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乳酸菌市場、成長緩やかに 競争ますます激化

10/6(日) 13:18配信

健康産業新聞

 腸内フローラへの関心の高さから火が付いた乳酸菌ブーム。昨年辺りまでの過熱ぶりは収束しつつあり、成長は緩やかになってきた。乳酸菌の機能性イメージを一気に押し上げたといえる「機能性ヨーグルト」カテゴリーでは、売上の伸びに陰りがみえはじめ、一部では売上減少も。ますます競争が激化するなかで、ポイントになるのは“菌の特長をいかに差別化できるか”。菌が持つ優位性、エビデンスが選択基準となりつつある。

■関連市場8000億円規模に

 乳酸菌やビフィズス菌が持つ幅広い機能性が消費者に支持され、関連市場は右肩上がりで拡大を続けている。整腸作用一辺倒だったこれら有用菌類の機能性は、幅広い研究の推進、消費者のリテラシーの向上により過去のものとなった。機能性表示食品で受理されている訴求テーマだけでも「体脂肪低減」「内臓脂肪低減」「ストレスの緩和」「睡眠の質向上」「肌の潤い維持」「目・鼻の不快軽減」など多岐にわたり、今後もさらに広がりそうだ。

 乳酸菌を取り巻くマーケットはここ数年急成長しており、調査会社TPCマーケティング社によると、2018年度で8,414億円、2019年の見込みでは8,639億円。また、乳酸菌関連商品のカテゴリー別シェア(2018年)では、トップがヨーグルトの62.7%(5,273億円)、次いで乳酸菌飲料の26.8%(2,258億円)となり、これら2カテゴリーで乳酸菌関連商品市場全体の約9割を占めているという。

 一方、富士経済も乳酸菌関連の市場動向を発表。「乳酸菌・ビフィズス菌を配合した食品や飲料の市場動向」によると、2018年の乳酸菌・ビフィズス菌含有食品市場は、前年比1.8%増の7,930億円としており、8,000億に迫る規模に成長している。内訳では、乳清飲料が3,818億円となり、前年比101.5%、ドリンクヨーグルトでは1,671億円(前年比102.7%)と拡大しているものの伸びは緩やかだ。一方で、クッキーや菓子類をはじめとした菓子類は178億円(同107.9%)となり、2019年見込みでは192億円に。機能性ヨーグルトの伸びが停滞気味になりつつあるなか、今後の伸びは菓子類や一般食品、サプリメントに期待がかかっている。

■大手メーカーの動き活発に

 巨大マーケットになりつつある乳酸菌市場に向けて、大手メーカー各社が本腰を入れ始めている。

 キリンホールディングスは、自社乳酸菌プラズマ乳酸菌を配合した「iMUSE(イミューズ)」ブランドのさらなる成長に向け、乳酸菌製造の新拠点「iMUSE ヘルスサイエンスファクトリー」を埼玉県に設立。4月より製造を開始した。これまで外部調達してきた乳酸菌原料を自社生産に切り替えることで機動的に製造計画を立てられるようになるといい、初年度の製造能力は約10tを見込む。

 同社は今年に入りグループ会社の協和発酵バイオを完全子会社化。さらに8月にはファンケルの株式を取得し、資本業務提携を実施するなど、体制を強化している。

 BB536やシールド乳酸菌など、BtoB事業が好調な森永乳業でも菌体製造の新工場建設を発表。「2018年度の国内の菌体BtoB事業は、2014年度比で約4倍」といい、国内での健康志向の高まりと海外からのニーズ増の状況から判断し、菌体製造ラインの増設に踏み切った。来秋稼働予定で、生産能力は2018年度比で約2倍となる150tを見込んでいる。

 昨年の参入以降、着実に認知を広げているハウスウェルネスフーズでも、年内に自社研究プラントを設置し、将来的な製造増強につなげていく予定を立てており、各社乳酸菌事業への本気度が窺える。

