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オークラ復活で注目の高級ホテル、国内4社の収支構造を徹底比較! 

9/25(水) 12:00配信

MONEYzine

■ホテルオークラが9月にリニューアルオープン

 9月12日、ホテルオークラは東京本館跡地に新たなホテルを開業した。オフィスフロアも用意した「オークラプレステージタワー(41F)」と「オークラ へリテージウイング(17F)」の2棟で構成されており、名称も「The Okura Tokyo」と改めた。

 ホームページで公開している正月プラン(2泊3日、1名料金)は、プレステージが20万円超、ヘリテージは30万円超。超高級(高価格帯)ホテルである。

41階建てのオークラ プレステージタワー。
手前はオークラ ヘリテージウィング(撮影:筆者) 港区虎ノ門、道を挟んでアメリカ大使館がある閑静なエリアにある同ホテルは、2015年8月に営業を終了し、その後、解体・着工を進めてきた。総投資額は1150億円である。同ホテルの土地簿価は420億円であり、建物などを含めた資産価値は1000億円を超すことが予想される。

 現在、ホテルそのものの資産価値が最も高いのは、ニュー・オータニが運営する千代田区紀尾井町の「ホテルニューオータニ(東京)」。資産価値は1302億円(うち土地1040億円)であり、「The Okura Tokyo」は、それに並ぶといっていいだろう。

■帝国ホテルとパレスホテルを比較

 こうした動きが、外資系に押され気味の現状を変えるきっかけになるのだろうか。まずは日本を代表する高級ホテルの現状を把握しておこう。宿泊人数やレストラン・宴会場利用者などを開示している帝国ホテルとパレスホテルで確認してみる。

●帝国ホテルの概要

 まずは帝国ホテルから。帝国ホテルが運営している「帝国ホテル東京本社」は、2019年3月期においては765室を備えており、利用率は8割を超す。1日平均宿泊者は1177人。日本人と外国人の比率は53対47である。平均単価は3万6045円(前年同期比241円増)だった。

 1日のレストラン利用者4565人と宴会利用者1873人を加えると、1日の合計ホテル利用客は7615人である。ちょっとした町の人口を上回る。

 2018年3月期と比較すると宿泊客もレストラン利用客も伸びているが、宴会利用客は1日平均で45人、年間では1.6万人の減少である。単価の上昇で売上高は伸びているようだが、ウエディングを含めて宴会の低迷は続いていると見ていいだろう。

 帝国ホテル東京本社の土地の多くは国有地の賃借であることから、ホテルそのものの資産価値は約100億円。ホテル運営に携わる従業員とパートはおよそ2000人である。

●パレスホテル東京の概要

 一方、パレスホテルが手がけている「パレスホテル東京」の2018年12月期の客室数は237室、1日平均宿泊者数は374人である。客室数・宿泊者数とも、帝国ホテルの3割規模。ただし、外国人宿泊者の割合は65%。日本人宿泊者のほうが多い帝国ホテルとは対照的だ。

 1日平均のレストラン利用者は1699人、宴会利用者は784人である(2018年12月期)。2017年12月期と比べるとレストラン利用者は232人の増加、宴会利用者は18人の減である。

■海外高級ホテルの攻勢

 客室が減少したことで宿泊者数が減ったパレスホテルのような例もあるが、ホテル業界は活況を維持しているといっていいだろう。2018年における全国のホテル・旅館の宿泊者数は、2017年比5.6%増の5億3800万人泊。うち外国人は18.3%増の9428万人泊。2007年の調査開始以来、いずれも過去最高だった。

 必然的に客室稼働率も上昇傾向を維持。シティホテル80.2%、ビジネスホテル75.5%、リゾートホテル58.3%、旅館38.8%など、全体では61.2%。東京都に限れば全体の稼働率は80.0%だった(観光庁「宿泊旅行統計調査」)。

 ホテルの建設ラッシュや民泊の普及、日韓関係悪化による訪日韓国人の減少など、いくつかの懸念材料はあるものの、ホテルの活況はここしばらく続くという見方が多いようだ。

 実際、マリオット・インターナショナル(米)やヒルトン・ワールドワイド・ホールディングス(米)、ハイアット・ホテルズ(米)など、外資系ホテルの進出は止まらない。外資系の場合、新築の高層ビルに入居することが多いため、豪華さやぜいたくさをより演出できる有利さもあるうえに、企業規模でも国内勢を圧倒する。

 世界最大手マリオットは「ルネッサンス」「ザ・リッツ・カールトン」「シェラトン」「ウェスティン」など6909ホテル(131万7368室)を運営、売上高は約2兆3000億円(18年12月期、1ドル110円換算)である。そのマリオットは不動産大手の森トラストと組んで、同社の最高級ブランド「エディション」を日本で初めて展開する。東京の虎ノ門と銀座で開業する予定だ。

