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部屋で怪奇現象、壁はスイッチだらけ…ホテル激戦区の京都に出現した「不思議な宿」が話題 

9/14(土) 15:00配信

まいどなニュース

 国内有数の観光地・京都市では近年、訪日客ブームでホテルやゲストハウスなどの宿泊施設が急増している。そんな「お宿激戦区」に今夏、一風変わった宿泊施設が開業した。その名も「不思議な宿」。客室のネーミングも「怖い部屋」「多い部屋」「回す部屋」と謎だらけだ。ツイッターで紹介されたとたん、「そそられる」「行きてー」と話題を集めている。百聞はなんとやら。実際に訪れた。

【写真】怪奇現象が調節できる「怖い部屋」のつまみ

 「不思議な宿」は、JR京都駅から市営地下鉄で一駅の「五条駅」から徒歩5分、昔ながらの町家が立ち並ぶ一角にある。見た目はちょっと大きな一軒家だ。玄関のドアを開けると、宿をプロデュースした松山雅行さん(28)が迎え入れてくれた。

 1階はカウンターとカフェの開放的な空間にしつらえられている。「そこの柱に『お柱さん』と話し掛けてください」と松山さん。不審に思いながら言われた通りにすると、「カン」とノックする音が内側から聞こえてきた。何これ? 松山さんが「私の似顔絵を描いて」と声を掛けると、「カン、カン」とノックが2回響き、上からひらひらと紙が落ちてきた。猫の絵が描いてある。「面白いでしょう」と松山さんがいたずらっぽく笑みを浮かべた。

 「そろそろですね」。腕時計に目をやった松山さんがつぶやいた。洋楽のBGMが消え、メルヘンチックな音楽が流れ始めた。なんだ、何が起きるんだ。天井からつり下がった和風の照明がついたり、消えたりしながらくるくる回る。「トイレの方を見てください」と松山さん。目を向けると、男女のサインマークが左右に踊っている。

 のっけからシュールな展開。「では客室に案内します」と促され、2階に上がった。

 最初に入ったのは「回す部屋」。壁に昔懐かしい黒電話のダイヤルが取り付けられている。回してみると、「きょうは何日ですか」と女性の声が聞こえてきた。取材日は12日。1、2とダイヤルを回すと「ちゃんと分かっていますね。素晴らしい」。続けて「私は女だと思いますか」と問い掛けが。「ダイヤルを1に回すと女、2に回すと男です」と松山さん。あえて2を選んだ。すると「どっちかというと女じゃないですか。でも性別はないんです。プログラムですから」と冷静な口ぶりで回答が返ってきた。なんだか漫才みたいなやりとりだ。

 入ってみたかったのが「怖い部屋」。怪奇現象が「調節」できるという。壁のつまみを「1」に合わせると、ノックとピアノの音が室内に響いた。これぐらいでは驚かない。お次は「2」。「バチバチ」という電気がショートするような音が流れ、照明がせわしなく明滅する。「3」にすると部屋が怪しい赤色に染まり、女の子の「通りゃんせ」の歌声が。エアコンが効いているせいもあるだろうが、なんだかぞくぞくしてきた。「4」にすると、もっと怖い演出があるが、書くのはこれぐらいでやめておこう。

 そして「多い部屋」。壁一面にスイッチが取り付けられている。スイッチ好きの子どもにはたまらない客室だ。音符が書かれているスイッチを押すと効果音が鳴る仕掛けがあり、複数のスイッチを連打すると「さくらさくら」を演奏できたり、ロックやジャズが流れたりする。

 客室は全部で11室。ほかにも、「カタン」や「スコットランドヤード」といった世界中のボードゲームを集めた「ボドゲの部屋」、歴史上の人物が降霊しているという「憑依(ひょうい)の部屋」、障子に裏から投影される映像が変わる「景色の部屋」など、趣向を凝らした客室がある。中には「贈る部屋」というロマンチックなネーミングも。恋人と泊まった時にサプライズが演出できるらしい。詳しく言うとやぼなので伏せておこう。

 どうしてこんな遊び心満載の宿にしたのか。背景には京都市の宿泊施設をめぐる厳しい現状があるという。訪日客の増加を商機とみたホテルやゲストハウスの開設が市内で相次いでおり、東京五輪が開かれる2020年には客室数が5年前の2倍近くになる見通しだ。競争激化で廃業するゲストハウスすら現れ始めた。

 松山さんは「京都は宿泊施設が増え、価格競争が激しくなっています。値段や設備とは違った面で魅力を打ち出したかったんです」と説明する。

 コンセプトに掲げたのは「エンタメとテクノロジーと京都の融合」。音声認識やセンサー、コンピュータープログラミングなどの技術を組み合わせ、単に泊まるだけはでない「遊べる宿」を目指した。その狙いは当たり、7月のオープン以来、カップルや女性グループを中心に宿泊は好調に推移しているという。ツイッターで話題になったことで9月は予約が殺到しているのだとか。

 「いずれ宿そのものが京都の観光スポットとして定着すれば」と松山さん。新たな京都名物になることを夢見ている。

(まいどなニュース/京都新聞・高野 英明)

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最終更新:9/14(土) 18:36
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