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透析患者の旅行を支援 当事者の池間さん 国内外の施設情報を発信 途上国患者の費用も援助 

9/15(日) 8:10配信

沖縄タイムス

 世界中の人工透析患者が、旅を楽しめる社会に-。宮古島市に住む会社経営、池間真吾さん(48)=東京都出身=はそんな夢を抱き、国内外を飛び回って透析施設や患者事情を収集・発信している。自身も腎不全で10年余の透析歴があり、当事者の切実なニーズや課題をビジネスへ展開。6月には「国際NGO 国境なき腎臓病患者支援会」と名付けた一般社団法人を立ち上げ、発展途上国の患者支援に乗り出した。(学芸部・新垣綾子)

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 広島県内の民間放送局記者だった30歳のころ、健診で尿たんぱくを指摘された。「腎臓病の知識が乏しく、放置してしまった」と、再検査を受けずに症状が悪化。脱サラ後に渡った沖縄で、ついに透析を始めることになった。38歳の時だ。那覇市で営んでいた民宿2軒とレストランは治療との両立が難しく、畳まざるを得なかった。

 ■当事者視点で

 透析当事者の視点をビジネスに生かしたのは、那覇で出会った妻香苗さん(37)の故郷、宮古島へ移住してから。観光協会への再就職がかなったが、頻繁にあった島外出張で透析施設を探すのに苦労したのがきっかけだった。

 透析をしないと体から老廃物が排出されず、尿毒症などになって命に関わる。当初は4時間の透析が週3回。「出張のたび、その地域の透析病院に1軒ずつ電話し、受け入れ可能な日時や条件を問い合わせた。同じように透析が足かせになっている患者は多いはず。それなら、データベースにして多くの人に活用してもらおうと考えた」

 2012年に株式会社旅行透析を設立し、全国各地に住む透析患者を多い時で14人在宅で雇用。約4400施設の受け入れ状況を調査し、ネット検索できるサイト「透析検索.com」を構築した。

 透析ニーズは国内にとどまらない。やがて沖縄を訪れる外国人観光客に加え、日本からの海外旅行に役立つ情報を発信するようになった。台湾、韓国、中国、シンガポール、マレーシア…。日本人医療者が出入りするアジア圏の病院を中心に視察を重ね、実際に透析を体験した。

 「アジア諸国に対し後進の先入観を抱く人もいるが、自由診療や民間保険を利用する富裕層向けに快適で質の高いサービスを提供している施設は多い。自分の体を実験台に、旅行者の不安や疑問に応えてきた」。現在は週3~4回、各7~10時間を透析に費やしながら、仕事だけでなく、家族との触れ合いを大切にする日常を体現している。

 ■途上国支援も

 その一方で目の当たりにしてきたのは、発展途上国の患者が置かれた「金の切れ目は命の切れ目」という現実だった。日本に約34万人いる透析患者は、モンゴルで500人、ミャンマーでは2千人にとどまるという。医療費の公的助成で自己負担が少なく透析を受けられる日本に対し、保険適用がない東南アジアなどでは高額な透析費用を工面するため家や土地を売り、借金をしないといけないケースが少なくない。

 自身が代表理事、ヘルスツーリズム研究を手掛ける琉球大学の荒川雅志教授らを顧問に、6月に発足した「国境なき腎臓病患者支援会」は、そんな途上国まで支援の輪を広げるのが狙いだ。

 目指すのは、透析費用の全額または大半を患者が負担している国に対する、費用の一部寄付。さらに若年層の腎臓病予防や早期発見のため、学校検尿費用を賄い、日本人医師の現地指導や透析患者を医療スタッフとして育てる奨学金制度などの支援活動を描く。

 日本でも40数年前まで、経済的負担や機器不足が患者の死に直結する時代があった。新たな助成制度が動きだしたのは、患者会の切実な訴えが国会や行政に届いたからだ。「途上国は今、かつての日本と同じ状況にある。時間はかかるかもしれないが、世界中の患者が救われ、互いの国で旅行透析できる環境を実現したい」

最終更新:9/15(日) 8:10
沖縄タイムス

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