ここから本文です

インディーの名勝負製造機 元修斗王者・勝村周一朗の“プロレス技術革新”

9/13(金) 13:10配信

AbemaTIMES

 大家健率いるDDT系列の“どインディー”団体、ガンバレ☆プロレス(ガンプロ)が、昨年から大きく様変わりしている。

 今成夢人がエースに成長し、翔太、岩崎孝樹、石井慧介といった実力派が次々と入団。かつては“うだつの上がらないレスラーたちの人間模様”が魅力だったガンプロだが、石井や岩崎には「強さを見せたい」、「よそにナメられない団体に」という思いも強い。

 さらに今年に入ると、レギュラー参戦選手の勝村周一朗も正式に入団を果たした。勝村は総合格闘技出身で、修斗の世界王座を獲得。大晦日のビッグイベントに参戦したこともある。横浜にジムを構え指導者としても活躍しており、所英男のセコンドを務めてもいる。

 もともとプロレスファンの勝村は、6年前に“U系”ルールのイベント『ハードヒット』に参戦するとさまざまな団体に進出した。特にガンプロの熱気とハチャメチャさは性に合ったようだ。フリーのベテラン、藤田ミノルとの出会いもあって勝村はプロレスの自由さと幅広さ、奥深さを体得していくことになった。

 勝村と藤田は、今年8月10日の板橋大会でシングルマッチを行なっている。藤田は2年前にガンプロから離れており、この対戦はいわば“ケジメ”だった。

 藤田がガンプロを去ったきっかけは、AbemaTVで放送された『新しい地図』スペシャル番組でのサプライズ企画だった。メイン終了後に草なぎ剛が男色ディーノと組んで乱入、緊急決定した試合で大家&今成に勝ったのである。サイバーエージェントがAbemaに出資しており、またガンプロが属するDDTもサイバーエージェントグループだったことから実現した試合だった。

 この企画自体は盛り上がったのだが、藤田は芸能人と“絡んで”喜んでいる大家たちの姿が気になったようだ。しかもその後のガンプロは、話題性を勢いにつなげられないまま、いつも通りの闘いを続けていた。その光景を見て、藤田はガンプロを去ったのだった。いつものバイタリティーを、なぜここで発揮できないのか。そういう思いだったはずだ。結婚し、地方で活動していた藤田が関東に拠点を戻すきっかけになったのがガンプロだったから思い入れも強い。“らしくないガンプロ”にはいられなかった。

「首根っこ掴んで水に沈めてるのに、いつの間にか浮かび上がってくるのがガンプロ。だけどあの時はこっちが何もしてないのに沈んでいってた」(藤田)

 藤田とは逆に、勝村はガンプロに残った。大家たちにケンカを売り“反体制”に回って活性化を狙いもした。そうして彼は“インディーマットに参戦する総合格闘家”から“ガンプロの主要登場人物”になり、石井を下してインディペンデントワールド世界Jr.ヘビー級のベルトを巻いた。多様な挑戦者との防衛戦は外れなし。“プロレスラー・勝村周一朗”が確立されたところで、藤田が対戦の名乗りをあげた。

 ノンタイトルで行なわれた試合は30分フルタイムドロー。インサイドワーク、真っ向からの打撃、シビアなグラウンドと全局面で渡り合う中、勝村がガンプロ所属選手たちの得意技を次々と繰り出す場面もあった。それが、勝村がガンプロで磨いてきた“プロレス頭”であり、ガンプロを去った藤田に叩きつける“回答”だった。

 試合後の藤田はガンプロ卒業を宣言。ある種の“オチ”的に尾崎豊の『卒業』を流す。泣き笑いの大団円だ。そこで急にマイクを握り『卒業』を絶唱したのが今成だった。藤田も勝村も観客も度肝を抜かれた。これはこれで、草なぎに3カウントを奪われた今成の“答え”だった。もうわだかまりなど何もない。プロレスでしか感じさせることのできないエモーションがそこにあった。卒業していく藤田を、勝村は「ガンプロはいつでも卒業生が戻ってくるのを待ってます」という言葉で送り出した。

 さらにその翌日、同じ板橋グリーンホールで、勝村はインディーJr.王座の防衛戦を行なった。挑戦者は岡田剛史。やはり総合をベースとする選手だ。勝村はここで、藤田戦とは趣を変えた好勝負を見せた。いわば“格闘技のテクニックを全面展開するプロレス”だ(これは“格闘技風プロレス”とはまったく違うもの)。オモプラータをオモプラータで切り返し、腹固めで腕を制してスリーパーを狙うカドワキスペシャルも。フィニッシュは岡田の必殺技アームロックへのカウンターで「クロサワスペシャル」。下から足を絡めて相手の足を極める新技だ。「(観客に)何やってたか分からないでしょ。たぶんアイツ(岡田)も分かってないですよ」と勝村。間違いなく、勝村と岡田にしかできないプロレスだった。

 修斗の世界王座を獲ったニンジャチョークをプロレスでも使う勝村は、現在進行形のグラウンドテクニックを持ち込むことで“プロレスの寝技”をアップデートしようとしている。かつてUWFが本格的なキックボクシングの蹴りやサンボの関節技を持ち込んだように、勝村はMMA、グラップリング、柔術で時計の針を進めようとしているのだ。どインディーだから観客は100人そこそこの時もある。そういう会場で楽しそうにレフェリーのブラインドを突いたり丸め込み合戦をしたりしつつ、プロレスの技術革新をしているのが勝村周一朗というレスラーなのだ。

 9月14日の王子大会では曲者・三富政行を相手に5度目の防衛戦に臨む。「また裏技を出すかも」と勝村。ここで防衛すれば、11.3両国国技館、DDT全ブランドが集合する大会での防衛戦が見えてくる。「両国で闘いたい相手もいるんで負けられない」というチャンピオンの輝きっぷりは、ガンプロファン以外にも伝わるだろう。
文・橋本宗洋

最終更新:9/13(金) 13:10
AbemaTIMES

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事