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世界が認めた演劇人・笈田ヨシ、親交があった三島由紀夫の“天才ぶり”「これはもうすごいですよ」

9/18(水) 7:04配信

テレ朝POST

日本を離れて50年、パリに住み、世界各国で俳優として、また演出家として活動している笈田ヨシさん。

『ピーター・グリーナウェイの枕草子』(1996年)、『最後の忠臣蔵』(2010年)、『沈黙-サイレンスー』(2016年)、『ラストレシピ~麒麟の舌の記憶~』(2017年)をはじめ、ヨーロッパ、アメリカ、日本の映画にも出演。10月18日(金)には映画『駅までの道をおしえて』の公開も控えている笈田ヨシさんにインタビュー。

◆父親の会社倒産でいっきに極貧生活の俳優に…

兵庫県で自転車工場を営んでいた家の長男として生まれた笈田さん。戦前でまだテレビ放送がなく、映画の上映館も少なかったため、娯楽の中心は常に芝居。笈田さんは仕事で忙しい両親に代わり、お手伝いさんに連れられてよく芝居小屋へ通っていたという。

「お坊ちゃんだったんですよ。父親は『阪神自転車』という自転車を作っていたんですけど、戦争になったら『平和産業はいけない』と言うので、軍事産業に変えなきゃならなくて、おやじは潜水艦のハンドル作りの工場に変えたんですよ。

それで戦後にまた自転車屋に戻ったんですけど、僕が26歳のときに会社がつぶれておやじが死んじゃってね。それで財産も全部なくなったので、お坊ちゃんから全く何もない貧乏になって…。明日食べるものもないというほど貧乏になりました」

-会社の後継ぎなのにお芝居をされることについて反対はされなかったのですか-
「されませんでした。男の子は僕一人だから、父親は僕の言うことは何でも反対しなかった。それで大学も『お前勉強するな。勉強したら死ぬから遊べ』って(笑)。

それで役者をやるって言ったら、『大学までやって、どうして役者なんかになるんだ』とは言いながらも、『やめろ』とは言わなかった。でも、それで僕がまだペーペーの26歳のときにおやじが死んで会社もつぶれちゃったからね。役者を続けるハメになりました」

-演出家志望で、そのためにはまず一流の俳優にということで文学座に入られたそうですね-
「そうです。それで入ったときは、僕は名優になれると思っていたんですよ。でも、入ったら最初に『お前は天才じゃない。ダメだ。芝居をやめたほうがいい』って言われてね。

それで、『何?なにくそ』って思って色々勉強しましたけど、ずっと『お前ダメだ』って言われていたんですよ。それで28歳ぐらいのときに、『どうせ俺はダメなんだ』って思ったけど、おやじの会社がなくなったので続けるよりしょうがない。昔はね、途中で仕事を変えることができなかったですよね。

でも、『名優になりたい』と思っていたときは全然ダメで、『自分は天才じゃない。ダメだ』って思ったぐらいの頃から『まあ、役者を続けてもいいんじゃないか』って言われるようになったんですよね」

-欲とか野心があるときはダメだったということですか-
「そうです。僕の場合はダメみたいですね。だから、自分が諦めて、『俺はダメな人間なんだ』っていうことを受け入れてから、ようやく自分の仕事ができるようになった」

-文学座は昔から入るのが難しくて、なおかつ入ったら授業料も高いと聞いていますが-
「いや、僕たちの時はただ(無料)でした。研究生になって、舞台に出ても出演料は出ない。だから、生活費はおやじが死ぬまではおやじからもらっていたし、あとはテレビとか映画。

今は若い役者さんがレストランで働いたりしていますけれども、あの頃は『ニコヨン』って言ってね。港で荷物を運ぶような日雇い労働をすると240円くれたんですよ。男はそれしかなかったんですよ、仕事は。

でも、僕はそれができないから本当に困りましたね。つまり、テレビ、映画、ラジオも、芝居に出ているときにはやれないし、貧乏貧乏貧乏で暮らしていました」

※笈田ヨシ プロフィル
1933年7月26日生まれ。兵庫県出身。慶応大学在学中に、文学座に入団し10年在籍。劇団四季を経て、1970年にピーター・ブルックが設立した国際演劇研究センター(CIRT)に参加したのを機に渡仏。ブルック演出の『マハーバーラタ』(1985年初演)、『テンペスト』(1990年初演)をはじめ、多くの舞台に出演。『あつもの』(1999年)、『最後の忠臣蔵』(2010年)、『沈黙-サイレンス-』(2016年)、『ピーター・ブルックの世界一受けたいお稽古』(2014年)など国内外の映画にも多数出演する一方、演劇、オペラ作品の演出も数多く手がけている。1992年にフランス芸術文化勲章シュヴァリエ、2007年に同オフィシエ、2013年に同コマンドゥールを受勲。

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最終更新:9/18(水) 7:04
テレ朝POST

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