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人工知能が担う新たな領域――エストニアの「ロボット裁判官」とは?

9/22(日) 6:00配信

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人工知能(AI)がウォール街、金融業界における人間の役割を根本的に変えつつあるというニュースは以前、「AIリストラ」というセンセーショナルな言葉で世界を駆け巡った。
金融、医療など、私たちが予想していた以上に人工知能と機械学習は多くの分野で活用されるようになっているが、法律の世界も例外ではない。

電子政府で知られる北ヨーロッパの国エストニアでは、農業補助金審査や求職者への仕事の紹介など、すでにAIの活用が多様な公的分野で推進されているが、同国における最新のプロジェクトは、AI搭載の「ロボット裁判官」の設計だ。

エストニアだけではない。中国のネット裁判所や、英米で話題となっているチャットボット弁護士など、法律分野でのAIの活躍に関する報道がこのところ相次いでいる。私たちの生活に深く関わっていながらも、一般市民にはどこか敷居が高い存在だった法律の世界をAIはどのように変えつつあるのだろうか。

電子国家エストニアの新たな挑戦「ロボット裁判官」

政府機能がほぼ全て電子化されているエストニア。公的部門の効率化を熱心に進めるこの国では、すでにAIは一部の行政の事務仕事を担っている。

農業補助金の審査はそのひとつだ。干し草刈りの補助金を受けている農家は、これまで人間の公務員による審査を受けていたが、現在は、欧州宇宙機関から送られてくる衛星画像をAIが分析し、農家が定められた業務の遂行義務を果たしているかをチェックするようになった。

また、膨大な情報の分析はAIが得意とするタスクだが、公共職業安定所において、求職者の履歴書データベースに基づき、適した求人情報をマッチング、紹介するのもエストニアではAIの仕事だ。AI導入後、新しい職場への定着率は58%から 72%に向上したとのことで、評判は上々だ。今後も、2020年までに、エストニアは人工知能技術に関連した35の試験的プロジェクトを予定している。

今年2019年には、さらなる行政業務の効率化を目指し、法務省が最高データ責任者であるOtt Velsberg氏に「ロボット裁判官」プロジェクトの推進を依頼したと発表された。

テクノロジーの受け入れが比較的スムーズなエストニアにおいても、AIに人生を左右する判断を任せるのかという否定的な反応も少なくないが、このプロジェクトは、ロボット裁判官という名前から一部の人が想像するように、反論の余地なく機械的に刑務所に送りこまれる、といったものではない。対象は、7000ユーロまでの契約上の紛争に関する少額訴訟に限られ、結果に納得しない場合は人間の裁判官に上訴することが可能だ。

なによりまだプロジェクトは始まったばかりであり、あくまでも今年の末までに試作アルゴリズムの試験導入がなされ、専門家によるフィードバックを待つという段階だ。AI導入に対応した法的なフレームワークの構築も、今後数年をかけて進められる予定となっている。

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最終更新:9/22(日) 6:00
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