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「記憶にございません」は、邦画脚本の到達点だ!

9/18(水) 12:21配信

TOKYO HEADLINE WEB

【黒田勇樹のハイパーメディア鑑賞記】

 三谷幸喜監督の最新作「記憶にございません!」を観てきました。

 結論から書きます。

 最!高!傑!作!

 日本一有名な脚本家、三谷幸喜さんが「日本よ、脚本はこう書け!」と邦画界に突き付けたかのような素晴らしい作品でした。

 僕なんぞが解説するのは非常におこがましく、もう皆さん劇場に行って頂ければその良さが伝わるはずなので是非観て頂きたいのですが、腰の重い方々を後押しする為に、ちょっとだけ「脚本の美しさ」について書かせて頂こうと思います。

「美しい」って「機能的」であることだと僕は思っています。今作「記憶に~」は、まさにこれの脚本における到達点の様な作品で、他にも巧みな部分はたっっっっくさんあるのですが、その最たる部分が「シチュエーション」と「キャスティング」と「皮肉」

 まずはシチュエーション「記憶喪失になった総理大臣」、これだけで2時間しっかり笑わせてくれます。コメディの超基本は、「嘘」と「すれ違い」に振り回される人々を、観客に共犯者の様な気持ちで観てもらうことだと思うのですが、オープニングの最低限の説明でこの状況が設定され、それ以降は「記憶がある頃の悪い総理」を想定して対応する人々に対して「記憶をなくしていい人になった総理」がリアクションするだけでずっと面白い。

 基本的に、誰かが死んだり、大きな裏切りがあったり「大どんでん返し」と言われるような仕掛けはせずに、後半なんかゴルフしてるだけですよ!?淡々と総理の生活と業務が描かれて行くのですが、この観客との共犯関係が強固だからクスクスが止まらないままラストまで導かれます。

「総理が記憶喪失になったら」という大喜利をして、出てきたネタを漏らさず奇麗に全て配置した感じとでもいいましょうか。もうこれは監督の真骨頂を余すところなく楽しませてもらえます。

 次にキャスティング。三谷さんは「この俳優さんのこういう役が観たい」と演者に合わせて台本を書く、いわゆる「アテ書き」をされる脚本家さんなのですが、このハマり方がヤバい。主演の中井貴一さん、助演の佐藤浩市さんは勿論、ディーンフジオカさん、草刈正雄さん、木村佳乃さん、斉藤由貴さん、石田ゆり子さん、ずんの飯尾さん、名前を上げたらキリがないのですが全員見たことがあるようで見たことがない「そうそう!こういう役が観たかった!」という配役。中でも小池栄子さんと田中圭さんは、僕が観た中では、最も本人のポテンシャルを発揮されている印象だったので、これもファンの方には絶対に見逃して欲しくない。

 最後に「皮肉」。政治という題材を扱えば、現政権をはじめいくらでも誰かを標的にして批判的なエピソードを入れて笑いをとったり、政治的な主張をしたり出来るはずなのに、そんなこと一切しない。

 悪徳で有名だった総理が記憶を失って、良い人になって「正しい政治をしようとする」

 この姿自体が世界中に「正しい政治家って?」と想像させる最高の皮肉!
愛とか正義の話でスッキリと感動に持っていく王道のストーリはもう「王様のレストランの三谷さんが帰ってきた!」と叫ばずにはいられませんでした。

 誰かと語り合いたくて「今後も仕事がしたい」と思う芸能関係の友人に「俺がチケット代出すから観て!」と連絡してしまうほど素晴らしい、現代における邦画脚本の到達点と呼べるような作品でした。

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最終更新:9/18(水) 12:21
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