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旅情誘う「駅弁」 伝統の味は守れるか

9/20(金) 8:01配信

帝国データバンク

 長い旅の途中、駅で購入した弁当の紐をほどき、地元名産の品々に舌鼓を打つ。ボックス席から見える風景をつまみにビールを……などと考えていると、思わずよだれが出そうだ。

 かつて長時間停車する駅のホームには、首からお盆を下げ、味のある掛け声とともに駅弁を売り歩く売り子がいた。乗客が売り子から窓越しに駅弁を購入する「立ち売り」は、やがて鉄道の高速化とともに数を減らしていく。筆者自身は窓越しに駅弁を購入した経験はなく、列車の窓から顔を出す機会自体なかなかないだけに、絶滅寸前というのは少々もの寂しい。

2011年前後は駅弁製造冬の時代、2010年4月には「八角弁当」旧製造・販売元が破産

 駅弁を取り巻く環境は、ここ10年の間でも大きく変化している。帝国データバンクが保有する企業概要データベース「COSMOS2」より、駅弁を製造していることが判明した79社(2019年8月時点)を抽出。そのうち業績比較が可能な71社の売上高合計を分析したところ、約1508億8800万円(2008年)→約1421億6800万円(2011年)と大幅に縮小している時期があることに気づく。

 この時期は国内景気の低迷に加え、2009年3月から始まった土日祝日の「高速道路料金上限1000円」により、鉄道利用客が自家用車へシフト(同措置は2011年で終了)。2010年4月にはJR大阪駅などで「八角弁当」を販売していた(株)水了軒が破産するなど、駅弁製造業者は冬の時代を迎えていた。なお、当社の事業は(株)デリカスイト(岐阜県大垣市)が買収したのち、同社とその子会社である水了軒(株)(大阪府大阪市)が継承している。

冬の時代を経てV字回復、依然として「旅のお供」イメージは健在

 しかし、その後売上高合計は約1543億1300万円(2016年)まで回復。これは逆風のなかでも行われていた「駅弁の魅力発信」が奏功した結果だろう。京王百貨店新宿店では毎年、全国各地の駅弁を集めた「元祖有名駅弁と全国うまいもの大会」が開催されるほか、2012年には(株)日本レストランエンタプライズ(東京都台東区)が東京駅構内に「駅弁屋 祭」を出店。現地に行かずとも各地の駅弁を楽しめるとだけあって、人気も上々のようだ。そのほか、従前から販路を高速道路のサービスエリア等にも拡大し、鉄道利用客以外の取り込みに成功した企業も見られる。

 以前と比べ楽しみ方が変わったことは確かだが、駅弁が持つ「旅のお供」のイメージは、私たちに非日常を感じさせてくれる。売店で購入した駅弁を新幹線の車内に持ち込み、流れる車窓とともに楽しむ乗客の姿を見ていると、やっぱり日本人は駅弁好き……と思うのは筆者だけだろうか。

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最終更新:9/20(金) 16:41
帝国データバンク

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