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『レモ/第1の挑戦』第2の“007”になれなかった隠れた傑作

9/15(日) 7:07配信

CINEMORE

“007”と並ぶフランチャイズを目指した隠れた傑作

 5年ぶりに放たれる『007』シリーズ最新作のタイトルが『No Time To Die』に正式決定。監督を『TRUE DETECTIVE/二人の刑事』(14)で注目された日系四世のアメリカ人監督キャリー・フクナガが務め、悪役として『ボヘミアン・ラプソディ』(18)でブレイクしたラミ・マレックが出演することもあって、来年4月の公開に向けてすでに自分のなかではアガるスタンバイができている。

 その一方で、こうした“007”絡みのニュースを聞くとフッと思い出され、胸がキュンとなる映画がある。その名は『レモ/第1の挑戦』(85)。“007”と並ぶフランチャイズにするという大きな夢を抱いて制作されるも、それを叶えることが出来なかった作品だが、けっして失敗作ではない。むしろ、個人的には大傑作である。

 大統領直属の秘密組織によって死を偽装されたうえ、顔まで整形された元ニューヨーク市警の警官。彼は法で裁けぬ悪人を抹殺する暗殺者レモ・ウィリアムズとして新たな人生を送ることに。やがて韓国発祥の武術シナンジュの達人である老人チュンのもとで修行した彼は、軍事衛星開発の独占を企む男グローヴの暗殺に挑む……というもの。

原作はシリーズ120巻超を誇るベストセラー

 原作はリチャード・サピア、ウォーレン・マーフィーによる小説シリーズ「デストロイヤー」(日本では東京創元社から「殺人機械」シリーズとして刊行)。その版元である出版社に勤める人物が、友人であったプロデューサーのラリー・スピーゲルに「いい映画になるから」と小説を勧められたのがすべてのはじまりだった。

 製作総指揮を勤めることになる大物テレビプロデューサーのディック・クラーク、オライオン・ピクチャーズの代表マイク・メダヴォイに、スピーゲルが話を持ち掛けてみると反応は上々で制作へと進んでいく。マイク・メダヴォイは、60~90年代にかけて“007”シリーズを抱えていたユナイテッド・アーティスツで製作責任者を務めていた人物。そうした経歴もあってか、“仕置人”のような暗殺者が主人公である「デストロイヤー」を“007”のような世界観を誇る映画シリーズにできると直感する。

 小説自体もすでにベストセラーを記録しており、シリーズ巻数も当時で120冊を超え、知名度も人気も高くて原作にも困らない、まさに“007”の向こうを張れる長寿フランチャイズにするにはうってつけの企画だった。

 一方の“007”では、ある問題が起きていた。それはロジャー・ムーアのジェームズ・ボンド役からの降板。『007/死ぬのは奴らだ』(73)で3代目ジェームズ・ボンドに抜擢された時に46歳だったということもあり、高齢でボンドを演じることに迷いが生じていたという彼は、『007/ムーンレイカー』(79)から降板の時期を伺っている状態だったのだ。

 こちらの完全な憶測だが、そこに“007”に代わる“007”的活劇をぶつけるチャンスを見出したような気がしないでもない。いずれにせよ、制作陣は主人公レモが元警官であることから『レモ/第1の挑戦』を“労働者階級の007”と銘打って制作に奮起する。

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最終更新:9/15(日) 7:07
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