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園舎に宿す鍛冶の精神 「飯舘村再生の力に」

9/15(日) 9:15配信

福島民報

 東日本大震災と東京電力福島第一原発事故により閉園した飯舘村の旧草野幼稚園が、鍛冶(かじ)工房に生まれ変わった。刃物の製造・販売、修理を手掛ける福島市の「刃物の館やすらぎ工房」は十四日、空き園舎を活用し、手作りの包丁やナイフを製造する同社飯舘工場を開所した。原発事故後、村への企業進出は初。同社代表の二瓶信男さん(72)と長男の貴大さん(40)は「ものづくりの技術と精神を継承していく場としたい」と言葉に力を込める。

 同社は二〇〇一(平成十三)年創業。二〇一一年、貴大さんが後を継ぐため勤めていた会社を辞めて静岡県から戻ったのをきっかけに、全ての工程を手作りするオリジナルの刃物ブランド「やすらぎ」の販売を開始した。切れ味の鋭い包丁やナイフは評判となり、国内をはじめ海外にも販路を広げている。

 草野幼稚園は原発事故後、福島市の仮設園舎に移った。昨年春、村内に認定こども園が開園し、閉園となった。広い工場を探していた信男さんは、村が園舎の再利用を検討しているのを知り、工場を構えることを決めた。

 信男さんと貴大さんが初めて園舎を訪れた時、かつて子どもの歓声が響いていた園庭には雑草が生い茂っていた。地道に園舎の改築・修繕を進め、完成した工場は延べ床面積約九百平方メートル。半分程度を加工場とし、その他の部屋は商品の展示や、地元の小中学生らが刃物鍛冶が体験できるスペースとした。

 貴大さんは三年前から福島市立子山に鍛刀場を設ける刀匠・藤安将平さんに弟子入りしている。刀鍛冶の資格を取得後、日本刀づくりも公開する予定。日本文化を発信する場として外国人観光客の増加などにも貢献したい考えだ。

 加工場に設置した鍛冶用機械のほとんどは廃業した同業者が手放した物だという。貴大さんは「国内では手作業の鍛冶仕事が減ってきている。古くから受け継がれてきた技術を伝えていくためにも飯舘で頑張りたい」と決意をにじませる。信男さんも「村の再生の力になれるよう、息子と一緒に頑張っていきたい」と力強く語った。

 工場の開所に伴い、十四日、現地で火入れ式が行われた。菅野典雄村長をはじめ、多くの関係者が出席した。貴大さんが炉に火入れし、鉄と鋼を接着させる「鍛接」、刃物の形に成型する「鍛造」の作業を披露した。菅野村長は「震災後、村第一号の企業進出を応援する。製品をふるさと納税の返礼品に使わせてほしい」と話した。

最終更新:9/15(日) 9:15
福島民報

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