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博士でも月収10万円のワケ

9/14(土) 10:01配信

九州朝日放送

1年前、移転を間近に控えた九州大学箱崎キャンパスの研究室から突如火が上がった。その部屋を長期間使用していた男性が油をまいて火をつけ、自殺したと見られている。現場から遺体で発見された男性の周辺を取材すると、日本の研究者が置かれている厳しい現実が見えてきた。

研究室で生涯を終えた男性

博士課程に在籍していた男性(当時46歳)は8年前に大学の籍を失っていたが、研究室に居座り続けていた。研究職を希望していたが叶わず、非常勤講師の掛け持ちや引っ越しなどのアルバイトで生計をたてていたという。

関係者によると男性は「そこまでやるのかというくらいやる非常に真面目」な性格で、「中途半端な論文を提出できず結果的に大学の籍を失ってしまったのではないか」という。非常勤講師の仕事にもやりがいを感じていたというが、その仕事も雇い止めになる。

そんな中、キャンパスの移転に伴い、居座り続けていた研究室の退去を求められたのだ。その期限の日に“事件”は起きた。男性は精神的にも体力的にも追いつめられていたという。

前出の関係者はこうした居座りについて「以前は珍しいことではなかった」と話す。「不法占拠」という認識ではなく、教授や准教授などのポストが空くまでの間を待つ場所で、非公式だが「教員養成のしくみ」という認識だったという。しかし、コンプライアンス上の問題や大学移転も重なったことで「学籍がない者が居座るのはおかしい」ということになったのではないかと推察した。「長い間続いていた仕組みがいつの間にか変わったことに納得いかなかったのではないか」 と男性の気持ちを推し量った。

月収10万円あまりで暮らす「ポスドク」

自殺したとみられる男性の境遇について「他人事ではない」と話す男性がいる。足の踏み場が無いほどの書籍に埋め尽くされたワンルームのアパートで暮らす九州大学大学院の専門研究員の男性(40歳)だ。哲学を専攻しているが、正規の研究職につける見込みはない。

このような研究者は「ポストドクター(以下「ポスドク)」と呼ばれる。博士課程を修了しても大学教員などの職に付けない任期付きの研究者の総称だ。

男性は研究者としての収入はないため、私立大学や専門学校の非常勤講師を掛け持ちして暮らしている。月収は平均すると10万円あまり。大学の学食や安い食堂に通い、生活費を抑えている。生活に余裕はないが、「今更この年齢でいい就職先が見つかるはずも無い」という。

実績を残すために論文を書かなければならないが、生活費を稼ぐために非常勤講師としての授業の準備もしなければならない。悪循環が続き、将来への不安が募っている。2015年の時点で、こうした「ポスドク」の数は全国で約1万6000人に上っている。

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最終更新:9/14(土) 10:01
九州朝日放送

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