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〈記者の目〉藤井聡太七段 「鬼」にもまれる幸運 きっと伝説の王将リーグに

9/28(土) 11:14配信

中日スポーツ

 記念すべき初リーグが名代の「鬼リーグ」であるという幸運―。藤井聡太七段(17)がこれをかみしめる日は必ず来ると信じる。30日に初戦を迎える王将戦挑戦者決定リーグだ。

 「トップ棋士ばかりのリーグに入れたことは非常にうれしく思います。思いきり戦いたい」

 王将リーグ入りを決めた時、藤井七段はそう述べた。確かに今期のメンバーは超強力だ。久保利明九段、糸谷哲郎八段、広瀬章人竜王、豊島将之名人、羽生善治九段、三浦弘行九段と、藤井七段以外は全員が名人かA級棋士で、かつタイトル保持者か経験者だ。しかも7人のうち残留できるのは4人のみ。3人は予選からの出直しを余儀なくされる。「将棋界で最も過酷」と評されるゆえんだ。もはや「鬼」と呼ぶしかない。

 なぜ「鬼リーグ」が幸運なのか。それは藤井七段にとって飛躍的に成長できるチャンスだからだ。スポーツの世界もそう。しびれる場面で強敵にもまれることが最大の財産となる。

 実は、将棋界にはもう一つ「鬼のすみか」と称されるリーグがある。三段リーグだ。人生を左右するという意味では、これほどしびれる戦いはない。藤井七段の場合、史上最年少プロデビューの大記録も懸かっていた。その重圧たるや、察するに余りある。

 思い起こすのは2016年5月1日。藤井七段が三段リーグ初日に1勝1敗とスロー発進となった8日後のこと。岡崎将棋まつりで話をする機会があった。

 「正直、これまで感じたことのないプレッシャーはあります」

 この時ばかりは、さすがの天才少年も顔がやや青白く見えた。だが、藤井七段は持ち前のメンタルの強さで、三段リーグでの激闘6カ月を自身の血肉に。それが驚異の1期抜け、さらにその後の快進撃につながったのは明らかだ。

 デビューから29連勝の歴史的快挙に日本中が沸いた時、藤井七段と同じ板谷一門の大先輩で、詰め将棋の大家でもある中田章道七段(67)はこう話されていた。

 「29連勝の強さからすると、藤井君が三段リーグでトップ通過とはいえ、5敗(13勝)もしているのは意外。しかし、彼はここで何かをつかんだんだろうね」

 王将リーグでは30日の三浦九段戦を皮切りに豊島名人、久保九段、羽生九段、糸谷八段、広瀬竜王と当たっていく。これまで負け越している棋士が1~3戦に並ぶ厳しい順で、まずはここが大きなヤマに。名だたる猛者たちにもまれることは必至だが、そこで得られるものが藤井七段に第2の「確変」をもたらす予感。そう、三段リーグがそうであったように、記者は思う。きっと伝説の王将リーグに―。(海老原秀夫)

最終更新:9/28(土) 11:14
中日スポーツ

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