ここから本文です

SDGs達成への大きな障壁は「大気汚染」 幻聴やうつ・・・その知られざる負のインパクト

9/20(金) 6:01配信

AMP[アンプ]

17の国際目標を掲げる「持続可能な開発目標(SGDs)」。その中の、目標3「健康・ウェルビーイング」、目標7「クリーンエネルギー」、目標11「持続可能な都市・コミュニティ」、目標13「温暖化対策」の達成を脅かす問題が世界中で拡大している。

世界保健機関(WHO)のテドロス・アダノム局長が「新しいタバコ」と形容する大気汚染問題の深刻化だ。自動車や工場から排出される有害物質よって毎年世界中では700万人以上が命を落とし、数十億人が健康を脅かされている。アダノム局長はこの問題を「エピデミック」だとし、問題解決に向けた動きを早急に始めるべきだと警告を発している。

大気汚染による被害というと、喘息など心肺機能への影響がよく知られているが、近年精神疾患や認知症、さらには肥満などを引き起こす可能性を示した研究が多く発表されており、心肺系だけでなく脳など身体のさまざまな部位に悪影響を及ぼすことが懸念され始めているのだ。

大気汚染による健康被害によってもたらされる経済損失も無視できない。世界銀行の推計では、2013年大気汚染で命を落としたり、不健康になったりしたことでもたらされた労働価値の損失は2250億ドル(約25兆円)、医療コストを含めると5兆ドル(約555兆円)以上に上ったという。

WHOによると、世界の子供たちの90%以上が同機関が定める安全基準値を超える大気汚染地域に住んでいる。インドや中国などの南・東アジアに加え、アフリカや中東地域、さらにはロンドンなど交通量の多い先進国の都市部でも大気汚染問題は悪化している。

大気汚染はどのような健康被害をもたらすのか、またどれほど広がっているのか、近年の研究からその実態に迫ってみたい。

幻聴、うつ、知能レベルの低下など、大気汚染がもたらす健康被害

2019年3月に医療ジャーナルJama Psychiatryで公開された論文では、英国の大気汚染がひどい地域に住んでいる10代の若者の間で精神疾患が多い傾向が明らかになった。

これはキングス・カレッジ・ロンドンの研究者らが英国在住の17歳の若者2000人以上を対象に行った調査。窒素酸化物レベルが高い地域に住む若者はそうでない地域の若者に比べ、幻聴や極度の偏執病(他人が自分を批判しているという妄想を抱く症状)などを体験した割合が70%高かった。

同調査は因果関係を示すものではなく、騒音なども影響している可能性があるとしている。しかし、喫煙、飲酒、マリファナ、家庭状況などを考慮しても、窒素酸化物と精神疾患の間には強い関連があり、無視できないものだと指摘している。

窒素酸化物は主にディーゼル車から排出される物質。英国の多くの地域では安全基準値を超える水準にあり、住民から政府への対策要請が強まっている状況だ。

近年では窒素酸化物の脳への悪影響を示す研究が多く発表されていることも手伝い、英国では「Doctors Against Diesel」という医師らが結成したグループが政府にディーゼル利用の制限を求めるなどの取り組みが活発化している。

1/2ページ

最終更新:9/20(金) 6:01
AMP[アンプ]

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事