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大規模停電リスク分散を 駅、空港滞留者対策も 東濃地震科学研究所・古本尚樹主任研究員 【緊急寄稿】

9/17(火) 12:16配信

千葉日報オンライン

 千葉を直撃した台風15号の被害には複合的な課題とともに、これまでの災害事例で課題となっていた部分が改めて表面化したといえるだろう。ひとつは大規模な停電である。昨年、北海道胆振東部地震で大規模なブラックアウトが発生し、企業防災、すなわちBCP(業務継続計画)に関わる対策が急がれるものだったが、その教訓が生かされていたのかは検証が必要だ。

 電力会社でのBCPで重要なのはリスクの分散、それができない場合はセーフティーネットの確立である。今回、送電線や張り巡らせた電線への損傷が大きかった。災害時の電力は住民にとって生命線だ。

 高温期にエアコンが使用できなければ、要配慮者とされる高齢者等の健康被害が懸念される。物流や産業では生鮮品を扱うコンビニ・スーパー等の営業に、いわゆるオール電化住宅では水道やIHコンロにも影響が及ぶ。

 停電による影響は、今後発生が危惧される南海トラフ巨大地震や首都直下型地震での危険性を露呈した。電力に関する企業の対応とともにその支援体制が不可欠だ。都市型災害で圧倒的にマンパワーが足りなくなるので、事前のハード・ソフト両方の対策とともに災害時に業務を継続できる、あるいは復旧を速やかに行える官民合わせた災害対応が不可欠だし、各電力会社同士の広域連携(バックアップ体制)強化が重要である。

 一方で、課題となったのは鉄道の駅周辺に利用者が多数滞留したことである。これは車内での長期間での滞留とともに改善が求められる。

 数年前に、いわゆる帰宅難民(帰宅困難者)対策でJR東日本および私鉄に質的調査を行った。首都圏での雪害による運休や遅延での影響についての対策についてだったが、今回の場合、停電で高温による体調不良者が出るので、電源の確保とともに鉄道利用者等を車内や駅付近に長く滞留させないようにしなくてはならなかった。

 しかし、当初の運転再開予定時間が次々に延期になり、再開予定時間を待っていた利用者は電車の再開まで待つことになり、この利用者が重なり、滞留者が増える状態になってしまった。

 当初の再開予定時点について鉄道会社の見通しがどうだったのか、情報の伝達の仕方も含めて今後の課題になった。これとは別に先述の企業のBCPに関連するが、事前に風水害の危険性が予測される場合、各企業は従業員に対し安全のために出社しなくてよい形にすべきだろう。政府としても各企業へ推奨してもらいたいと思う。

 そうでなければ、この帰宅難民(出社難民とあえて呼ぶが)の問題は大きくなると思われる。交通機関については空の玄関・成田空港でも多数の滞留者が生じた。昨年、関西国際空港での災害案件は生かされなかったのかという疑問は残る。

 これまでの災害事例を生かしながら、企業防災と連携に力を入れることが必要だし、そのために各家庭・企業・地域が協力して防災・減災により一層努力することが肝心である。

 本県に甚大な被害をもたらした台風15号。停電や断水は広範囲で長期化し、発生から1週間を過ぎた現在もなお全面復旧の見通しは見えない。千葉日報社は、公益財団法人「地震予知総合研究振興会 東濃地震科学研究所」の主任研究員で、元松戸市民でもある古本尚樹氏に災害対応の問題点や、リスク回避に向けた提言をいただいた。

◇ふるもと・なおき 公益財団法人ひょうご震災記念21世紀研究機構阪神・淡路大震災記念 人と防災未来センター研究部主任研究員、熊本大学大学院自然科学研究科付属減災型社会システム実践研究教育センター特任准教授などを経て2018年より現職。専門分野は地域総合防災、災害医療、被災者の健康、自治体や企業のBCP(業務継続計画)など。51歳。博士(医学)。

最終更新:9/17(火) 12:16
千葉日報オンライン

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