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“米国で最も影響力のある医師”が提言、ヘルスケアへのAI活用の「本当に」あるべき姿とは?

9/19(木) 17:00配信

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小売、ロジスティクス、観光など19の産業で人工知能によって生み出される価値は3兆5000億ドル(約388兆円)~5兆8000億ドル(約643兆円)。マッキンゼーが2018年4月に公開したディスカッション・ペーパーで明らかにした推計値だ。

各領域で年々増加する膨大なデータ。これらを解析し、異常を検知したり、プロセスを最適化したりすることで生まれる価値という。

こうした数値が示すように人工知能への期待は非常に大きなものになっているといえるだろう。

一方、期待が先走り、各領域で根深く残る問題の議論が十分になされておらず、その問題を含めた文脈の中でどのように人工知能を活用するのかが明確になっていない場合が多い。

ヘルスケア分野はその典型的な例だ。大手テクノロジー企業やスタートアップなどが、ベテラン医師より高い精度で診断できるアルゴリズムなどを開発しており、その成果は度々ニュースなどで話題となっている。一方、ヘルスケア分野では世界的に医師の燃え尽き症候群問題や、より深い構造的な問題が横たわっており、人工知能を導入すればすべて解決できるという状況ではない。

2019年3月に米国で発売された書籍『Deep Medicine: How Artificial Intelligence Can Make Healthcare Human Again』は、ヘルスケア分野の人工知能のあり方について一石を投じ、英語圏の主要メディアの注目を集めている。

著者は米国の心臓専門医であり、デジタルメディシンの研究者でもあるエリック・トポル氏。米国で最も影響力のある医師に選ばれたことのあるヘルスケア分野では著名な人物だ。

トポル氏が唱えるヘルスケア分野の人工知能のあり方とはどのようなものなのだろうか。

医師の燃え尽き症候群、米国では危機的状況に

トポル氏が同著で主張するのは、人工知能を活用することで目指すべきは、医師が医師らしくあり、患者との人間的なつながりを築ける環境を生み出すことだという。ニューヨーク・タイムズの取材ではトポル氏は「未来の技術(人工知能)を使って、過去を取り戻せることに大きな期待を寄せている」と語っている。

どういうことなのか。

トポル氏がこのように主張する背景には、世界的に医師の労働環境が危機的状況に陥っている問題がある。労働環境の悪化によって、燃え尽き症候群やうつ状態になる医師が急増しているのだ。

Medscapeの調査によると、米国で燃え尽き症候群になっている医師の割合は44%近くに達し、さらに15%がうつ状態ということが分かった。また医師の自殺率は、どのプロフェッショナル職業よりも高く、一般と比べると2倍も高いことが判明した。

職場でのストレス度合いが非常に高く、女性医師の38%がストレス解消のためにジャンクフードを食べ、男性医師の23%がアルコール飲料を摂取していることも判明。

ストレスを高める主な要因には、管理・事務作業での忙殺(59%)、長時間労働(34%)、電子カルテの入力(32%)などが挙げられている。

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最終更新:9/19(木) 17:00
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