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劇団美山「この劇団をもっと大きく...」“仲間”たちと魅せる絢爛の舞台:レポート

9/18(水) 15:10配信

MusicVoice

 全国を旅しながら芝居をおこなう旅一座・劇団美山が9月25日、初の撮りおろし映像作品(ブルーレイ/DVD)+写真集『The劇団美山』をリリースする。写真・映像ディレクターに写真家の安珠氏を迎え、アートディレクターはおおうちおさむ氏が担当した。MusicVoiceでは福岡・博多新劇座の初日公演を取材。その公演の模様を座長・里美たかしの言葉を交えながらレポートする。【取材・撮影=村上順一】

 劇団美山の歴史は明治36年から始まる。初代・江味三郎が「江味劇団」として創立、昭和32年には二代目・江味三郎が「江味三郎劇団」を新たに旗揚げ。現在の「劇団美山」に至るには、二代目・江味三郎が松竹新喜劇在籍中に、かの藤山寛美から「故・美山昇二郎(里美たかし座長の父)」の芸名をもらったことがきっかけとなる。平成9年、美山昇二郎の長男・里美たかしが12歳、当時最年少記録の座長襲名を果たし、再度の旗揚げとなった。今の劇団員は、その多くが10代の頃に集まった仲間たちだという。

 MusicVoiceが取材したのは9月1日、里美たかしが一時期過ごしていたこともある九州は福岡・博多新劇座の初日公演昼の部。この日は日曜日ということもあり、昼の部から立ち見客が出るほどの大盛況ぶりを見せていた。里美たかしは「初日と千秋楽は皆さんが盛り上げてくれようとする気持ちが強いので大丈夫なんです。重要なのは2日目から…」と、2日目から5日目が劇場への客足とパフォーマンスを見る目が厳しくなってくると語る。

 舞台は3部構成でおこなわれ、1部では個性豊かな劇団員の自己紹介を兼ねたパフォーマンスでは、エネルギッシュな三味線を披露するなど多才さを魅せた。2部では清水次郎長の兄弟分として幕末期に活躍した侠客「吉良の仁吉」で迫真の演技が光る芝居、そして、前口上(実演・実技などの始まる前に述べる口上)で公演チケットの即売会などを挟み、3部の『男は歌舞いて花となれ』は豪華絢爛、女形での艶やかな仕草で魅了する舞踊と、約3時間隙のないステージで楽しませる。特に可憐な花が咲くようだと例えられる里美たかし、若座長である里美こうたの女形に目を奪われる観客も多い。

 照明機材も自前で、舞台に関することは全て自分たちでおこなうという。しかも簡易的なものではなく、専業のプロから見ても驚くような最新機材を駆使し、現実を忘れさせてくれるかのような、ファンタジックで鮮やかな舞台を作り上げている。

 光と音で魅了したかと思えば、彼らはお客さんと直に触れ合える距離でパフォーマンスをする。お客さんはお気に入りの役者に、お花(おひねり)をつけたりと、観客との距離が近いというのも、大衆演劇の魅力、醍醐味の一つ。大きな舞台では味わうのが難しい、演者と観客の一体感がそこにはあった。

 舞台に出るということは、“見られる”ということ。撮影をしていてもNGテイクが殆どない。どの瞬間を切り取られても大丈夫というのは、プロとしての矜持だと感じた。里美たかしは「個人舞踊で舞台に上がる時は、それぞれが座長のつもりで立ちなさい」と話しているという。

 舞台で一番大切にしていることは「空気とバランス」だという。ある程度は流れを組んだ演目になっているが、その時の観客の空気を読んで、舞台で流す曲や長さはその都度変わっていく。この日も当日ファンから貰った衣装で、その衣装に合う曲目に変えてパフォーマンスした。

 舞台裏では座長からの指示が飛び続ける。舞台裏は戦場だと話す。常に観客の様子を見て、空気を読み、その時の最善を尽くす。音楽に例えるとジャズのような、臨機応変なアドリブ演奏、インプロビゼーションにも似たような感覚がある。里美たかし「即興力がないと(大衆演劇は)やっていけないです」と語った。

 しかも、劇団美山は毎日公演の内容が変わっていく。博多新劇座での公演は1日から29日までほとんど休みなくスケジュールが組まれている。それもあって楽屋の1階~2階まで、彼らの衣装ケースや機材で埋め尽くされていた。毎日来ても楽しめる舞台ということもあり、チケットの即売会では10枚まとめて購入する観客も多数みられた。リピーターが多いということはそれだけの魅力が劇団美山にはあるということだろう。公演終了後は観客1人ひとりをお見送りとファンとの近さを感じさせてくれた瞬間だった。

 毎日公演内容を変えることで、本番が終わった後も次の日の公演のリハーサルが始まるという。すさまじい体力と精神力の強さだ。20年以上も座長を務めてきた里美たかしは、ここまでやってこれた原動力に「自分が好きなことというのもあるけれど、仲間がいること、観に来てくれるお客さんがいること、そしてこの劇団美山をもっと大きくしたいという気持ち」と、座長になった当時、周りから「子どもだけの劇団に何ができる」と蔑まされたことや、人間関係などのこじれもあって、何度も劇団を辞めようと思っていた10代の自分を、乗り越えてきた自信、「這い上がってやる」という想いが原動力になっているという。

 座長として大変なことは何だろうかという問いに里美たかしは「統率力」だと話す。「人を纏めるというのが一番大変。できる限り劇団員の住みやすい環境をつくること。365日戦争みたいな感じなので、自由な時は自由にさせる、メリハリを大事にしています」と座長としての心得を語った。「この仲間たちとだから、ここまでやってこれた。僕は劇団のメンバーに恵まれている――」とここまでを振り返る里美たかしの表情はキラキラと輝いていた。

 その彼らの新作舞踊やインタビューを盛り込んだ映像と撮りおろしの写真集が一体となった作品リリースされる。毎日の公演のあとに撮影したという作品は、過酷だったという。この撮影のために里美たかしは3カ月で10キロ絞り、身体を作り上げた。

 「月下に咲く」と題された里美たかし、里美こうた、里美京馬の3人による花魁の美麗な映像。さらに、和奏プロジェクトのダイナミックな演奏に合わせた鮮烈な殺陣の「焔乱(えんらん)」など、劇団美山の魅力を堪能できる作品となっている。作品に収録される音楽にも注目したい。ビジュアル系演歌歌手の最上川司が、劇団美山のために書き下ろした「扇子の風」。その歌唱もブルーレイ/DVDに収録されている。

 若い世代が伝統を守りながらも、革新を求め切磋琢磨する姿が垣間見れたステージ。これからの劇団美山の活躍に期待感で胸が高鳴った。

最終更新:9/18(水) 15:10
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