりしてくださったんでしょう。

岩崎そうかもしれません。ともあれ、こうして「谷岡さんの楽曲」、「ロバハウスさんの演奏」、「潤沢なメモリ領域」がそろいました。「この3つの武器があれば、GCで誰も実現できていないようなサウンドを実現できる!」と1人で興奮していたのを今もよく覚えています(笑)。『FFCC』の楽曲が成功を収められたのは――あえて成功と言い切ってしまいますが――ひとえに、才能を持つさまざまな人たちの力が重なったからこそでした。

――サントラもよく聴いていた当時の1プレイヤーとして、興味深いお話でした! そろそろお話をリマスター版に戻させていただきますが、ボーカル曲の「カゼノネ」と「星月夜」を新録されたとうかがいました。

岩崎Yaeさんの歌だけでなく、演奏も録り直しています。当時演奏してくださった方たちに再びお願いできまして、当時の音源を聴きながらあらためて編成から考え直しました。弦楽器はオリジナルよりゴージャスな編成になっていますよ。GC版ではハープは打ち込み音源でしたが、『リマスター』ではここも生の演奏になっています。また、間奏では当時の音源に今のロバハウスさんの演奏によるハモりが乗っていて、過去と現在の音が融合した感慨深いものになりました。

――それはエモいですね……。

岩崎さらに「カゼノネ」は今回フルサイズ版を新たに作っています。谷岡さんが「当時、本当はこの尺で作りたかった」と温めておられたものを形にしました。その結果、歌も2番を入れられることになりましたので、歌詞を片岡さん(本作のシナリオを手がけた片岡正博氏)に書いてもらいました。

荒木そんなフルサイズ版もゲームの中で聞けるように調整しています! どこで聞けるか、楽しみにお待ちください。

岩崎当時の思いに今の思いを乗せて、とてもいい楽曲ができたと思っていますので、本作の世界に浸る一助になれたら嬉しいです。

――ありがとうございました。最後に、2020年1月の発売に向けてのメッセージをお願いします。

荒木いよいよ「東京ゲームショウ 2019」が始まります! スクウェア・エニックスブースでは本作の試遊もできますので、お越しになれる方はぜひマルチプレイを体験していただければと思います。また、今年はステージイベントも行います。最新情報の発表に加え、谷岡さんの演奏によるYaeさんのライブも行う予定で、「カゼノネ」と「星月夜」を歌っていただきます! ステージの様子は配信でもご覧いただけますので、会場まで足を運べないという方もぜひご覧ください。

そして、「東京ゲームショウ 2019」後もさらなる新情報や新要素を発表させていただく予定です。2020年1月の発売に向けて順次公開していきますので、楽しみにお待ちください!

GC版の制作秘話も満載のインタビュー、いかがでしたでしょうか。最後に、GC版に引き続きリマスター版でもキャラクターデザインやパッケージビジュアルを手がけている板鼻利幸氏へのメールインタビューをお届けします。板鼻氏のご厚意で提供していただいた、貴重な原画の写真もあわせて紹介します!

<cms-pagelink data-text=”なんと割り箸袋に…!? 板鼻氏メールインタビュー!” data-page=”4” data-class=”center”></cms-pagelink>

◆鉛筆画で当時の雰囲気を再現!板鼻氏メールインタビュー
――『FFCCリマスター』の新規描き下ろしビジュアルで、注目してほしいポイントや気に入っているところをお聞かせください。

板鼻『リマスター』用のパッケージイメージの作画依頼を受けて、最初はどのようなテイストにしようかと迷ったのですが、リマスターということは、一度発売している作品ということでもあります。言い換えれば、オリジナルのゲームはもはや我ら開発の手を離れてユーザーのみなさんのものになっているとも言えます。ですので、イメージビジュアルも当時の雰囲気からガラッと変えたものにはしないようにしようと決めました。

でも、新しい要素も入れたいわけで……。そこで、当時の画風やレイアウトと同じようにして、構成要素だけ新しく描けないかとチャレンジしました。当時は下書きを鉛筆で描き、デジタルで彩色していたので、今回も久しぶりにライトテーブルを引っ張り出して、鉛筆画から始めました。ポスターなどをよく見てもらえると、消し残っている作画残りや手汚れなども見えるかと思います。

オリジナル版のビジュアルと構成するキャラなどを見比べてもらえると嬉しいです! 『FFCC』はノベライズもされていますので、そこに登場したキャラなんかもイメージして加えてみたりと、楽しんで描かせてもらいました。


――『FFCC』のビジュアルを手がけるうえで心がけていることはありますか?

