ここから本文です

大宮・生え抜きの大山啓輔に引き継がれた「手話応援」が繋ぐ絆と、Jクラブの存在意義

10/6(日) 9:10配信

REAL SPORTS

サッカー選手がプロとしてプレーをするのは、なぜなのか。はたまた地域にとって、サッカークラブの存在意義とは何か――。J2リーグ、大宮アルディージャの歴史と成長の中に息づいている「手話応援」がある。

慈善事業やボランティア活動の枠を超えたこの取り組みには、選手たちも積極的に関わっている。その中心になって活動してきたのが、現在は同クラブのアカデミー組織でGKコーチを務める江角浩司さんと、生え抜き選手として活動を引き継いでいる大山啓輔選手だ。彼らはなぜ「手話応援」に取り組むのだろうか? そこには、サッカー選手として、そしてJクラブの一員としての存在意義があった――。

また来たいなと思ってもらえるように、ピッチ外でもやるべきことがある

――大宮アルディージャがクラブとして毎日興業と手話応援の取り組みを始める前に、江角浩司さんが自ら大宮ろう学園へ行って、スクール活動をされたと伺いました。

江角 自分が試合で主力として出始めたのが、2007年途中からだったんですけど、スタジアムに足を運んでいただき、手話でもしっかり応援してくださっている方々に少しでも何か恩返しと感謝の気持ちを伝えたいと思っていました。ろう学園に初めて訪問させていただいたのは2009年。2回目の手話応援の前年です。子どもたちと触れ合う時間が作れたらという気持ちで、最初はクラブに話をして、ろう学園の先生に連絡を取っていただいて訪問したのが最初です。

――初めて訪問された時のことを覚えていますか?

江角 先生から事前に「耳が聴こえなくても(ろう学園の子どもたちは)すごく高い集中力を持っている」と伺っていました。それを聞いた上で、自分が何をすべきなのか考えました。当時はまだ指導する力もなかったので、とにかく一緒にボールを使って遊べたら、サッカーができたらいいかなと。また、選手である自分が訪問することでより身近に感じてもらえたり、アルディージャを応援してもらえたらいいなという想いでした。

――実際に子どもたちと触れ合って、何か感じるものはありましたか?

江角 初めて行った時は僕自身も緊張していましたし、子どもたちもすごく緊張しているなと感じました。それでもボールを蹴っていると、子どもたちから笑顔が出てきて、楽しそうに蹴ってくれました。ボールひとつで心と心が通い合えたというか、お互いが笑顔になって喜んでもらえたという実感はありました。それから回を重ねるごとに、よりみんなが打ち解けてくれるようになったと感じます。

 選手時代も、小学校などでスクール事業をやらせていただくことはありましたが、ろう学園の子どもたちは本気度がすごいんですよ。集中力もそうですし、全力で向かってきてくれるんです。その熱量に驚かせされました。自分たちもいつの間にか本気になって、これってすごいことだなと。逆に力をもらったというか。また行きたいな、みんなとサッカーしたいなっていつも思わせてくれました。

 初回は自分だけでしたが、翌年は金澤慎も一緒に行き、3年目からは現在ベガルタ仙台でコーチをやってる村上和弘も一緒に行きました。

――子どもたちと、具体的にはどういうことをやるのですか?

江角 練習をして、最後にミニゲームをやっていました。ゲームでは本気で僕らに勝ちにくるし、1点取った時には喜びの感情の爆発もすごいなって思います。健常者の生徒たちは、サッカーの好き嫌いはさまざまで、好きな子はどれだけ通用するか試してきたりしますが、そうでない子は控えめだったりするんですね。でも、ろう学園の子たちは全員が全力で向かって戦ってきてくれるんです。それが本当に新鮮でした。子どもたちがすごく喜んでくれて、丁寧に迎えてくれて本当にありがたい気持ちでいっぱいで。こんなに喜んでいただけるなら、いくらでもやりたいという想いでした。

――江角さんは、学校へ自費でプレゼントをされたそうですね。

江角 ゴールとスコアボードをプレゼントしました。形としても残せて、便利で役立てる物が何かあればなと思い先生に相談しました。

――江角さんが「どんなことがあったとしても、この活動は残さなきゃいけない」と考えていたと伺いましたが、どのように残していこうと考えていたのですか?

江角 やっぱり応援してくれている方々がいるから自分たちが仕事できる、ピッチに立てるわけであって。それを忘れずにみんなに感じてほしいと思い、若い選手も含めいろんな選手を誘いました。

――今は大山啓輔選手が中心になってやってくれています。大山選手を最初に連れて行った時はどんな様子でしたか?

江角 初めて行った時は少し緊張していたと思いますが、積極的に子どもたちと関わろうとしていたのをよく覚えています。大山選手なら、これからチームを引っ張っていってくれるだろうという想いがありました。彼は非常に真面目ですからね。実直な選手に繋げていくことで、他の選手も関わっていけるのではと思い、「このような活動を続けていってほしい」と、ぽろっと言ったような……。

――ろう学園での交流を経て、選手として実感したことはありますか?

江角 手話応援の日、事前には聞いていたのですが、試合後にスタジアムを挨拶で回っている時に手話応援をしてくれていた方々が目に入って、彼らがどんな想いでスタジアムに来てくれたのか考えました。きっといろんな気持ちがあったと思うんです。おそらく最初はスタジアムに来づらかったんじゃないか。でも、来てくださった。そうしたら、また来たいなって思ってもらえるように僕らも何かやらなきゃいけない。そのためには選手として、ピッチ外のところでも何かやらないといけないなと。自分たちの立場でやるべきことがあるんじゃないかと思うようになりました。

1/5ページ

最終更新:10/8(火) 13:27
REAL SPORTS

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事