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原監督が涙の胴上げ ワインも成り立ちからこだわり「一流の人間は一流の物を」野球以外でも磨き続けた人間力

9/21(土) 21:18配信

中日スポーツ

 その瞬間、すぐに目に涙があふれた。5年前と同じ横浜スタジアム。現役時代の背番号と同じ8度、宙を舞った。4年ぶりに現場復帰し、8度目のリーグ制覇。巨人・原監督が涙の理由を口にした。「新鮮ですね。それと歳を取ると、涙腺が弱くなるかもしれませんね。長い時間でしたね。固定観念を捨ててどういうチームをつくれば強くなるか。野球界に戻ることは片隅にもなかった。情熱が残っているのか不安もありましたが、残っていました」

 過去のリーグ優勝とはとは違うアプローチで頂点に登り詰めた。復帰に際して掲げたのは「のびのび野球」。還暦を越えた若大将にとって、孫に近い世代の選手たちも増えてきた。かつてのように厳しく接する機会は極力減らし、「思い切ってやれ」と力を発揮させる手法を選択した。

 「育てていかなくてはいけない」。何度も口にするほど、若手育成の必要性を感じていたからこそだった。ファームとの情報共有を今まで以上に密にし、調子の良い選手を優先的に起用。レギュラーを固めきれなかった二塁は吉川尚、山本、若林らが入れ代わり立ち代わりで務めた。シーズン終盤に調子の落ちた若手を2軍に落とした時には「けっこう我慢したんだけどなぁ」と漏らしたことも。忍耐が実り、桜井や中川らが計算できる戦力として台頭してきた。

 報道を介してコーチ陣に苦言を呈す形で、間接的に選手たちにハッパをかけることもあった。ソトに3被弾した11日のDeNA戦後には「(相川)バッテリーコーチに少し気持ち悪いくらいに言っておいて」。2試合連続1得点で連敗した18日の中日戦後には「吉村(打撃)総合コーチによろしくお願いしますと言っておいて」。コーチの1人は「われわれに言ったことを選手がどう感じるか、監督は見ている。そういうことも、われわれの役割。厳しいことも多々ありますけど、それで優勝するわけだから間違った指導ではないと思います」と話す。

 野球界の外にも目を向け、自分を高める努力も怠らない。報道陣に関係の悪化した日韓問題の話題を振って語り合い、「一流の人間は一流の物を食べなきゃいけない」と口にする食材にも気を配る。好物のワインは成り立ちから学び、「そういったところがワインの面白さなんだ。それを感じながら飲むんだ」とのどを潤しているという。

 7月30日にはプロ野球史上13人目の通算1000勝を達成したが「きょうが終わったとしても、あしたはどうやったら勝てるんだ。これの積み重ね」と貪欲に次の1勝を求める姿勢を貫いた。かつての政権時代から知るチームスタッフの1人は「情熱的だし、勝負勘が鋭い。そういうところは全然、変わっていない」と舌を巻く。変化と不変という相反する要素を併せ持ち、ワインのように年を重ねて円熟味を増した采配で、次は4度目の日本一に挑む。
(小林孝一郎)

最終更新:9/29(日) 23:52
中日スポーツ

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