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破産の英トーマス・クック利用客、第一陣が帰国 空港は混乱

9/24(火) 19:10配信

BBC News

英ロンドンの裁判所に破産を申請した英旅行代理店トーマス・クック・グループを利用して国外を旅行中だったイギリス人の「帰国作戦」が本格化し、第一陣が23日、帰国した。

英政府は、同社の営業停止の影響を受ける、国外を旅行中の英国人15万5000人を帰国させるため、2週間にわたりチャーター機を運行するとしていた。

グラント・シャップス英運輸相は、今回の危機的状況への対応は「これまでのところ順調」かつ「スムーズにいっている」と述べた。

しかし、一部の旅行客からは、長蛇の列で待たされるなど、空港での混乱をめぐって不満の声が上がっている。

■9時間待ちも

リッキー・ヒューストンさんは、23日に搭乗する予定だったギリシャ・コルフ島発イングランド北東部ニューカッスル行きの便が9時間遅れたという。

「担当者に同情する。彼らも何も分からない状態だと思うので。私たちに最新情報を教えてくれていたのは、滞在先のホテルだった」

緊急治安閣僚会議(COBRA)に出席したシャップス運輸相は、「飛行機の遅延が想定される。私たちは当初予定されていた便の運行はしないが、今後2週間のうちにすべてを完了させ、帰国作戦の現段階を終了する」と述べた。

■2万2000人の雇用に影響

創業178年の英旅行代理店トーマス・クック・グループは今年8月、最大株主の中国投資会社、復星国際(フォースン・グループ)から救済資金9億ポンドを獲得していたものの、先週になって大手株主や主要取引先銀行が信用条件として追加で2億ポンドの資金調達を要求していると明らかにしていた。22日まで救済交渉を重ねていたが、成立せず、破産申請に至った。

トーマス・クックの破綻によって、イギリス国内9000人を含む世界2万2000人の雇用に影響が出る。

英民間航空局(CAA)は、平時で最大規模の帰還作戦「マッターホルン作戦」を開始。中央アメリカやトルコなど、国外にいるイギリス人15万人以上を帰国させるため、45のジェット機をチャーターした。

BBCのトム・バリッジ交通担当編集委員は、23日にも約1万6000人の旅行客が海外から帰国する予定だったと伝えている。政府はそのうち少なくとも1万4000人をチャーター機で23日中に帰国させたい考え。

■マレーシアからチャーター機を確保

チャーター機の一部は、英航空会社イージージェットやヴァージン・アトランティック航空が提供。マレーシアから調達した旅客機も含まれる。

■夢のディズニーランドが台無しに

中部ミルトン・キーンズ在住の、2人の幼い息子を持つリアン・ジョーンズさんは、休暇に向けて家族からプレゼントされていたトーマス・クックの旅行バウチャーの価値がなくなったことを知った。

「最悪な気分です。幼い息子たちを海外での初めての休暇に連れて行くために、過去2年間、誕生日やクリスマスには毎回トーマス・クックのバウチャーをとっておいた。ディズニーに行く予定だったのに。800ポンド(約10万円)分が貯まったので、来夏に2人を初の海外旅行に連れて行くつもりだった。私は全額を失い、息子たちは旅行には行けなくなってしまった」

ジョーンズさんがATOLに問い合わせたところ、バウチャーは保証対象外だと告げられた。

「これで何もかもおしまい。また一から貯金を始めなければならなくなる。他に方法はないので。旅行に行くには、あともう2年待たなければならないでしょう」

バウチャーのプレゼントを提案したジョーンズさんの父親は、少し罪悪感を感じているという。

「父のせいではまったくない。すごくいいアイデアだったから」とジョーンズさんは述べた。

■帰国作戦

トーマス・クックの破綻により、英国人15万人が影響を受けているとされる。現在国外にいる同社の利用者は最大で45万人で、その一部に影響が出ている。

トーマス・クックの主要市場であるドイツでは、複数の保険会社が、同社の破綻に対応するとしている。

英運輸省は、旅行者が当初の帰国日に「できるだけ近い」日程で帰国できるよう手配するという。

利用者は無料のチャーター機に搭乗、あるいは別の航空会社の便を追加料金なしで予約することとなる。

しかし英運輸省は、「ごく一部」の利用客について、自分で帰国便を手配し、航空券代を事後請求する必要が出てくるかもしれないとしている。

現在、トーマス・クックを通じたすべての予約がキャンセルされているが、一部利用客からは、十分な情報共有がなされていないとの声が上がっている。

CAAは、トーマス・クックのパックツアーが宿泊するホテルに対して、宿泊費用は政府が航空旅行信託基金(ATOL)の保証を使って負担すると連絡している。イギリスでは欧州連合(EU)のパッケージ旅行者保護方針にもとづき、パック旅行利用者の宿泊費と帰国費用は業界の弁済保証金からなるATOLの保証対象となる。

すべての利用客は、ATOLあるいはクレジットカード会社や保険会社を通じて補償請求ができる。

■破産経緯を調査

アンドレア・レッドソム、ビジネス相は、英政府の破産サービスに対し、トーマス・クックの破産に至るまでの状況に関する調査を簡略化(ファストトラック)するよう求めるという。

2014年以降、給与とボーナスを合わせ、総額2000万ポンド(約27億円)受け取っていた同社幹部たちについても調査が行われる予定。

トーマス・クック社は業績悪化について、トルコなどイギリス人に人気の海外旅行先で政情不安が続いたり、今年の夏に熱波が続いたりしたこと、あるいはブレグジット(イギリスのEU離脱)に伴う不透明感から海外旅行を控える傾向が続いたことなどを理由に挙げている。

■政府の対応

BBCの取材では、トーマス・クックは政府に2億5000万ドルの資金援助を要請していたが、政府はそれだけの公的資金を注入しても同社は数週間しかもたないと判断したという。

一方、シャップス英運輸相はBBCラジオ4の番組「トゥデイ」で、「非常に短い期間運行を継続させても、その後は結局、利用者を帰国させなければならない事態に陥っていたと考える」と反論。トーマス・クックの巨額の負債や、大衆向けのビジネスモデルが、航空業界で生き残れなかった理由だと述べた。

また、「マッターホルン作戦」にかかる経費について、納税者が約1億ポンド(約130億円)を負担することになると付け加えた。

■トーマス・クック従業員の今後は

英国内のトーマス・クックの一部店舗の従業員は、同社経営陣と面会済みで、解雇されるだろうと告げられた。

同社が運行する航空便やエンジニア部門の従業員も解雇される見通し。一部従業員は同社に残るものの、具体的な人数はわかっていない。

■国際事業はどうなる

インド、中国、ドイツ、北欧のトーマス・クック子会社は、法的観点から、イギリスの親会社から独立しており英破産管財人の管轄外とみなされているため、現時点では今後も通常通り取引を継続するという。

一方で、こうした子会社は、旅客機やITなどのサービスを親会社と共有している。取引を継続するには、親会社が今後数週間のうちに救済措置を締結する必要がある。

利用客はCAAの専用ウェブサイトから詳細を確認できる。今後48時間以内に英国への帰国を予定している人や宿泊先が見つからない人、あるいは特別な援助を必要とする人は、電話相談が可能。(イギリス国内からは0300 303 2800、海外からは+44 1753 330 330)

(英語記事 Thomas Cook customers begin flying home)

(c) BBC News

最終更新:9/24(火) 19:10
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