ここから本文です

“老い”をタブー視せず、『シルバー川柳』に見る高齢者の意識変化

9/16(月) 6:30配信

オリコン

 先ごろ入選作が発表され、SNS等でも「センス良すぎる」「読んで爆笑した」と幅広い世代に広がった『シルバー川柳』。その名のとおり高齢者をメインとしたこのコンテストでは、『メルカリで 誰も買わない ワシの服』など、自虐とユーモアにあふれる作品が集まった。そんな『シルバー川柳』も今年で19回目を迎え、ある変化が見られるという。単行本を発行するポプラ社の編集担当者に聞いた。

【川柳一覧】「婚活の 殺し文句は…」高齢者の自虐がさく裂!シュールで笑える傑作選

■ネットやSNSの影響で若者も増加、高齢者の切れ味鋭い時事ネタも健在

 毎年「敬老の日」に向けて公募され、今年で19回目を迎える『シルバー川柳』。「まだまだ活力も創作能力もある高齢者。独特のシニカルさとユーモアを取り入れられる川柳は、自己表現の場にピッタリ」という意図のもと、2001年に公益社団法人・全国有料老人ホーム協会によって始められた。そのユニークさからSNSなどでも拡散され、高齢者だけでなく若者にも波及したのが、現在の『シルバー川柳』だ。

 『シルバー川柳』は2012年からポプラ社が書籍化。今年で9冊が刊行されており、シリーズ揃って高い人気を得ている。上記協会とともに入選作の選考にも参加する編集部・浅井四葉氏は、「『シルバー川柳』がネットやSNSで取り上げられることで、10代や20代の若い方からの応募も増加。すそ野が広がった観があります」と、反響の高さを語る。今年の最年少応募者が4歳の女児であることからもわかるように、高齢者と同居する孫世代や、介護の仕事に関わる若者世代からの応募も増えているそうだ。

 もちろん、メインの応募者である高齢者も変わらず元気だ。今年の入選作にも、『メルカリで 誰も買わない ワシの服』(51歳・女性)や『グレーヘア したいがすでに ハゲ頭』(76歳・男性)、『女房から 生前退位 せまられる』(68歳・男性)などがあるが、社会の流れを敏感に取り入れていることに驚く。「70代80代の方でも、流行語や時事問題のキーワードを使いこなしていらっしゃる方が多い」(浅井氏・以下同)と言うように、そうした言葉を使いながら、自虐的なオチまでつけた秀逸な作品が並んだ。とはいえ、「“メルカリ”などはわからない方もいるので、書籍では注釈をつけて掲載しています」とのこと。これもまた、『シルバー川柳』ならではの配慮だろう。

■「尿漏れ」「紙パンツ」「認知症」もズバリ、老いをタブー視せずに堂々と

 長きにわたって続く『シルバー川柳』だが、“夫婦間の愚痴”や“病気ネタ”はテッパン。『失言は 家庭内でも 命取り』(64歳・男性)、『一万歩 すすめて亭主 外に出し』(57歳・女性)、『病院で お互い安否 確認し』(47歳・女性)など名作も多く、毎年多くの句が寄せられているそうだ。

 だが、そんな“シルバーあるある”の中でも、最近ではある変化が感じられるという。

 「“尿漏れ”や“紙パンツ”、認知症にまつわる言葉など、ひと昔前ははっきりと書かなかった老いにまつわる単語を、ズバリと表現する句が増えました。CMなどでも使われていることから、徐々に抵抗が減っていき、もはや隠すべき言葉ではないのかもしれません」。

 実際、今回の入選作にも『徘徊の ルートAI にも読めず』(67歳・男性)という句がある。最近のキーワードと結び付けてはいるが、少し前までタブー視されていた「徘徊」という言葉には、高齢者でなくともドキっとするだろう。

 「老いをみっともないものととらえたり、恥ずかしがったりするのではなく、堂々と言ってのける。それは、ここ10年で表現の仕方に違いが出てきたように感じます」。

 自虐のレベルが鋭すぎて心がざわつきそうだが、老化による不調をも堂々と言葉にして笑い飛ばす強さが現在の『シルバー川柳』にはあるし、他の追随を許さないクオリティの高さの理由も、そんなところにあるのだろう。

■今年の最高齢は97歳、「“君たちはまだまだ”と言われているよう」

 今回の応募者の最高齢は男性・女性ともに97歳。そのうち男性が、『四元号 生き抜き迎える 白寿かな』(97歳・男性)で入選を果たしている。入居するホームの関係者によれば「とてもハキハキした方」だそうだが、『シルバー川柳』には他にも、“達人”とでもいうべき常連組が存在する。

 「常連の方が投稿してくださると、今年も元気にしてらっしゃる…とホッとします。皆さん、そうそう太刀打ちできない表現力をお持ちの方々。そういう方の句を読むと、“ちょっと考えたくらいじゃダメなんだよ。君たちはまだまだ、夫婦の倦怠について知らないんだから”と言われているような気がします(笑)」とのこと。何事を詠むにしても、川柳にはオチが必要。自虐も含めてクスリと笑わせる表現力はまさに年の功であり、人生の大先輩の器の大きさを感じさせる。

1/2ページ

最終更新:9/18(水) 11:25
オリコン

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事