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宮古島市が「名誉を傷つけられた」とする理由は? 当の住民はどう思ったか

9/14(土) 14:55配信

沖縄タイムス

 宮古島市の不法投棄ごみ撤去事業を巡り、訴訟を起こした住民に名誉を傷つけられたとして、市が6人に計1100万円の損害賠償を求める訴訟を起こすための議案を市議会に提案している。長濱政治副市長と住民の岸本邦弘さんに、市の提訴方針の理由や、同方針への受け止めなどについて話を聞いた。

【写真】市の提訴方針は「市長批判への報復だ」と話す住民

 ◆報告会での批判 的外れ 長濱政治副市長

 -誰が名誉毀損(きそん)の裁判を起こそうと提案したのか。

 「(宮古島市の不法投棄ごみ撤去事業を巡る住民訴訟で)住民側は敗訴した。7月にあった住民側の報告会での弁護士の発言はちょっと違うのではないかと、市長と私らで話した。市に対する名誉毀損に当たるのではないかと顧問弁護士に相談し、議案を提案した」

 -何が市の名誉毀損に当たるのか。

 「宮古島の地元紙に掲載された報告会の記事で『裁判を通して不正な行政手法は許さないという基盤が確立された』とあるが、住民訴訟の判決では不正ではなくずさんだと言っており、違法とは言っていない」

 「また、『市は技術的に可能な範囲のごみを撤去すればいいという契約だったというが、これは裁判になってからつくり上げたもの』と弁護士は発言しているが、市は最初からそういう主張をしている。批判は的外れで、度を過ぎている」

 -市が名誉毀損の根拠としている発言は弁護士。なぜ住民を訴えるのか。

 「住民側の代理人だから。住民と一心同体と見なさないといけない。報告会を3回やっているが、裁判で争った中身というより、不正とか裁判所が行政に甘いとか、訳の分からないことを言っている。報告会なんだから裁判の話をすればいい」

 -自治体が名誉毀損で訴えて敗訴した判例では、行政は批判を甘受する責任を負うと指摘している。

 「批判は甘受する。ただ、今回は度を過ぎていないかということで訴えようとしている。最後の7月の報告会の発言がなければ訴えなかったかもしれない」

 -行政が住民を訴えるのは住民の活動を萎縮させ、言論の自由を侵害するとの批判が相次いでいる。

 「一般論では指摘は当たっているが、彼らの行動は違うと言っている」

 -なぜ、裁判なのか。言論には言論で対抗すべきではないか。

 「争って、はっきりさせたかった。(言論で対抗するとは)考えなかった」

(聞き手=社会部・伊集竜太郎)

 ◆市民の監視 なぜ抑える 岸本邦弘さん

 -市が市民を訴える方針で議案を上程した。

 「市の代表者が市民を訴えるとは考えてもみなかった。判決に従って何も言うなということか。税金を使って市民を訴えることはあり得ない。住民側代理人を務めた弁護士の報告会での発言を提訴の理由にしているが、全く当たらない。報復であり、権力の乱用だ」

 -市が提訴する方針を知ってどう思ったか。

 「実はいい機会だと捉えた。ごみ撤去事業がどういうものだったかを市民があらためて知るきっかけになると思ったから。ただ、市は名誉毀(き)損(そん)で市民を訴えると言っているが、市民を訴えることが逆に市の名誉を傷つけている」

 「下地敏彦市長は『自分に盾突くものは許さないぞ』と感情的になっているのではないか。市長にブレーキをかけられる人が誰もいない現状が恐ろしい」

 -そもそもなぜ住民訴訟に至ったか。

 「例えば、自宅の庭で起きたと考えてほしい。ごみを拾ってほしいと2千万円払った。だが、後にごみが大量に残されていたと分かった。これは納得がいかないと。そういう事業に対して、誰も行動を起こさなかったら改善しない。『市民の監視の目があるぞ』と市に声を上げたということ」

 -宮古島市と議会の現状について。

 「議会が行政をチェックできていない。ごみ問題は当時、市議会の調査委員会が調べた。必要な資料が作られていなかったことなども判明したが、強く指摘されなかった。2千万円もの事業費が支出されたのに、これでは市民は納得できない。宮古島をよくするためには市民の監視が必要」

 -一部の市民からは、やりすぎではとの声もある。

 「私たち原告は自腹を切り、時間もかけて裁判を闘った。それは私利私欲のためではなく、市をよくしたいとの思いがあったから。この経緯に詳しい市民からは『ずさんな行政を許してはいけない』との声もある。事業の実態を知ると分かってもらえると思う」

(聞き手=宮古支局・知念豊)

最終更新:9/14(土) 15:10
沖縄タイムス

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