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創作おつまみの喜び【酒場ライター・パリッコのつつまし酒】

9/17(火) 16:00配信

本がすき。

晩酌クッキングは楽しい

言わずもがな、僕は自宅での晩酌が大好きで、その際のおつまみを自分で作ることに異常な喜びを感じてしまう質です。以前仕事で対談させてもらったラズウェル細木先生は、「晩酌クッキングにはクリエイティブな喜びがある」とおっしゃられていました。うまくいけば嬉しい。失敗してもそれはそれで楽しい。ひらめいたアイデアを試してみてそれがバシッとはまったときなど、自分は天才じゃなかろうか? と思う。そうなってくるといよいよもって酒がうまい。僕はお酒や食べることが大好き。かつ、ものづくりも大好き。だから、ラズウェル先生のこのお話を聞いた時は目からウロコでした。自分がなぜこんなにも、料理を作りながら飲むことが好きなのかの理由を、ズバッと言い当てられたようで。

ライターの仕事を始めた頃は、良い酒場やインパクトのある酒場をレポートする、という内容の仕事がほとんどだったのですが、いつの頃からか、ありがたいことに、レシピに関する仕事をさせてもらう機会も増えました。そうなってくると、ただでさえ好きなのが、四六時中考えているようになる。外でお酒を飲んでいても、何かヒントになるような料理に出会うと、とっとと帰って家で再現してみたくてたまらなくなる。ここまでくるとちょっと病的ですが、一度ハマると抜け出せない楽しさがあるのが晩酌クッキング、特に「創作おつまみ」の世界なんですよね。

僕がこれまでに考えてきたレシピには、数通りの誕生パターンがあります。例えばこんな感じ。

誕生パターンあれこれ

(1)居酒屋からのインスパイア

まずは先ほども話に出た「居酒屋インスパイア系」。日々いろんなお店で飲んでいると、「聞いたことのないメニューだな」「へぇ、それとそれを組み合わせるんだ」「想像とぜんぜん違うものが出てきた!」なんて一品に出会うことがよくあります。そうなってくるともう、家でも作ってみずにはおれない。とはいえ、お店の方に詳しくレシピを聞くなんてことは、そうそうできるものではありません。なので、「たぶんこんな感じだろう」と想像しながら作ってみる。この過程が楽しい。うまくいったらもっと楽しい。

「鶏の酒蒸し」もそんな料理のひとつ。酒蒸しといえば普通はアサリでしょう? ところが、とある居酒屋でこういう名前のメニューを発見し、頼んでみたところ、驚くほどにうまい。女将さんに「どこかのブランド鶏ですか?」と聞くと「ううん、普通に近くのスーパーで買ってきた鶏よ」ときた。となるとこのすさまじい旨味、酒蒸し法によって高められたものというわけか。
さっそく家で試してみました。鶏もも肉に軽く塩をし、小さめのフライパンに入れる。そこに、肉の6ぶんめくらいまでが浸る量の日本酒を注ぐ。水気がなくなるまで中火にかける。食べる。うまい! なんと一発でものすご~くうまくいってしまったんですね。味付けは塩だけなのに、酒の旨味が鶏のポテンシャルを引き出し、ものすごく上等な料理になっている。それ以来しばらく、なんでもかんでも酒蒸しにしては食べていたほどです。

(2)偶然生まれる

家でたこ焼きをしていて、おおかた満足したあと、しかし何か口さみしく、空いた穴でソーセージやチーズなんかをコロコロと焼いてつまみにし始めること、ありません? そんな流れで、2センチ角くらいに切った木綿豆腐を焼いてみたんです。すると想像もしていなかった変化が! コロコロコロコロと豆腐を転がすほどに、鉄板の丸みにそって角が取れてゆき、外側にはカリッと香ばしそうな焦げ目がつき、数分でまん丸、見た目はたこ焼きそのものの物体ができあがったんです。そこで、ソース、マヨ、青海苔、カツオ節で食べてみる。すると、確かにあっさりしている。けれども、6~7割くらいはたこ焼き。焼いている途中で中にタコを差し込めば、さらにたこ焼き度は上がる。カロリーぎ低めだからポイポイとつまんでいても罪悪感が少ないし、おつまみにはむしろこっちのほうがいいんじゃないの? というレシピが、偶然に生まれてしまったんですね。これを「たこ焼き風コロコロ豆腐」と名付けました。

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最終更新:9/17(火) 16:00
本がすき。

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