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【特集】「お金がない」「夫が暴力」 悩むママ駆け込む“小さないのちのドア”

9/20(金) 19:10配信

読売テレビ

 新しいいのちの誕生を待つ女性にとって幸せなはずのその時…。
兵庫県に住む20代の彩花さんは交際していた男性との間に去年、命を授かった。

彩花さん(仮名・20代)「妊娠報告して、相手の方から生んでほしい、結婚しようと言われてたんですけど、突然音信不通になってしまって。相手が結婚しようって言ってくれていたので、結婚しますということを職場にも言ってしまっていた」

 思い描いていた理想とは、全く違う現実。出産費用を賄うことが難しく、自身の親とも5年以上、連絡が取れない状況で、頼れる人もおらず、妊娠8か月で「小さないのちのドア」に駆け込んだ。

永原郁子さん(62)「もしもし。小さないのちのドアです」

 神戸市北区にあるマナ助産院の永原郁子さん。去年9月、助産院のすぐ横に、「小さないのちのドア」という無料の相談施設を開設した。育児に困難を抱えるお母さんが訪れ、助産師たちに相談することができる場所だ。開設から1年で1350件、実に、月100件以上のペースで相談が寄せられている。見えてきたのは、“誰にも頼ることが出来ない”人たちの存在だ。
 
相談スタッフ「誰も守ってくれなかったから、誰も支えてくれなかったから人に頼ることが怖いんですというのを何回も何回も」

 追い詰められた女性にとって、今の社会には助けを求めることができる場所は多くない。

永原郁子さん「こんにちは」
真理さん(42)「お久しぶりです」

 42歳の真理さんは、前の夫との間に生まれた2人の子どもを育てながら、交際していた男性との間に子どもを妊娠。「面倒見るよ」と話していた男性は、妊娠を告げると、音信不通に。経済的な不安もあり、中絶も考えたという。

真理さん(42)「産むって決める前まではマイナスなことしか考えてなかったんですよ。もし中絶するのであればしないと、もう一日一日大きくなってしまう。でも実際に目に見えていなくても赤ちゃんだし、検査すれば動いているし」

 妊娠が発覚した時、真理さんの母親は病に倒れていた。そんな中、シングルで子どもを産むことを家族に伝えられず、小さないのちのドアが開設された日に、まっさきに相談の電話をかけた。

真理さん(42)「(子どもが)できたときに、この子は誰から祝福されるんだろうって。この子(上の子)たちも家族みんなから囲まれてお祝いばかりされていた。でも、この子誰からお祝いされるんだろうって思ってたんですよ。でも、実際生まれてみたら、本当にみなさんにおめでとうって可愛がってもらえるから、本当にうれしいです」
永原郁子さん「みんなの宝物よね」

 永原さんたちは女性がどんな状況におかれていても、「産む選択」「育てる選択」があることを伝え、女性が選んだ道を後押しする。

 小さないのちのドアには、関西だけでなく日本全国から、悩みを抱えた女性が助けを求めやってくる。

美穂さん(仮名・30代)「行くところもなくて、本当に困ってたから、24時間なんかあったら聞きますと書いていたのがこの助産院で。逃げたいっていうのが一番やったから、すがる気持ちでメールした」

 夜行バスで10時間近くかけて来た美穂さん。理由は夫のDV=
家庭内暴力だ。ほかの3人のきょうだいも夫から虐待を受け、児童養護施設に保護されている。行くあてのない妊婦が安心して滞在できる場所があれば…。出産までの間、滞在できる「マタニティホーム」の建設を考え、永原さんは、隣の土地を購入した。しかし、数千万円かかる建設費は、半分も集まらず、建設のめどは立っていない。

 永原さんは兵庫県庁に、頻繁に足を運んでいる。長く活動を続けるためには、公的な支援も必要と考えているが、ハードルは高く、
今は寄付などに頼って運営している。

 夫のDVに悩む美穂さんは、1週間、マナ助産院に滞在し、永原さんたちと相談のうえ知人を頼りに、新たな場所で生活することを決めた。しかし…。

永原郁子さん「(夫が)居場所を探してるって。行こうとしているところの行政の方が心配されている(転居先が)危険な場所じゃないかって。知ってるでしょ、彼は」
美穂さん(仮名・30代)「私は大丈夫やと思う」
永原郁子さん「ほんま?」
美穂さん(仮名・30代)「あの人たちは県外から出ることまずないし」

 結局、美穂さんは、助産院を後にしたが、数日後、転居先で夫に見つかり連れ戻される。夫との生活に苦しみ続ける美穂さん。今はLINEで連絡を取り合うのが精いっぱいだ。

 交際相手と連絡が取れないままの彩花さん。それでも、彼女は、生んで、育てることを選んだ。

永原郁子さん「おでこ出たよ。力抜く。ありがとうありがとう、上手だよ。体全部出るよ。はい、ありがとう」

元気な男の子が生まれた。

永原郁子さん「いい感じで生まれてきてくれた。これから色んなことお教えするわね。お風呂とか抱っこの仕方とかね。すぐに慣れるよ」

 ことし5月。小さないのちのドアの活動を知った兵庫・播磨町の工務店から、“希望”が舞い込んできた。行くあてのない妊婦が滞在できるマタニティホームの建設に賛同し、利益を考えずに、設計・建築をしたいと、申し出たのだ。

ケーアイリビング・池田浩司さん「家を作るというのは、日の当たる人たちのための仕事、幸せな方がより幸せになるために家があるというのが僕たちの今までの考えだったんですけど、日の当たらない方たちのための家づくりというのも、僕たちのステップアップにするためにも、経験していくべきなのかな」

 「マタニティホーム」は来年度中に建設される見通しが立った。

 出産から5日後。彩花さんは、この日赤ちゃんの沐浴を初めて教わる。

相談スタッフ「すごい泣いてる。どうしましょ」
彩花さん(仮名・20代)「しわくちゃ」
相談スタッフ「これしぼってもらっていい?きゅーってしぼって。
薄くしてもらって」

 彩花さんは、産後3週間、マナ助産院に滞在できるが、その後は、自立しなくてはならない。永原さんたちの仲介で、仕事と住む場所は決まった。

永原郁子さん「相手を追跡できる可能性はあるか聞いてみたら、この情報だったら追跡できるん違うかなと思って。音信不通になって、泣き寝入りはあかんと思う。追跡して、責任ある行動を。慰謝料なり養育費でもいただけたらなって」

 彩花さんの赤ちゃんは順調に成長し、1か月検診を迎えた。
親と5年以上、連絡が取れない彩花さんにとって、永原さんたちの存在は、日に日に大きくなっていた。

記者「マナ助産院はどういう場所になりました?」
彩花さん(仮名・20代)「・・・実家みたいな感じ」

 相談に来たときは、人目につかない裏口から、でも、出ていくときはみんなと正面玄関から。永原さんの願いだ。

永原郁子さん「世の中は助けてくれる人がいるんだよとか、人は本当に信頼に値するんだよとか、私たちの言葉とか関りを通して、感じていただきたい。それを次生きる力にしていただきたい」

 たくさんの人から祝福される新たないのち。一方で、人知れず思い悩み、小さないのちと1人で向き合う女性が、今日もどこかにいる。

最終更新:9/25(水) 15:56
読売テレビ

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