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楽天携帯、公約破りも強気の三木谷氏 いらだつ政府

10/4(金) 7:00配信

産経新聞

 楽天が10月1日に自前の通信網を活用した携帯電話サービスの受け付けを開始した。もっとも、当初半年間は利用者を約5000人に絞った無料サービスにとどまり、誰でも契約できる本格的なサービスを始めるのは来春に遅れる見通しだ。それでもなお、三木谷浩史会長兼社長は強気な姿勢を貫くが、大手3社の寡占市場を崩すために法改正などで環境を整えてきた政府はいらだちを隠せずにいる。

 「携帯電話業界のアポロ計画と言ってもいい、世界初のフルクラウドのサービスがいよいよ日本で始まる」。9月上旬に開催した携帯事業のローンチ会見は10月のサービス開始とした公約を裏切ったことへの謝罪会見になるとの見方もあったが、強気な三木谷節は健在だった。

 会見の場で強調したのは楽天が通信網に全面採用した新技術の先進性や競争力だ。インターネット経由でソフトウエアやデータを管理するクラウドを使った「仮想化」と呼ぶ技術は、基地局や中継局の設備を価格の安い汎用(はんよう)機器にしても専用機器と同等の機能を持たせられるのが特徴で、初期コストで3割、運用コストは4割削減できるという。

 「はっきり言ってコストは抜群に安い」と三木谷氏は言い切る。通信の技術革新は早く、後発の方が技術優位性があると指摘し、「他社がマネできない料金体系になる」とも述べた。だが、本格サービスの際の料金の詳細が示されることはなく、実際にどこまで競争力があるかは未知数だ。

 一方、遅延の理由については詳しい状況を開示していない。世界初の通信網でお手本がないだけに、安定的な稼働を確認するのに念には念を入れているというのが楽天側の説明だ。三木谷氏は「確認できた段階で速やかにサービスインする。半年ではなく、1カ月後か3カ月後かもしれない」と、時期の明言を避けつつも強がってみせた。

 本格的なサービスの後ずれは基地局整備の遅れが主因とみられる。楽天は来年3月末までに3432局を整備する計画を総務省に提出したが、9月上旬時点の進捗(しんちょく)は5分の1程度にとどまり、総務省から遅れを理由に3回にわたり行政指導を受けた。三木谷氏は「基地局をつなぐ作業で多少課題があったが、解決しており、順調に回復している」とアピールした。

 「やはりというのが正直なところだが、正直、肩すかし感もある」。携帯大手の幹部は楽天の本格サービスの延期を受けて、こう語った。

 楽天の計画はもともと通信業界では懐疑的にみられていた。ゼロから基地局などのインフラを整備するには巨額の投資と時間が必要であり、「楽天の見通しは甘い」(関係者)との指摘はかねてからあった。他方で、三木谷氏が常々語っていた激安プランに各社とも戦々恐々だったのも事実だ。

 政府は10月1日に改正電気通信事業法を施行して2年縛りの違約金や端末の値下げ幅に上限を設けるなど携帯料金の新ルールを整備。低価格を掲げる楽天の参入で価格競争を一気に加速させ、携帯大手3社による寡占に風穴を開けるつもりだった。だが、楽天の本格参入延期で各社とも値下げを急ぐ必要性が薄らいだ。

 実際、法改正に合わせて大手3社が導入する新料金プランをみると、NTTドコモとKDDIは6月に先行して導入した最大4割値下げの料金体系を基本的に据え置いた。ソフトバンクは2年縛りを廃止し、違約金をゼロにするなどプランをシンプルで分かりやすくしたが、通信料金の水準は変えなかった。

 法改正でさらなる値下げが期待されたものの、楽天の本格参入延期によって各社とも余力を残した形で着地し、消費者からは「期待外れ」との落胆の声も聞かれる。

 「今のまままでは良いとはまったく考えていない」。菅義偉(すが・よしひで)官房長官は9月19日の会見で、大手3社の新料金プランに不満を示した。携帯料金の引き下げは、昨年8月に菅氏が「4割程度下げる余地がある」と発言したことをきっかけに議論が加速。だが、10月の消費税増税に合わせた官製値下げは道半ばとなり、本格的な価格競争は先送りされた。

 「10月から大手の半額でできると言っていたのに話が違う」と総務省幹部も恨み節を口にする。楽天の公約破りが政府が描いた値下げ競争の誤算となっただけに、これからは楽天に向けられる目も厳しくなりそうだ。

 楽天は総務省に提出基地局整備計画を前提に電波の割り当てを受けており、計画を守れなければ電波法に基づく携帯事業者としての認定が取り消される恐れもある。急ピッチで基地局の設置数を増やす必要があるが、一方で通信速度の遅れや通信障害が生じないよう通信網の安定性を確保しなければならず、世界初の技術の検証には時間がかかるというジレンマも抱えている。来春の本格サービス開始に向け、これから半年は正念場が続く。(万福博之)

最終更新:10/5(土) 16:01
産経新聞

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