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台風15号による大停電 千葉の呼吸器の子はどう生き延びたのか?

2019/10/5(土) 11:10配信

BuzzFeed Japan

私が運営する小児クリニックは、JR千葉駅から車で15分くらいの千葉市の住宅街の中にあります。9月9日の夜明け前に襲った台風15号は、千葉県を中心に甚大な被害をもたらしました。

私のクリニックがある町でも停電した区域とそうでない区域が混在していました。クリニックが停電すると冷蔵庫の中のワクチンが使用できない状態になってしまう可能性がありますが、幸い私のクリニックは停電を免れました。

私は開業医として働くほかに、ささやかながら執筆活動をしています。2017年に、在宅で人工呼吸器を付けて暮らす子どもたちについて本を書いて以来、呼吸器の子の家族と交流があります。

大規模停電は、高齢者や子どもといった弱い人たちに大きな負担をかけます。そして病気の人や障害者にとっては、命にかかわる危険をもたらします。このたび私は、呼吸器の子の家族が千葉の大停電をどうやって乗りきったのか話を伺ってきました。
【寄稿:松永正訓・松永クリニック小児科・小児外科院長 / BuzzFeed Japan Medical】

二分脊椎で人工呼吸器と共に生きて

克俊君は、2001年に「二分脊椎」を持って生まれて来ました。二分脊椎とは背骨が割れているために脊髄神経が飛び出して生まれてくる先天奇形です。脳神経外科医の手によって手術をすれば、命に関わることはほとんどありません。

しかし、神経を正常の状態に修復することは不可能で、術後には歩行障害や排尿、排便の障害が残ります。

そして二分脊椎の子の中の一部に「キアリ奇形」が見られることがあります。

小脳の一部と延髄が頭の中から脊椎に向かって落ち込んでしまうのがキアリ奇形です。延髄の中の呼吸中枢が圧迫されるため、呼吸困難に陥ります。克俊君はキアリ奇形も合併していたのでした。

克俊君は生後すぐに手術を受け、ずっと新生児集中治療室に入っていました。1歳半で気管切開をし、人工呼吸器を使うようになりました。1年の準備期間を経て、両親は2歳半の克俊君を自宅に連れて帰りました。

克俊君はいわゆる「寝たきり」の状態にあります。顔の表情や動きで両親とコミュニケーションを取りますが、これは親だから分かるサインかもしれません。

私からすると、克俊君はずっと眠っているように見えます。現在、18歳ですが体格は小柄で体重は約20キログラムです。

ストレッチャー型の車椅子に呼吸器を載せて、母が週に4回、重症心身障害者通園施設に連れて行っています。母はその時間を有効に使って自分の仕事を持っています。

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最終更新:2019/10/5(土) 11:10
BuzzFeed Japan

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