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緊急・災害時に必須かも。“メッシュ”メッセージングアプリとはどういう仕組みなのか

9/23(月) 12:01配信

ギズモード・ジャパン

連日報道される香港のデモで気になったのが、若者たちがなにか秘密の方法で連絡を取り合っていたという話。インターネットではすべて筒抜け、隠し事はできないって言われているのに…

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もしかして、インターネットを使わずに連絡していたということ? それってノロシ? 伝書バト?

いえいえ、そうではありません。香港の抗議活動の舞台裏報道で明らかになったのは「メッシュ」ネットワークを使ったメッセージングアプリ。Wi-Fiネットワークや携帯電話網など政府側が制御しているインフラにはいっさい頼らずに、ユーザーどうしが連絡を取り続けることを可能にするアプリです。

このようなオフグリッド型のメッセージングアプリは、BluetoothやWi-Fiのアドホックモード(スマートフォンが、スマートスピーカーや家庭用の防犯カメラをインターネットに接続するときに使ったりする機器と直接Wi-Fiをやりとりするモード)を使い、デバイスどうしで直接通信を行います。Wi-Fiルーターや携帯中継局を経由してデータを送っているのではありません。

アドホック通信には、会話をしている当人どうしのあいだに何も挟まれないため、監視や規制が難しくなるという大きなメリットがあります。たとえば、政府やハッカーは携帯中継局に侵入して通信チャネルを遮断するという手を使えませんし、インターネットサービスプロバイダー宛てに送られるデータの横取りも不可能。また、連絡に使われているWebサイトに攻撃を仕掛けて使用不能にする手も無駄です。

このようなアプリは従来のオンラインネットワークにログインせずに動作するため、「オフラインアプリ」と呼ばれています。または「ピアツーピア(P2P)アプリ」。これは、トレントアプリと同様、中央のサーバーからデータをもらうのではなくユーザーどうしを直接接続することに由来しています。

もちろん、BluetoothやWi-Fiが永久に接続を続けられるわけではありません。これらのアプリが賢さを発揮するのはまさにここ。ちょうど、リレーの選手がバトンを渡すように、同じアプリがインストールされているデバイスを経由してメッセージを他へと伝達する点です。

メッセージを経由させ、手渡ししていることも、メッセージの内容も、そのデバイスのユーザーにはわからないようになっています。ですから、あなたのメッセージがおかあさんに届くまでに何十人ものユーザーを経由したとしても、誰ががそのメッセージを読んでいるなんてことはありませんからご安心を。

似たような原理は、Tileのような紛失防止タグでも使われていますし、近々、Appleの「Find My」アプリにも採り入れられる予定だそうです。そのアプリをインストールしていれば、名前を知られることなく、ネットワークの拡散に協力できます。拡散の目的が、見失ったMacBookの追跡か、暗号メッセージの配信かは問題ではありません。

このアプリにも欠点といえる問題があります。少なくとも都市部ではほぼ全域にWi-Fiや携帯電話の受信可能範囲が広がっていますが、一方で、何百キロ移動しても、こういったメッセージングアプリを実行している人にまったく出会えない地域もあります。アプリを効率的に動作させるには、大勢のアプリユーザーが狭い範囲にかたまってなければならないのに!

その範囲は、通常、最大半径100メートルと言われていますが、これは理想的な条件が整っていればの話。建物の中にいたり、見える範囲に誰もいなかったりしたら、もっと短くなります。でも、基地局やWi-Fiに接続できれば、これらを使ってさらにネットワーク範囲を広げることも可能です。

WhatsAppやiMessage、Signalなどのアプリは、エンドツーエンドの暗号化を使用して、盗聴を阻止していますが、オフラインメッセージングアプリはさらに1歩先へ進んでいて、従来のネットワークへの依存を完全に断ち切り、監視だけでなく、シャットダウンも難しくしています。

ところで、これらのアプリには、権力側を出し抜く以外の使い道もあります。キャンプ場のようなスマートフォンがなかなかつながらない場所、停電や自然災害などの発生時、クルーズ船や飛行機に乗っているときには実に便利です。コンサートやフェスの会場で、友達や家族と連絡を取り合うのにも使えます。

P2Pのメッセージングアプリはたくさんありますが、中でもAndroidとiOSに対応した「Bridgefy」が、現時点ではもっとも信頼性が高く、積極的に開発が進められています(Bridgefyは、他のアプリ開発元にテクノロジーのライセンス供与も行っています)。1対1の通信だけではなく、ある範囲内にいるすべての人にメッセージを同時に送信することもできます。自分の周りにいる人全員に最新情報を一斉送信するみたいな感じで。

「Briar」も検討に値するアプリです。対応しているのはAndroidのみですが、シンプルながら極めて精巧で、活動家やジャーナリストなど「安全で簡単、かつ頑強な通信手段を必要とする人」に向けて設計されています。そのため、インターネット接続が利用できる場合には、Torネットワークを使用し、第三者の監視や盗聴を防止しています。

これまで最高のメッシュネットワークアプリといえば、「Firechat」(AndroidとiOSに対応)でした。Firechatは、すでに知っている連絡先にアクセスするだけでなく、自分の近くにいる個人やグループを発見する機能があり、これが実に便利でしたが、最新バージョンにはバグがあるようで今回はうまく動作しませんでした。

ハードウェアの点からも見てみましょう。goTenna(179ドル・日本未発売)のようなデバイスを使用すれば、自分専用のオフグリッド型P2Pネットワークを形成し、これに携帯電話を接続して、Wi-Fiや携帯ネットワークの代わりに使えます。つまり、スマートフォンにインストールされたアプリはすべてメッシュネットワークに接続されるということ──もちろん、あなたの話したい相手もgoTennaを持っていることが前提ですが。

日々のコミュニケーションをすべてこのようなデバイスに置き換えるのは当然無理です。でも、キャンプをしているときや、狭い地域(半径6.4キロメートルの範囲)に連絡を取り合いたい人がいるとき、何らかの原因でネットワークがダウンしているとき…まさか台風で鉄塔が折れてケータイがつながらなくなるとは思ってもみなかった、なんてとき…にはぜったい便利です。もしものときに備えて、試してみてはいかがでしょ?

松浦悦子/Word Connection JAPAN

最終更新:9/23(月) 12:01
ギズモード・ジャパン

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