板鼻「見たことのない世界だけど、どこか懐かしい」と思えるデザインを心がけています。旅がテーマのゲームですので、未知のビジュアルであることを追求するより、「いつかこんな風景を見たことがあるかもしれない」、「いつかこんなところに行くのではないか」と思わせる旅情感を大切にしています。

ゲーム中に存在する村や建造物なども、手作り感や素材感を大事にしています。ゲームの中で初めて見る村でも、僕らが生きる世界同様に、そこに生きている人々が作り上げたという印象を与えたいからです。


――リマスター版で追加キャラクターバリエーションを手がけた経緯をお聞かせください。

板鼻ちょうど1年前「東京ゲームショウ 2018」で本作の発表を行った際、閉館後に会場ブースで荒木と立ち話をしていたんです。「せっかくリマスターするのなら、旧作を遊んでくれた人にもちょっとしたおまけ要素としてキャラクターバリエーションの追加とかできないかな?」と提案したところ、荒木が喜んで話に乗ってくれたので、各種族、男女ごとに1体ずつデザインさせていただきました。

――追加のバリエーションについて、デザインコンセプトやモチーフなどがありましたらお聞かせください。

板鼻『FFCC』のキャラクターたちはあくまで村人の範疇にありますので、既存のキャラクターバリエーションからあまり浮かないように注意してデザインしました。が、一部目立ち気味なのもあるかもしれません。また、何体かこれまでの『FFCC』シリーズに登場したキャラクターをモチーフにしたものもあるので、楽しみにしてください!


――オリジナルとなるGC版でキャラクターデザインをされたときに、印象に残っていることなどがあればお聞かせください。

板鼻『FF』シリーズのナンバリングタイトルのような特定の主人公は存在せず、瘴気に覆われた世界の村に住む村人たちが主人公ということでしたので、”愛する家族や村人の為に力を合わせて冒険に出る村の青年団”というようなイメージで、個性の強さよりも、生活感や生きる強さを感じさせるデザインを心がけました。

各種族のデザインは、マルチプレイで入り乱れて戦う際に見分けやすいように、ノッポのユーク族、体は小さめで動きは大きいリルティ族、人間系でも上体にボリュームがあるセルキー、下部にボリュームがある分銅型のクラヴァット……と、見た目やシルエットにそれぞれ異なる特徴を持つデザインを心がけました。


(GC版の)プロデューサーの河津(河津秋敏氏)は、割と絵に関しては放任主義なのですが、当時4種族のデザイン案のひとつとして猫耳としっぽを持つ種族を描いたら「動物人間は嫌いだ、変更!」とお叱りを受けたので、「それでは……」と趣向を変えて”野菜人間”を描いたらすんなり通った……というのが、現在のリルティです。


――本作は楽曲も高く評価されています。GC版、もしくは今回のリマスター版のビジュアルを手がける際、谷岡久美さんの楽曲にインスパイアされるようなことはありましたか?

板鼻ゲーム開発は作曲と同時進行で、かつ、世界観やキャラクターをデザインする開発初期にはまだ曲もほぼありませんでしたので、GC版制作当時は、開発が進むにつれてイベントシーンなどに曲が乗ってくるのを見て「ああ、こういう世界なんだ」と、モノクロだったフィルムに色がつくような感覚を味わいました。いまや『FFCC』(の楽曲)といえば谷岡久美さんの曲ですよね。今回のリマスター版のビジュアルも、GC版の曲を聴きながら描かせていただきました。

――GC版制作時を振り返って、印象に残っている出来事や思い出をお聞かせください。

板鼻プレイヤーのお供をしてくれるモーグリのモグは、開発後期に「ソロプレイで遊びたいときのために、クリスタルケージを持ってくれるお手伝いキャラがほしいよね」と、急遽作ることが決まったキャラでした。当時、少しの時間も惜しくてせわしなくお昼の弁当を食べていたときに、メインプログラマーの紙山から「こういうわけだから、急ぎでデザインを描いてほしい」と言われたので、ちょうど目の前にあった割り箸袋に鉛筆で描いてデザイン案を渡しました。この時のことは、社内でいまだにネタにされますね(笑)。


※本作は2003年に発売した『ファイナルファンタジー・クリスタルクロニクル』に、新たな要素を追加および一部改変したリマスター作品です。
※インターネットに接続することで利用できるサービスは、ゲームの発売から期間が経過すると終了する場合がございます。
※オンラインマルチプレイの利用には、インターネットへの接続および、Nintendo Switch版ではニンテンドーアカウントの作成(無料)と「Nintendo Switch Online」への加入(有料)、PlayStation 4版ではPlayStation Networkのご利用(無料)とPlayStation Plusへの加入(有料)が必要です。
※オンラインマルチプレイのマッチングは、同じリージョン(地域)のソフトを使用しているプレイヤー間で行われます。
※通信状況によってオンラインマルチプレイにタイムラグが発生する場合がございます。
※画面は開発中のものです。
※家庭用ゲーム機(Nintendo Switch/PlayStation 4)とスマートフォン(iOS/Android)の画面構成・デザイン、解像度には差異があります。

(C)2003, 2019 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.
CHARACTER DESIGN: Toshiyuki Itahana

最終更新:9/12(木) 12:00
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