マリオット・インターナショナルにおける最高級グレードのホテルブランド「EDITION」が、
2021年に開業予定 「コンラッド」や「ダブルツリー」のヒルトンの売上高はおよそ1兆円、「ハイアット」や「アンダーズ」のハイアットにしても売上規模はおよそ5000億円だ。

■格付けで劣勢の国内勢、オークラに集まる注目

 一方、国内勢といえば、ホテルオークラとニュー・オータニの売上高は700億円台、帝国ホテル(9708)は600億円弱、パレスホテルは300億円強にとどまる(いずれも2018年度、連結ベース)。それも不動産賃貸事業などによる売上高を上乗せした数値である。

 ホテル各社にとって、オフィスや店舗向けの不動産賃貸事業の比重は高く、利益貢献も大きい。たとえば、パレスホテルの賃貸用不動産の時価評価はおよそ1530億円。簿価は301億円だから、1200億円を超す含み益を抱えていることになる(18年12月期)。そうした好物件ということもあり、ホテル事業の4分の1にすぎない売上高にかかわらず、不動産事業の利益はホテル事業に肩を並べる水準だ。

 ホテルとしての規模や格付け(星の数)で劣勢を強いられている国内勢だけに、新規にホテルをオープンしたオテルオークラに注目が集まるのは当然のことだろう。

 同社は日本航空のホテル事業を事実上買収し、「オークラ ニッコー ホテルマネジメント」として、運営受託を含めて海外で25ホテルを展開。新たにハイフォン(ベトナム)、プノンペン(カンボジア)、アマタシティ チョンブリ(タイ)にもホテルを開業する。オフィス向けフロアを整備した東京の新たな拠点を最大限に活用するとともに、海外でも外資系と対等に競いたいところだ。

 4社のなかで株式を上場しているのは帝国ホテルのみ。ホテルオークラは株式を公開している京都ホテル(9723)に資本参加し、関連会社にしているという関係だ。帝国ホテルは三井不動産(8801)の関連会社である。

■日本の高級ホテル4社の収支構造を徹底比較

 最後に、日本を代表する高級ホテル4社の収支構造を宿泊料金1万円にたとえて見ていくことにしよう。

 原価と経費を分けずに営業経費としているホテルオークラなどを含め、4社のなかではパレスホテルの儲け具合が突出している。宿泊料金1万円につき、2000円以上の儲けである。ニュー・オータニは900円台、帝国ホテルは800円台、ホテルオークラは500円弱での推移だ。

※ホテルオークラの収支を除いては、すべて単体ベース。

 高級ホテルとして各社は、接客・調理技術などを伝承することでブランド力を磨いているということだろう。従業員の平均年齢や平均勤続年数は、終身雇用型企業に見られるパターンである。トヨタ自動車(7203)や日立製作所(6501)、日本製鉄(5401)など、国内を代表する大手製造業と同水準といっていいだろう。帝国ホテルでいえば、大株主である三井不動産の平均勤続年数(2019年3月期、11.3年)を上回る。

 一方、従業員の平均年間給与は、1200万円台の三井不動産や、800万円台のトヨタや日立に比べると見劣りする。高いほうからホテルオークラ、帝国ホテル、ニュー・オータニ、パレスホテルの順である。

 ネットの宿泊予約で1万円という格安料金で宿泊したとしよう。1万円の料金に含まれる人件費相当額は、ホテルオークラが3300円前後、ニュー・オータニと帝国ホテルは2700円弱、パレスホテルは2250円前後といったところだ。

 参考までにビジネスホテルの代表として東横インの概要も見ておこう。同ホテルは“駅前旅館の鉄筋版”をコンセプトにしており、レストランや宴会場を持たない宿泊特化型である。

 1万円の宿泊代にたとえた儲けは、ホテルオークラやニュー・オータニ、帝国ホテルを上回る。平均勤続年数が4年と短いことも関連しているのだろうか、従業員平均給与は300万円台だ。同社の場合、ホテルの運営スタッフの人件費を含め、原価に計上する会計処理をしているようだ。

 宿泊料金が1万円として費用の内訳は、人件費2100円前後、リネン費319円~339円、水道光熱費は610円~626円、客室消耗品費は298円~330円に相当している。土地オーナーにホテルを建ててもらい、賃借して運営するのがビジネスモデルだけに、地代家賃は1万円あたり2000円を超す。

【編集部より、キャプションの修正について】
本記事の公開後、マリオット・インターナショナルにおける最高級グレードのホテルブランド「EDITION」の開業予定を以下のように修正しました。

◎公開当時(2019年9月25日)
マリオット・インターナショナルにおける最高級グレードのホテルブランド「EDITION」が、2019年7月に東京・銀座にオープンした

◎修正後(2019年9月25日)
マリオット・インターナショナルにおける最高級グレードのホテルブランド「EDITION」が、2021年に開業予定

最終更新:9/25(水) 20:40
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