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少年院に響くすすり泣き、市原悦子さんの遺作が今も上映される理由 〝ちょっと地味〟な映画が持つ価値

10/11(金) 7:00配信

withnews

今年1月に亡くなった女優の市原悦子さん(享年82)の遺作となった、2017年公開の映画「しゃぼん玉」。全国の映画館で追悼上映が相次ぎました。撮影をすべて宮崎県内でおこなったこの映画、実は各地の少年院や刑務所でも上映されてきました。映画化の企画を立ち上げ、矯正施設での上映会開催に尽力する豊山有紀プロデューサーの話から、出資を集めたりヒットしたりするには難しいとされる〝ちょっと地味〟な映画の持つ力について考えます。(朝日新聞記者・浜田綾)

【画像】少年院の入所者が泣いた映画シーン「こんな優しい村が存在すると思いますか?」

人とふれあい、心がほぐれていく「更生」

映画のキャッチコピーは「これからが、これまでを変えていく」。直木賞を受賞した作家・乃南アサさんの同名小説が原作です。

若い女性と高齢者ばかりをねらった強盗や傷害事件をかさねる、林遣都さん演じる青年・伊豆見翔人。逃亡中の翔人は、宮崎県北部の山奥にある椎葉村にたどり着きます。そこで偶然出会った市原悦子さん演じる村人・椎葉スマとの同居生活、村の人たちとの交流、自然と一体化した村での暮らし……。そんな日々を通じて、翔人が自らの犯した罪の重さに気づき、変わっていく姿が丁寧に描かれます。

出会いは偶然…「映画で見てみたい!」

プロデューサーである豊山さんと「しゃぼん玉」の出会いは、2012年の年明け間もない頃。自宅近くの本屋に平積みされていた小説をたまたま手に取りました。

職業柄、本はよく読んでいましたが、この小説は一気に読み切り、その後も、本を引っ張り出してはぱらぱらとページをめくりました。しっかりとした物語の内容がすとんと腹に落ち、登場するキャラクターたちにそれぞれ引き込まれたと言います。

「最初は作品のいちファンとして、映画になった『しゃぼん玉』を素直に見てみたいと思ったんです」

その後は、別の作品制作に取り組みながらも、「しゃぼん玉」の映画化に向けて奔走しました。

撮影の資金集め、出演者のキャスティングなど行程は実にさまざま……。初めて小説を手にしてから映画が完成するまで5年がかかりました。「その間はずっと映画を成立させなければ、という気持ちしかなかったです」。豊山さんはそう振り返ります。

まだ映画化することがはっきりと決まる前から、脚本を書く東伸児監督と2人で構想を練り、ああでもないこうでもないと話し合っていました。

「そうやって準備をしていても、実現しない企画もあります」

そのため、「長く時間がかかった」「とても苦労した」といった感覚は全くありません。

「むしろ、それだけの時間が必要な作品だったんだと思います」

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最終更新:10/11(金) 7:00
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