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【ラグビーW杯】 「ネギを持った女王様」に非公認キャラ…マスコット大国日本

9/23(月) 18:02配信

BBC News

レベッカ・シールズ、BBCニュース(東京)

2019年ラグビーワールドカップ(W杯)日本大会のマスコットがツイッターで大々的に発表さると、世界からの反応は……実にさまざまだった。

「これって猫なの?」

「ラグビーのマスコットはたくましく、無愛想で、パイント・グラスに入ったビールを持っているべきだ」

「私のセラピストからの請求書を送ろう」

……さらには、あからさまに殺意のあるものまで。

「火をつけて殺せ」

https://twitter.com/rugbyworldcup/status/956820205539352576

ひどい描かれ方をされた猫のような生き物だと思われた、かわいそうなレンジー(これが2体の名前。奇妙なことに、2体で1つの名前を共有している)は、実のところ、ライオンのような外見の想像上の聖獣、獅子がモチーフになっている。獅子は、古来より幸福を招き、邪悪を退けるとされる(編集部注:レンジーは連獅子の親子がモチーフ。20日の開会式には、歌舞伎俳優の市川右團次、右近親子が登場し、連獅子の踊りを披露した)。

そもそも、スポーツの世界ではマスコット自体を嫌うことこそ伝統的だという議論は存在する。

1996年アトランタ・オリンピックのマスコット、ワティジットには、「スニーカーをはいた精子」に見えるとの声が上がった。

一方、レンジーはW杯の販売計画の中心的存在だ。それだけに、ツイッターのこうした反応でワールドラグビーが気をもんでいると、あなたは考えるかもしれない。

しかし、まったくそんなことはない。なぜかって?  レンジーは日本で大人気だからだ。

W杯開催国の日本は、ハローキティやポケモンなどの発祥の地でもある。つまり、究極のマスコット市場というわけだ。

ここでは、どんなものでも楽しそうなキャラクターでプロモーションできる。関係なさすぎるとか、気持ち悪すぎるとか、そういうことは気にしなくてもいい。店舗や電車、空港、食品、銭湯、医療処置……あらゆるものに、擬人化されたキャラクターが用いられる。こうしたキャラクターは果物を擬人化したものや、動物と物をシュールに組み合わせたものが多い。

たとえば、イチジク浣腸を製造販売するイチジク製薬株式会社のマスコット、かんちゃんは、イチジク浣腸とペンギンをモチーフにしたキャラクターだ。

https://twitter.com/mondomascots/status/892719525589798913

続いて、オレンジの頭を持つ、和歌山の女性刑務所のマスコット、わかピーもいる。

(記者注:ここまで紹介しているのは、最も奇妙なマスコットではない。これらの多くは、政府や財政のために運用されている。たとえばあま市のあまゾネスは、地元の特産品の野菜を鞭代わりに使用する、巨大な歯の女王様だ)

https://twitter.com/mondomascots/status/908330533129666562

日本がどのようにしてマスコットに魅了され、あげくには13万5000円もするレンジー人形(木目込み人形)を販売するまでに至ったのだろうか。

東京在住のイギリス人でマスコットの大ファンのクリス・カルリエさんによると、流行が始まったのは約10年前、日本の複数の地方自治体が着ぐるみキャラクターを使って地域おこしを始めた頃だという。

「最初にヒットしたのは、侍の格好をした猫、彦根市のひこにゃんと、熊本市のくまもん(クロクマに似た生き物)だ」とクリスさんは話す。

こうしたキャラクターは「ゆるきゃら」と呼ばれ、地元を観光ランキング上位に押し上げた。さらに、「さまざまなクオリティのマスコットが全国各地に登場し始めた」という。

全体でいくつのマスコットが存在するのか特定するのは難しいが、ご当地キャラクターの情報収集を行うウェブサイト「ご当地キャラカタログ」では、3482のマスコットが確認できる。

もしマスコットの王様がいるとするなら、それはおそらく、国内で最も人気のあるご当地マスコットを選ぶ、2011年の第1回「ゆるキャラグランプリ」で優勝したくまもんだろう。両目を大きく見開いたツキノワグマに似ている(公式ウェブサイトは、クマではないとしている)くまもんは約80万人のツイッターのフォロワーを抱えるほか、振付師を含むスタッフが存在する。

