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アパレルの仕事をしていた僕が、ある朝突然「失明」した話。

9/20(金) 10:58配信

BuzzFeed Japan

ある朝起きたら、僕の目は見えなくなっていた。娘の顔がみられなくなる、と大泣きした。

当たり前にあった世界が突如として奪われる、ということを想像したことがあるだろうか。【BuzzFeed Japan/籏智 広太】

多くの人は、ないだろう。彼もまたそれは同じだった。しかし、現実はなんの前触れもなく訪れる。

2016年4月。石井健介さん(40)は、光を失った。いつものように朝起きると、目が見えなくなっていたのだ。

「とにかく、娘の顔が見えないって大泣きしたんですよね」

妻と、当時3歳の娘と、生まれて3か月の息子と4人で暮らしていた石井さん。

アパレル企業での勤務やロンドンへの留学などを経てフリーランスに転じ、仕事が軌道に乗り始めたころだった、にもかかわらず。

目の前は、真っ暗になった。

診断は「異常なし」だった

突然に失明したことに、とにかく「動転した」という。

「最初のうちは、うっすら光は感じていたんです。朝起きると霧で視界なくなるじゃないですか。世界があんな感じになっていて。でも、その日の夜までには真っ暗になってしまいました」

もともとの視力は0.6くらいで、特段のトラブルを抱えたこともない。何かあるとすれば、前日に視野の一部が欠けていたこと、くらいだった。

「前の日に打ち合わせに行って、喫茶店のメニューを見てたら一部だけ見づらくて……」

その日のうちに検査をしたが、診断結果は「異常なし」だった。医師にはこう言われた。

「疲れ目、なんじゃないですか?」

「こんなはずじゃなかった」

光を失ってその日のうちに、大学病院に運ばれた。

「最初の夜が、とにかく怖かったんです。家族が帰って病室で1人になった時に、子どもみたいに布団かぶって泣いたんですよ。体をつねって痛みを感じてないと、もう……なんだろう。ここにいるのかいないのか分からないぐらい、自分を保てなくなっていた」

「最初の3日間ぐらいは、死ぬことしか考えてなかったです。どうなるんだろう?みたいな。とにかく絶望してたのは、何よりも娘の顔が見られないこと。これから一緒にどこにも行けなくなるんじゃないか?と、ずっと考えていました」

検査の結果、軽い脳梗塞かもしれないと言われたが、最終的に下された診断は「多発性硬化症」。

脳の中枢神経が炎症を起こす病気で、石井さんの場合はそれが視神経だった、ということだ。目、そのものには一切問題がない。「スクリーン」の役目を果たす脳と目をつなぐ「ケーブル」が壊れてしまったのだ。

「夢をみるんですよ。夢の中では色がついて、はっきり空間も分かって見えている。でも、目あけた瞬間に何も見えない、ということを毎日繰り返していて……。途中から夢の中で気づくんですよね。これ夢だろうって。で、目を開けてみると、やっぱり夢だったっていう」

こんなはずじゃなかったーー。石井さんの脳裏には、そんな言葉が浮かんだ。

「仕事でもまだまだやりたいことがあったし、見たいのもあったし、読んでない本も山積みだった。なんで見えなくなってんだよ、そんな気持ちでした」

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最終更新:9/20(金) 10:58
BuzzFeed Japan

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