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<MGC 陸上記者のレース展望>実績通りに運ばないのがマラソン 過去のレースから選手の特長探る

9/12(木) 18:14配信

毎日新聞

 ◇東京本社運動部編集委員・石井朗生

 MGCの男子を予想すれば、現日本記録保持者の大迫傑(28)=ナイキ、前保持者の設楽悠太(27)=Honda、昨年アジア大会覇者の井上大仁(26)=MHPS、昨年の福岡国際マラソン優勝の服部勇馬(25)=トヨタ自動車=と、実績で上回る4人の名前が挙がるのは当然だろう。

 だが、実績通りに事が運ばないのがマラソンの難しさであり、面白さでもある。MGCに出場する各選手が2015年9月以降の最近4年間に走ったマラソンの内容から、「4強」以外にも五輪代表争いに絡む力がありそうな存在に目を向けてみた。

 MGCは中盤まで比較的落ち着いたペースで進み、終盤で一気に勝負が動くと予想される。同様の展開を経験しているのが佐藤悠基(32)=日清食品=だ。昨年のベルリン・マラソンで第2集団のペースメーカーが不安定で中盤まで遅いペースになり、30キロから自ら一気に加速。35キロまでを14分台で走り、最後もほとんど失速せず、2時間9分18秒で6位に入った。

 園田隼(30)=黒崎播磨=は18年の別府大分毎日マラソン(2位、2時間9分34秒)、藤本拓(30)=トヨタ自動車=も大迫が日本記録を樹立した昨年のシカゴ・マラソン(8位、2時間7分57秒)で、後半に5キロ14分台への加速に食らいつき、その後もペースダウンしながら粘った経験がある。

 ラスト勝負になった時の粘りでは、木滑(きなめ)良(28)=MHPS=に持ち味がある。18年の東京マラソンでは40キロからフィニッシュまでの2・195キロを、1キロ3分ペースにあたる6分35秒で走破し、2時間8分8秒の自己記録で7位に入った。夏場のレースである16年の北海道マラソン(優勝、2時間13分16秒)でも6分41秒でまとめている。谷川智浩(30)=コニカミノルタ=は16年のシドニー・マラソンで同区間を6分34秒で走り、アフリカ勢との混戦を制して2時間12分13秒で優勝した。

 自ら外国勢を相手に勝負を仕掛けた経験を持つのが、山本憲二(29)=マツダ。今年のびわ湖毎日で30キロ以降、先頭集団を引っ張った。小雨で多湿の条件下で自らレースを動かした積極性と、最終的に7位になったが2時間8分42秒でまとめた力は、関係者の間でも評価が高い。

 安定感では中本健太郎(36)=安川電機=が際立つ。12年3月のびわ湖毎日から、五輪や2度の世界選手権も含めて完走した10大会ですべて2時間13分以内に収めてきた。橋本崚(25)=GMO=も17年ゴールドコースト・マラソン以降の3大会を2時間12分以内で走っている。園田も日本国内のマラソンに限れば、16年福岡国際からの6大会を2時間13分以内にまとめている。

 ところで、最近の五輪2大会の男子マラソン代表(各3人)を見ると、12年ロンドン五輪では山本亮(佐川急便=当時)、16年リオデジャネイロ五輪では佐々木悟(旭化成)と北島寿典(安川電機)が、代表選考会となった国内のマラソンに招待選手ではなく一般参加選手として出場して快走し、五輪への切符をつかんだ。選手層が厚い男子では、直近の実績はあまり当てにならないとも言える。

 女子は出場人数が少ないこともあり、男子より早いレース中盤で人数が絞られていく可能性が高いと思われる。そういう意味で、ともにMGCシリーズの大会で中盤から独走して優勝した、松田瑞生(24)=ダイハツ=と鈴木亜由子(27)=日本郵政グループ=に注目が集まるのだろう。

 後半にペースアップするレースは、安藤友香(25)=ワコール=が17年名古屋ウィメンズマラソン(2位、2時間21分36秒)で、上原美幸(23)=第一生命グループ=も初マラソンだった18年ベルリン・マラソン(9位、2時間25分46秒)で経験している。ともに40キロ以降でもペースを上げる力走だった。

 ラスト勝負にもつれれば岩出玲亜(24)=アンダーアーマー=にも強みがある。今年の名古屋で35キロから40キロまでで17分40秒かかりながら、最後の2・195キロを、5キロあたり17分を切るペースの7分24秒まで上げて、2時間23分52秒で日本人最上位の5位に入った。岩出は他にも40キロ以降で順位を上げるレースが多い。

 野上恵子(33)=十八銀行=は自己記録が2時間26分33秒と目立たないが、17年アジア選手権、18年アジア大会でともに2位に入っている。ペースメーカーがおらずタイトルが懸かったマラソンの経験は貴重だ。さらに最近はトラック種目でも記録を伸ばしている。

 5度目の五輪出場が懸かる福士加代子(37)=ワコール=は、16年リオデジャネイロ五輪の後にマラソンを完走したのは今年の名古屋(8位、2時間24分9秒)だけ。この間、トラックでも目立った結果は残しておらず、実力の「現在地」が測りにくい。実績豊富な福士がどんな動きを見せるかで、周囲の選手の対応も変わってくると思われる。

 東京五輪代表の座をつかめるのは、来年3月に決定が持ち越される最後の枠を含めて、男女それぞれ3人だけ。だが、日本のトップ選手が勢ぞろいして力をぶつけ合うMGCの経験は、代表になれなくても必ず今後に生きるはず。「東京五輪後」のためにも、出場する全ての選手には、努力を重ねて培ってきた自分の強みや持ち味を存分に発揮してもらい、充実したレースにしてほしい。

 ◇石井朗生

 毎日新聞東京本社運動部編集委員。1967年生まれ、東京都出身。92年入社。陸上、アマ野球などを担当し、夏冬計6大会の五輪を取材。デスク業務を経て2018年秋に現場取材に復帰した。大学で陸上の十種競技に挑み、今も大会運営や審判に携わる。最近はアキレス腱(けん)断裂や腰椎(ようつい)すべり症など、ケガの経験が歴戦のトップ選手並みに。

最終更新:9/13(金) 18:24
毎日新聞

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