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台風15号から1週間 道路寸断、ハウスはガラス散乱 営農継続「もう無理」 千葉県鋸南町

9/17(火) 8:02配信

日本農業新聞

 千葉県を中心に関東地方に甚大な被害をもたした台風15号の上陸から16日で、1週間が経過した。同県鋸南町では、台風による土砂崩れが各地で発生、被害の全容把握がいまだに難しい。道路の寸断で廃業を決めた酪農家がいる一方、レタスとネギを水耕栽培していたハウスのガラスが割れ、大量の破片が農家の片付けを阻んでいる。停電が続いている上、人手や物資も足りず、今後の見通しが立たない状況に農家は疲れを見せている。(木村泰之)

続く停電物資不足 募る疲労感

 同町上佐久間地区の山間部で、乳牛30頭を飼う三瓶浩一さん(58)は、台風の影響で酪農を続けることを断念した。三瓶さんの敷地から麓へ下りる町道の約50メートルが、土砂崩れで崩落したからだ。崩落前も、集乳車や飼料を運ぶ小型トラックがやっと通れる道だったが、寸断されてしまった。さらに続く道も、少なくとも2カ所で土砂崩れで道路が埋もれた。

 13日に停電は解消されたが、トラックが来られないので餌を減らし、水だけは与えてなんとか牛を生かしている状態だ。

 停電中は発電機がなかったため、水をくみ上げるポンプが使えず、タンクにたまった水を15リットルのバケツにくみ、70往復して牛に飲ませた。携帯電話もつながらず、周りの農家や町の状況が分からない不安な日々の中、寝る間も惜しんで牛の世話に明け暮れた。

 普段は1日270キロの生乳を出荷していた。台風後、搾乳ができず飼う牛のほとんどが乳房炎になった。搾れたとしても、集乳車が来ないので自身の農地に処分していたが、今では乳もほぼ出なくなってしまった。三瓶さんの元へは、この他にあと一つ道があるが、幅がさらに狭い上、急坂でトラックが上がれない。「崩れた道路を見た瞬間に、ここで牛を飼うのは無理だと思った」と三瓶さんは諦める。崩れた道路を見てから、強風で壊れた小屋から散らばったわらを片付ける意欲が湧かず、作業が進まない。

 三瓶さんは、母の美代さんと2人で酪農を営んでいた。しかし、今年7月に美代さんを83歳で亡くした。悲しみも癒えない時に台風が襲った。「せめて牛だけでも別の農家に引き取ってほしいが、今はごめんなと言う毎日。とにかく安全に牛を移動させられるようにしてほしい」と訴える。

 施設園芸にも深刻な影響が及んでいる。直売所や地元スーパー向けに、水耕栽培のレタスやネギを出荷していた吉田幸男さん(65)のハウスが損壊した。

 「これが現実か」と吉田さんは目の前の状況を直視できなかった。50メートルのハウスのガラスが割れ、骨組みも曲がってしまった。ガラスが、水耕栽培に使う発泡スチロール製のおけを突き破り、水も相当こぼれたという。

 周辺の農地などに飛んだガラスは拾い集めたが、ハウスの中はガラス片が散乱し、片付けもできない。ボランティアの助けも借りたいが大量のガラスが危険な状態で呼ぶに呼べない状況だ。「被害額は数千万円になるのではないか」とうつむく。

日本農業新聞

最終更新:9/17(火) 8:02
日本農業新聞

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