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大黒摩季の“ロック姐御”っぷりを示す『永遠の夢に向かって』

9/21(土) 18:02配信

OKMusic

OKMusicで好評連載中の『これだけはおさえたい邦楽名盤列伝!』のアーカイブス。今回取り上げるのは大黒摩季の『永遠の夢に向かって』。90年代にミリオンセールスを連発し、シーンを席巻した所謂ビーイング系アーティスト。大黒摩季は、B'z、ZARD、T-BOLAN、WANDSらと並び、その一躍を担ったシンガーソングライターである。一時期はテレビ出演はおろか、ライヴコンサートも行なわなかったため、「歌手担当、モデル担当、作詞・作曲担当の3人の大黒摩季いる」といった都市伝説があったことも知る人ぞ知るところだろうが、そういった話題が先行して、これまで彼女の音楽性は余り触れられてこなかったようにも思う。そんな大黒摩季のオリジナルアルバムで最大のセールスを記録したのが4thアルバム『永遠の夢に向かって』であり、この作品をテキストに彼女のアーティスト性を探ってみたい。
※本稿は2015年に掲載

アルバム『永遠の夢に向かって』

このアルバムに限ったことではないが、サウンドの基本は言うまでもなく、ロックである。オープニングM1「永遠の夢に向かって」は発売当初から「サビのメロディーがディープ・パープルを彷彿させる」と言われたことがあるが、この楽曲はイントロで逆回転を取り入れている。サイケデリックロックの手法であるが、これをディープ・パープルの「ノー・ワン・ケイム」(アルバム『ファイアボール』収録)のオマージュと見るのは深読みすぎるだろうか。また、M2「ROCKs」はレッド・ツェッペリンやジミ・ヘンドリックスばりのギターリフが聴けるナンバー。タイトルからして文字通りロックである。さらに、シングルチューンM4「あなただけ見つめてる」やM9「白いGradation」で聴かせる細かいギターのカッティングは小気味よく、躍動感あるバンドサウンドのポイントだ。

かように、主にギターが作るロックサウンドがベースでありながら、多用な要素を取り込んでいるのも見逃せない。これまたシングルナンバーであるM11「夏が来る」が分かりやすいが、パーカッシブなビートでラテンな雰囲気を作り出しているし、M5「Return To My Love」では同期ものを強調することでバブル期のディスコのようなダンスチューンに仕上げている。ゴスペル調のM6「Stay with me baby」は本格的なコーラスワークでかなりブラックミュージック寄りだし、ハーブ・アルパートばりのトランペットが聴けるM8「GYPSY」はジャジーで都会っぽいサウンドメイキングが印象的だ。クレジットを見るとドラマーの名前が明記されていないようなので、リズムは打ち込みだろうが、ミキシングの巧みさからか、それほど無機質感に支配されていないのもいい。若干打ち込みっぽさを感じる場面がなくもないが、そこでは件のギターサウンドがそれを糊塗するように入ってくる。この辺りはプロフェッショナルなサウンドメイキングをいかんなく感じることができる。ヒット曲の量産体制を当時は揶揄されることもあったビーイングであるが、やはり流石と言わざるを得ない。

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最終更新:9/21(土) 18:02
OKMusic

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