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葛尾の能と狂言(9月15日)

9/15(日) 8:53配信

福島民報

 葛尾村の葛尾大尽[だいじん]屋敷跡公園は、震災前の姿を取り戻しつつある。住民が協力して二ヘクタール余りの敷地の雑草を刈り取り、石垣の汚れを落とした。避難先の三春町から村に帰った男性は、よみがえった景色に時の流れを感じた。

 豪商の松本一族は葛尾大尽と呼ばれた。江戸時代に鉄や酒を造り、木炭や生糸を商い、巨万の富を築いた。大邸宅に設けられた舞台に三春藩主を招き、幕末ごろまで能や狂言を楽しんだ。明治、昭和と二度の火災で建物は失われる。村は十二年前、人々が交流できる公園に整えた。

 憩いの場の復活に併せて、二十八日夕、百数十年ぶりに幽玄の世界が現れる。能楽師が出演を引き受け、村と協定を結ぶ日大工学部の建築学科教授が舞台づくりを請け負った。被災地を支援する団体からの助成も決まった。公演の担当者は多くの人の巡り合わせと、度重なる幸運に感謝する。

 三百の観客席は予約でほぼ埋まり、その六割は村外から申し込まれた。避難指示の解除から三年三カ月余りが過ぎ、村民のうち、二割にあたる三百二十人ほどが再び村で暮らし始めた。薪[たきぎ]の炎は夕闇の会場を浮かび上がらせ、ともしびは古里への愛着を呼び覚ます。

最終更新:9/15(日) 8:53
福島民報

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