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停滞するデジカメ市場、キヤノンの戦略から目が離せない

9/17(火) 14:38配信

ニュースイッチ

常務執行役員・戸倉剛氏に聞く

 デジタルカメラ市場の縮小が続いている。ミラーレスカメラだけは販売が伸びているが、スマートフォンの普及によるカメラ離れの影響は大きく、ミラーレス新製品の投入だけで市場を回復させるのは難しい。キヤノンはどのような戦略を立てているのか。戸倉剛常務執行役員に聞いた。

 ―市場縮小をどう見ていますか。
 「普及価格帯の減少傾向が特に強い。(スマホ普及で市場全体が縮小していく)メガトレンドは致し方ないが、消費者をよく見て、魅力を感じられる商品を出していく」

 ―普及価格帯のミラーレス「EOS KissM」は根強い人気です。
 「日本では女性の購入比率が高く、KissMは新規層の獲得に寄与した。とはいえ、若者や女性比率の向上は難しい。既存のカメラの形に縛られないことも重要だ」

 ―若者や女性に支持されるための戦略は。
 「まずカメラに触ってもらう、カメラの入り口に立ってもらうことが必要だ。そのために新たな撮影スタイルを提供できるカメラを投入する。液晶画面がなく、スマホの画面で撮影画像を見る小型カメラや単眼鏡のような形の超望遠カメラ、子ども向けカメラなどはそうした取り組みだ。スマホとレンズ交換式カメラの中間領域を狙うが、コンパクトデジカメと同じものでは決してない」

 ―ミラーレスは、今後どのような戦略で臨みますか。
 「35ミリメートルフルサイズのイメージセンサーを搭載した『EOS Rシステム』は、まだ楽しめる層が限られている。システムの拡充が最重要事項。(性能や価格など)現行機種の上と下の領域に拡充する」
 
 ―ミラーレス最上位機種は、どのような構想ですか。
 「過去の性能をしのぐ製品でなければならない。ミラーレス開発は“快速・快適・高画質”を今後も追求する。動画性能も消費者の注目が高い。ネットワークとの親和性も重要な進化軸だ」

 ―ミラーレス用レンズの拡充も重要です。
 「手頃な価格や小型・軽量を意識する。一眼レフで用意できなかったユニークなレンズも提案したい。画質へのフィードバックもできるレンズを出す。画像処理に対するレンズ情報の活用はさらに進化できる。EOS Rシステムにしかできない点を追求する」

 ―交換レンズの製造の自動化について。
 「高精度の追求や良品率の上昇、製造コストの抑制のためには自動化を取り入れる必要があり、最適な工程から順次取り組んでいる。ボディーの製造と比べると、交換レンズの製造の自動化は形状の特性からハードルが高い。自動化に向けて一生懸命進んでいる状態だ」

 ―第5世代通信(5G)が注目されています。カメラへの影響は。
「高画質画像はファイルが大きい。5Gは撮影の快速・快適につながる大きなキーワードだ。大きなスポーツ大会など、決められた環境内できれいな画像を早く、リアルタイムにやりとりするには重要な通信環境だろう。カメラ内部のデバイスについても、5Gの環境が整った段階では今と異なるものが必要になるとは想像がつく」

 ―19年、20年は大きなスポーツイベントが国内で続けて開催されます。
 「今回のように、世界的なイベントが連続することはなかなかない。長年取り組んでいるプロ向けのサポートも今までになく力を入れている。また、ビッグイベントは市場にとってもプラス。プロユーザー向けのビジネスチャンスであることはもちろんだが、交換レンズシステムのすごさや映像の価値を多くの人に認識してもらえる機会だ」

<記者の目>

 新たなコンセプトの製品を次々に打ち出し、充実した製品ピラミッドをさらに広げるのが基本的な考え方。その頂点は「(映画制作向けの)『シネマEOS』も含めるとフラッグシップの考え方も変わるかもしれない」(戸倉常務)。映像制作用カメラの小型化や軽量化の需要は強く、キヤノンが一般消費者用と業務用との線引きも変える可能性がある。
(日刊工業新聞・国広伽奈子)

最終更新:9/17(火) 14:38
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