■目が離せない殺菌乳酸菌市場

 乳酸菌ブームを押し上げた立役者ともいえるのが「殺菌乳酸菌」の存在。殺菌乳酸菌は、乳酸菌を加熱殺菌処理して加工したもので、生菌と異なり食品製造時に工場汚染やコンタミネーションのリスクが低いという利点を持つ。そのため、工場で取り扱いが容易で、納豆菌のような他の菌類との組み合わせるケースにおいても菌そのものに影響を与えないため、配合食品を選ばない点が人気の要因となっている。

 また、商品化した後の品質保持についても、生菌の場合はチルド管理が必要となるが(粉末化したサプリ等は除く)、殺菌処理を行うことで常温管理、常温流通が可能になるメリットがある。こうした取り回しの良さから、配合食品は格段に広がった。

 殺菌乳酸菌が広く知れ渡った要因に、森永乳業の参入が挙げられる。それまでプロバイオティクスメーカーとして事業展開してきた乳業大手が手がけた「シールド乳酸菌」の普及により、市場は一気に広がった。その森永が発表した新原料が「はぴねす乳酸菌」。2~4日に東京ビッグサイトで開催された「食品開発展」で初公開した。“明日いいことあるかも”を応援する乳酸菌と題し、“充実した生活“をキーワードに菌を選び抜いたという。

 このほか、新たに殺菌乳酸菌を扱うサプライヤーも続々と出てきており、群雄割拠の状況を呈している。

■機能性表示食品176品へ

 乳酸菌やビフィズス菌を機能性関与成分として機能性表示食品は176品に(2019年9月27日時点)。「腸内環境改善」や「便通改善」などの整腸作用領域を中心に、「体脂肪低減」、「内臓脂肪低減」、「BMI改善」など抗肥満・抗メタボ領域で数を伸ばしている。新たな領域では、「肌の潤い維持」、「目、鼻の不快感軽減」、「ストレスの軽減」、「食後の胃の負担を和らげる」といった表示も登場している。

 ヤクルト本社は今月1日、同社初の機能性表示食品『Yakult(ヤクルト)1000』を発売した。「L.カゼイ YIT 9029」を1本100ml中に1,000億個と高密度で配合した。“ヤクルト史上最高密度の乳酸菌・シロタ株”と銘打ち、表示内容についても「ストレスをやわらげ、睡眠の質を高める、さらに腸内環境を改善する(抜粋)」とトリプルクレームとなっており、従来品との差別化を図る。また、ビフィズス菌を配合した乳製品乳酸菌飲料『BF-1』では、国内初となる“食後の胃の負担をやわらげる”機能を表示。腸へのアプローチが多いなか、胃をターゲットにした商品の登場で、高い関心が寄せられている。

 キリンの『イミューズ アイ KW(ケーダブリュ)乳酸菌』は、「目の疲労感を軽減する」と表示しており、整腸作用に留まらない新たな機能性が発信されている。

 一方で、同じ菌株でも複数の訴求が可能な素材も。亀田製菓が手がける植物性乳酸菌K-1を関与成分とした届出品では、「肌の潤いを維持する」に加え、このほど「お通じを改善する」整腸領域でも受理された。

 レッドオーシャン化しつつある乳酸菌市場において、機能性表示食品への対応は一つの重要な要素になってきており、各社取り組みを積極化している。

■乳酸菌の代謝物にもフォーカス

 乳酸菌やビフィズス菌が代謝する成分にも注目が集まっている。

 乳酸菌生産物質は、乳酸菌の代謝過程で作り出す有用成分を指し、菌体成分そのものの作用に加え、善玉菌などの常在菌を活発化させるプレバイオティクス作用を併せ持つのが特徴。

 腸内細菌研究の権威、東京大学名誉教授の光岡知足氏が提唱した「バイオジェニックス」の代表的素材の一つとして認知も拡大している。バイオジェニックスとは、体へ直接作用することで血圧やコレステロールの低下、整腸、抗腫瘍などの生体調整・生体防御などに働くものを指し、免疫系、内分泌系、神経系間を情報伝達物質によって相互に制御し合いながら、生体ホメオスタシスを維持するとされる。乳酸菌生産物質は、腸内細菌バランスの正常化はもちろん、免疫等に関与してヒトの健康を維持するために重要な成分として近年関心が寄せられている。

最終更新:10/6(日) 13:18
健康産業新聞

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