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グアムで737実機訓練 特集・JALパイロット自社養成再開から5年(4)

9/17(火) 9:09配信

Aviation Wire

 1年半近いアリゾナ州フェニックスでの訓練を終えた日本航空(JAL/JL、9201)のパイロット訓練生たちは帰国し、東京でボーイング737型機のシミュレーター訓練を半年ほど受ける。これをクリアすると、いよいよ737の実機を使ったグアムでの訓練飛行に進む。

【グアムで行われるJALの737実機訓練】

 実機訓練を実施するのは、JALの定期便も乗り入れるアントニオ・B・ウォン・パット・グアム国際空港。訓練生たちは、フェニックスで737の操縦特性に近いセスナ サイテーションCJ1+を使い、ジェット機の操縦経験を積んだ。グアムでは、商業運航と同じくトーイングカーによるプッシュバックで駐機場から出発し、グアム島周辺を飛行して訓練を重ねる。

 グアムの訓練をパスすると、商業運航便のコックピットにオブザーブで乗務して路線訓練を半年ほど受け、試験に合格すると晴れて副操縦士に昇格する。

◆教育しすぎない

 「初めて実機を自然環境で動かすことに意義があります。たまたまグアムになりましたが、周辺に山があるので、風などに気をつけるのが第一歩です」と、737の訓練教官を務める機長の日比野琢さんは、グアムでの訓練の意義に触れた。

 飛行機を飛ばすこと自体が初めてだったり、ジェット機を最初に飛ばすフェニックスとは違い、グアムで実機訓練する訓練生は、みな一通りの操縦ができるようになっている。教官側も、手取り足取り教えるというよりは、訓練生がどういう判断を下すかを見ながら、教育しているようだ。

 日比野さんは、教育しすぎないことを心掛けているという。「上空では教育しないようにしていまう。即時性を求めると、訓練生がわかったふりをしてしまいます。まだチェックアウトしていない段階なので、教官から指摘されるのは仕方ありません。直していけばいいんです」と、訓練生が評価を気にする教え方ではなく、課題を修正していく指導に注力している。

 グアムで取材当時は、2010年1月の経営破綻直後に入社した訓練生が訓練を受けている時期だった。日比野さんとこの日フライトした訓練生も、2010年4月に入社した直後の6月に、パイロット訓練が中断。その後は成田空港の地上係員や国際路線事業部での地上勤務をしながら、訓練再開を待った。

 フェニックスでプロペラ機DA-40を初めて飛ばした時に、「ひと言で言うと感動しました」という訓練生は、成田で一緒に地上係員の仕事を経験した同期が着陸を見守ってくれたといい、泣きそうになったという。

◆「自分で考えるパイロットに」

 グアムでの実機訓練を経て、訓練生にはどんなパイロットに育って欲しいのだろうか。日比野さんは「自分で考えるパイロットになって欲しいですね。こちらも間違えることがあるかもしれません。そのことを指摘する際に、裏付けるのは知識や普段の準備。自信を持って仕事ができるようになって欲しいです」と期待する。

 機体に何か問題が起きた際、コックピット内の機長と副操縦士が上下関係ではなく、対等にコミュニケーションするためには、指摘する事柄に対する明確な根拠が不可欠だからだ。

 そして、訓練生に教えることの難しさを、日比野さんはこう表現する。「10を教えることは難しい。言えて3とか5ですね。訓練生にはわれわれの縮小コピーではなく、われわれを追い越して欲しい。小さなことにこだわらず、航空界の仲間として育って欲しいです」と、自らの視点で判断するパイロットとして巣立っていってほしいという。

(つづく)

Tadayuki YOSHIKAWA

最終更新:9/17(火) 9:09
Aviation Wire

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