お香からトイレマットなどあらゆるくまもんグッズの2018年の売上高は、1500億円を突破した。

このクマに似たモンスターと面会した美智子さまは、「くまもんさんはおひとりなの?」と尋ねられたと報じられた。

自分のウェブサイト「モンド・マスコット」でマスコットとの出会いについて皮肉っぽく書いているクリスさんは、2016年の熊本地震の際に、熊本の復興資金の調達にくまもん募金箱が一役買ったと話す。

一方で、すべてのご当地マスコットが自治体によって運営されているわけではない。

「船橋市のなんでもありな梨の妖精、ふなっしーは、くまもんと同じくらい人気だが、同市の非公認マスコットだ。つまり、キャラクターの製作者/パフォーマーがすべての収益を得る。しかし、とても慈善精神にあふれているので、チャリティに寄付をしている」とクリスさんは説明する。

ふなっしーは、その性格から絶大な人気を博している。マスコットだけで結成したヘビメタバンドではボーカルをこなす。これこそが勝利の方程式だ。風変わりなものが、このマスコットの戦いに耐えられるからだ。

いたずら好きな一面も、マスコットが長く人気を得るポイントだ。子供たちを魅了することで心をつかむことができる一方で、怖がらせることが必ずしも嫌われるというわけではない。

https://twitter.com/mondomascots/status/1171846919594729472

北海道夕張市のメロン熊は、凶暴なクマだが、頭がメロンになっているため、「人を食べるが、遊び心がある」ように見える。 ほかのマスコットが目の前を通れば、陽気に攻撃するという。

夏には気温が35度にも達するこの国で、汗まみれの着ぐるみの中で、子供たちを驚かせている人は、どう感じているのだろうか。

俳優の今江憲さんなら、答えを知っているかもしれない。大のラグビー好きのため、2019年ラグビーワールドカップ(W杯)に向けてラグビー界を盛り上げるため、ラガマルくんという非公式マスコットをプロデュースした。今江さん自ら着ぐるみを着用し、これまでに130ものイベントに出演してきた。

今江さんは、日本代表「ブレイブ・ブロッサムズ」が強豪南アフリカ代表相手に、「史上最大の番狂わせ」といわれた勝利をおさめた2015年のラグビーW杯に刺激を受けたと話す。

大学ラグビー経験者の今江さんは、日本ラグビーをもっと盛り上げたかったという。ラグビーを普及させるには、子供たちや女性に興味をもってもらう必要があると考え、アニメ文化を持つ日本ではマスコットが効果的だと考えたという。

ラガマルくんの名前の由来は「ラガーマン」と「ラガール」を足したものだ。

今江さんは2017年5月、それまで2次元だったラガマルくんを3次元化した。愛らしく耳をぱたぱた動かす犬は、今では東京都府中市、調布市。三鷹市の非公式ラグビーマスコットとして活動している。

こうした自治体と連携し、今江さんは、ラガマルくんをあしらった「ラガマルくんのラグビールールブック」を8万部作製し、公立中学校の生徒に無料で配った。すべてはラグビーの福音を普及するためだ。

いつの日か、ラガマルが着ているジャージが、ラグビー各国のジャージに変わってほしい、そうすれば世界中で活動できると今江さんは言う。

どれほどの高みを目指すのか?  それはディズニーと同じだ。

世界で有名なミッキーマウスのようになれたらと、今江さんは話す。これは大きな夢だが、ラガマルくんはそこを目指しているという。

このかわいい犬がラグビーW杯を耐えることができれば、おそらく大会公式マスコットのレンジーよりも長続きするだろう。

流れ星のように、W杯とオリンピックのマスコットの輝きは、見事だが一瞬で終わってしまう。クリスさんはこの赤と白のペアマスコットが、収益をあげるという仕事を成し終えた後には、即座に身を引くだろうと考えている。

その次はどうなる?  日本の注意は2020年東京オリンピック・パラリンピックに向けられることになる。この奇妙なペアマスコットをよく見て。また目にすることになるから。そして、オリンピック組織委員会が正しければ、このマスコットは約139億7000万円を稼ぎ出そうとしている。

(英語記事 'It's a dominatrix with an onion': Japan’s mad mascots )

(c) BBC News

最終更新:9/23(月) 18:02
BBC News

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