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今だから言うが「欲なき天才」隠岐の海のほうが貴景勝より分があると…[大相撲・北の富士コラム]

9/22(日) 23:01配信

中日スポーツ

◇大相撲秋場所<千秋楽> (22日・両国国技館)

 隠岐の海対貴景勝は、勝った方が優勝する権利が残されて、負けると完全に脱落する。誠に勝負の世界は非情である。今だから言うが、この一番は隠岐の海に分があると見ていた。追う者の強みとでもいうか、隠岐の海にとって失うものはひとつもない。血のにじむような努力、稽古はあまり見たことがない。天与の恵まれた才能をもち、もっぱら欲がないと見え、今まで来てしまった。

 気が付けば34歳。今場所は順調に勝ち進み8連勝。上位陣は休場やら何やらで、次々と星を落としていた。中日を終えたところで後続の力士はすでに2敗している。このあたりから、のんきな隠岐の海も、本気になって優勝を意識しだしたに違いない。だが、意識した途端に2連敗。いかにも隠岐の海らしい。

 上位が星をつぶし合い、14日目に3敗3人に絞られたのであります。ずいぶんと枕が長くなってしまった。

 話はこうだった。なぜ隠岐の海に分があるかである。ひと言で言えば、失うものがなにひとつないということ。たとえ負けても痛くもかゆくもない。だから気楽にとれる隠岐の海が有利とみたのである。

 大した根拠ではない。結果は見ての通り。貴景勝の押しに、まわしに手もふれさせてもらえなかった。苦労の差が出た一番である。「努力が天才に勝つ」。それでも隠岐の海には少しだけ夢を見させてもらった。今場所の相撲を見ると、40歳くらいまで元気に取れそうだ。また気楽にやれば良い。

 御嶽海と遠藤の一番は、圧倒的な相撲で御嶽海が押し出し、決定戦に持ち込んだ。この決定戦に場内は大いに盛り上がる。横綱不在の場所も、決定戦のおかげで何とか格好だけはついたのではないか。

 本割は貴景勝が勝っている。それも一方的な相撲だった。立ち合いに迷った御嶽海が、貴景勝の強烈な当たりと出足になすすべなく押し出されている。立ち合いで主導権を握ることは容易に想像がつく。実際、その通りの展開になった。

 御嶽海が頭で当たらずに、体をぶっつけに出た。確か、頭では当たっていなかったはず。貴景勝が弾かれたように、頭が上がり、上体が起きる。そして右手ではたいた。この引きが結局命取りとなり、御嶽海の出足を誘い、一気に押し出されてしまった。

 大一番ほどあっけなく終わるものらしい。どうやら気力で御嶽海の方が勝っていたような気がする。たぶん、痛めた膝は完治していまい。悲鳴をあげているのではないか。

 豪栄道戦では、あくまで勝ちにこだわった御嶽海の執念のほうが勝ったのかもしれない。短い一番だったが、力は十分に出した。貴景勝は精根尽きたとみる。

 この優勝で、御嶽海は九州場所で大関昇進をかけて戦うことになる。くれぐれも豪栄道戦のような注文相撲はやめてもらいたい。

 今場所はまだまだ、言いたい事は山ほどあるが、昨夜から発熱とせきが止まらない。ほとんど意識もうろう。何を書いているのか、おぼつかない状態であります。「体力と気力の限界」。今場所もありがとうございました。(元横綱)

最終更新:9/29(日) 23:17
中日スポーツ

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